異世界無宿

ゆきねる

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第二十一章 武器が出来るまで

第三百三十五話 チーズケーキの試食会

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部屋にて装備を外して汗を拭き着替えて一呼吸置いていたら、誰かが部屋の扉を軽く叩いた。

「何でしょう?」

「失礼致します。グラテミア様が食堂に来て欲しいと申しております」

「分かりました」

イズミは武器をショルダーバッグに収納してから、ニコニコな従者の案内で食堂へと移動する。

食堂にはグラテミアやフラウリア、エレノアにアヤにベリアも集合していた。
テーブルには大きな皿が用意されているが、蓋がされており中身は見えない。

「お待たせしました」

イズミがそう言って席に座ると、グラテミアが呼び出しをした理由を話しだした。

「急にお呼び出ししてしまい申し訳ありませんわ。実は先日イズミ様より戴いた書物に記載されていた、チーズケーキなる菓子を料理長に作らせたのです」

グラテミアが右手を挙げると、料理長だろうラミアが食堂に入って来る。
その表情からは疲労困憊である事が伺える。

「レシピには必要な材料と調理方法が、事細かに書かれておりました。温度管理と時間管理に関しては精密な測りがありませんでしたので、そこは長年の経験と勘で作りました」

料理長が蓋を持ち上げると、ホール状のチーズケーキが鎮座していた。

「昨日の今日で完成させられるとは、流石としか言いようが無いですね」

「不明な点も多々ありましたので、比較用に複数のチーズケーキを作りました。特に時間管理には注意が必要でしたね、レシピに書かれたサイズの型が無かったので」

料理長はチーズケーキを丁寧に切り分けると、従者に頼み皆の手元へと運ばせる。
目の前に置かれたソレは、ベイクドチーズケーキだった。

ビスケットやクラッカーがこの世界にも実在するのかは知らないが、しっかりとした土台になっている。
断面も綺麗であり、チーズの生地は分離していない。

「屋敷にて保有しているチーズを使いましたが、事前に味見をした所問題無いと判断しました」

そう説明した料理長は、静かにグラテミアの後ろへと下がって行った。

「では、試食してみましょう」

グラテミアの合図で、皆がチーズケーキを口へと運ぶ。

「…うま!」

大きな一口で頬張ったベリアが、真っ先にリアクションをした。
菓子は滅多に食べる事の出来ないのか、二口目は味わう事に集中している。

「チーズだけでもご馳走になるのですが、ケーキになるとこんなにも違う物になるのですね」

フラウリア達もチーズケーキはお気に召したようだ。
イズミは元いた世界で食べたチーズケーキの味を思い出そうとしたが、遠い過去の事なので浮かんでも来なかった。

「美味しいですね。食感も滑らかで、ティータイムに食べると良いかもしれません」

素直な感想を口にしたイズミは、ふと料理長の方へ顔を向ける。

「このチーズケーキは、屋敷で働く方にも?」

「はい。今回はグラテミア様の計らいで、従者達にも特別に振る舞う事になりました。試作品の余りにはなりますが」

料理長はそう答えるも、余り良い表情とは言えなかった。
試作品の中には料理長にとっては失敗だと考えてしまう、そんな出来栄えの物もあるのかもしれない。

「調理における時間の管理は、何を使っているのです?」

「ドワーフが作った砂時計です。只、砂時計の時間とレシピの時間が同じかが分からなくて」

「明日にでも確認してみましょう」

イズミはそう言うと、魔法通信でマスタングに連絡を取る。

「マスタング、ストップウォッチってあるか?レシピでの時間管理で確認したい事がある」

「確認します…機械式のストップウォッチを実体化しますか?」

「頼む。明日取りに行くよ」

試食会がお開きになると、食堂に試作品のチーズケーキが運ばれて来ると、屋敷で働く従者達が順番にやって来てチーズケーキを食べ始めた。

一部のチーズケーキはチーズが分離していて、失敗作として皿に置かれている。
イズミはその皿に近付き、自分で切り分けて一口食べてみる。

「食べ比べてみると、確かに食感の滑らかさが段違いだな」

これはこれで美味しく頂くと、イズミは料理長に声を掛けてから部屋へと戻って行った。 
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