異世界無宿

ゆきねる

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第二十一章 武器が出来るまで

第三百三十四話 お供えもしたし帰りましょう

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イズミが酒棚を置けそうな場所を探しウロウロしていると、近付いてきたベリアが怪訝そうな顔で話しかける。

「イズミ…今度は何をするつもりなんだ?」

「何って、良い薬草を育っている土地に対してお供え物でもしようかと。コレは雨風を凌ぐための酒棚」

「お供え物ねぇ。色んな所でやってるけど、何か具体的な目的でもあるのか」

「目的と言うか、お礼かな…ベリアから見て、お供え物を置くのに良さそうな場所は何処だろう?」

ベリアは目を閉じて大きく深呼吸をすると、ナイフへと手を伸ばした。

「…こっちだな。風の流れが良いんだ」

フラウリアに一声かけてから先を進むベリアについて行くと、周囲の木々より一回りは太い木の前で立ち止まる。

「この辺で良いと思う」

「ありがとう」

一度木の周りを確認し、酒棚を置けそうなスペースを探す。
棚自体も大きくはないので、木の根元から少し余裕を見て、雑草を抜いてから棚を置いた。

ショルダーバッグからグラスと水を取り出すと、グラスへ注ぎ棚に置いて水平かどうか調べる。
問題無いと判断したイズミは、酒棚にお供え物として酒とグラスを入れた。

「これで良しっと」

酒棚の前で両手を合わせる。

「魔力溜まりの解消に、良い薬草が育つ環境を生み出したこの土地の全てに、感謝致します」

祈りを捧げてからフラウリアの所へ戻ると、薬草採取を終えた所だった。

「イズミさん、薬草は必要な分だけ取り終えました」

フラウリアは薬草を15本採取し、残りは目印だけ付けておくと言う。

「一度に沢山採ってしまうと、次に育つ筈の薬草が無くなってしまう事もありますから」

「そうですね」

イズミ達は片付けをするとマスタングの元へ戻り、ヒュミトールへと帰る支度を始める。
腕時計を確認すると、まだ11時にもなっていない。
少し飛ばして走れば、夕方頃にはヒュミトールに到着するだろう。


小休止を挟みつつヒュミトールに到着し屋敷へ入ると、フラウリアが違和感に気付いた。
屋敷で働く従者達の視線が、馬車置き場へ向かうマスタングへと向いているのだ。

「…嫌な予感がするわ」

「フラウリアさん限定ですかね」

「こう言う時に、同族の恐ろしさが分かるのよね…愛着心と執着心は魔族でも随一よ。屋敷の中からも凄い圧を感じるし」

大きなため息をついたフラウリアは、馬車置き場内で停車したマスタングから降りると身体を伸ばす。

「フラウリア様、グラテミア様がお呼びです」

「…分かったわ」

早速従者がフラウリアを迎えに来た。
フラウリアも観念したのか、素直に後をついて行った。

「今日は1日中賑やかだったぞ。ご飯をくれ」

野良猫は馬車置き場を寛げる拠点としたのか、木箱の上から降りてきた。

「賑やかねぇ」

「普段は無口なラミア娘が、鼻歌混じりに仕事をしてたからな。余程嬉しい事があったのだろうな」

美容品の効果が良かったのか、それともグラテミアが作るように指示をしたと言うチーズケーキの影響なのかは分からないが、屋敷内は何時もより活気があるようだ。

「ご飯か…」

マスタングがトランクを開けると、新しい猫用フードが実体化されている。
小皿に盛って野良猫の前に置くと、匂いを確かめてからガツガツと食べ始めた。

「森で酒を捧げたそうだな」

野良猫が突然聞いて来たので、イズミは驚きつつ答える。

「確かに酒とグラスをお供えしたけど、何で知ってるんだ?」

「良い心がけだ。あの森に住まう精霊達も喜んでおる。冒険者は採取だけして去るからな」

野良猫はイズミの疑問に答える事は無く、ご飯を食べ終えると毛繕いを始めた。
この話は終わりと言う事だろう。

「ま、今後もお世話になった場所では酒とかお供えするよ」

「それが良い」

イズミとベリアが屋敷へと入ると、心なしか空気感と言うか雰囲気が明るいような気がする。
野良猫が言っていた賑やかさの理由を知るのは、部屋に戻ってから直ぐの事であった。
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