異世界無宿

ゆきねる

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第二十二章 一斉捜査

第三百五十五話 移動開始

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翌朝。
日が昇り始めた頃合いに目が覚めたイズミは、マスタングの居る馬車置き場へと向かう。

「よし、久し振りに走るとしますか」

荷物を詰め込んだ後で軽食を摂っていると、野良猫が姿を見せた。

「出掛けるのか?」

「あぁ。一仕事終えたら戻って来る予定だけど、それまでは屋敷の人からご飯を貰ってくれ」

「何を言っておるのだ?我は何処にでも居るのだから、呼べは一瞬でその場へ転移出来るのだぞ」

美味いご飯の出所が居るのに、自らの能力を駆使しないでご飯を食べに行かない馬鹿はいないと言わんばかりの口調で、野良猫がスタスタと木箱に飛び乗る。

「取り敢えず、コレでも食べておいてくれ」

マスタングからご飯と小皿を取り出して盛り付け、野良猫の前に置いた。

「おはよう、アタイの荷物を仕舞って良いか?」

「おはようベリア、荷物はトランクに詰め込んでくれ」

腰にドワーフ製のナイフを提げたベリアが、のそりと馬車置き場へやってくる。
その後ろからフラウリアの姿も見える。

「おはようございます」

フラウリアは馬車置き場に入ると、転移魔法でソフィアを呼び出す。

「外から監視されている可能性もあるので」

イズミ達と一緒に移動を始めたとなれば、それを報告して動き出す輩も居るかもしれない。
偽装工作は必要と判断した結果だと言う。

「フラウリアさんも乗りますよね?」

「私は何時も通り、分身を忍ばせておくわね。美容クリーム作りが大変なのよ」

聞くとチーズケーキやカクテルは分担作業でどうにかなっているが、美容クリームはまだ他の者に任せられる段階では無く、クリームを容器に詰める以外の全行程を単身でやっているそうだ。

「もう少しで部下に一部を任せられそうなのですが、現時点では厳しいですね。調合の品質に課題が残っておりまして」

「それは…仕方がありませんね」

「特に砂漠地帯で生活している同族から、多数の要望書が届きましたから。クリームの無い生活は考えられないそうです」

「頑張って下さい。他種族が使っても良い効果が出るのであれば、商品として申請を出してから販売すれば稼げるかと」

イズミの言葉を聞いたフラウリアは、大きなため息をついた。

「…もう叔母様が各方面に働きかけてますわ。暫くの間は魔法の研究よりクリームの研究を優先しなさいと、叔母様より厳命されました」

「私もグラテミア様から渡された試供品を少しだけ使いましたが、肌の潤いが長時間持続して良かったです」

どうやらソフィアもグラテミアからの勧めで、クリームを試していたようだ。

「なので、何かありましたら魔法通信で連絡を下さいませ。勿論、分身を使って情報共有はしておりますが」

大きな欠伸をしたフラウリアの足元から3匹の白い蛇が姿を現すと、イズミ達の足元へと移動し足首に絡まったかと思えば消えてしまった。

「コレで私の準備は完了ですので、屋敷に戻りますわ。クリームの製造の目処が立たないと、私の安眠が奪われてしまいますので」

フラウリアは真剣な表情で言うと、クリームの製造へ戻る為に屋敷へと歩いて行った。

「ではお二方、出発しますか。ソフィアさんは恐縮ですが後部座席に座って下さい」

助手席を手前にずらしてソフィアが入り込めるようにすると、身体を屈めながら乗り込んだ。

「狭くはありますが、座り心地はとても良いですわね」

「勿論です、私の相棒の後部シートですから」

助手席をベリア用に戻すと、ナイフを腰から外したベリアが身体を伸ばしてから乗り込む。
周囲を一通り確認したイズミは、馬車置き場の扉を開いてからマスタングに自動運転で外へ出るように頼んだ。

「では野良猫さん、行ってきますね」

「うむ、もし助けが必要なら我を呼ぶと良い」

「そんな厄介な展開にならない事を祈るばかりですがね」

ご飯を食べ終え毛づくろいをする野良猫を見てから扉を締めると、マスタングに乗り込み屋敷を出発する。
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