異世界無宿

ゆきねる

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第二十二章 一斉捜査

第三百七十二話 メンテナンスは大切です

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「幾らって、アンタにはソレの使い方が分かるのかい?」

「まぁおおよそ…幾らで売ってくれます?」

「どんな使い方なんだい?」

老婆はイズミの顔をジッと見て尋ねる。
此処で嘘をつくのは悪手と思えたので、あくまで自分の予想として答えた。

「条件を満たせばですが、火を点けられる」

「火を点けるって、それだけかい?」

「それだけです」

老婆は呆れたような表情をすると、小さなため息をつく。

「火の魔石を使うとか、子供でも火魔法が使えるってのに、魔道具でやるってのかい」

「遺跡系のダンジョンで出たのなら、昔はこんな道具を使って火を点ける事があったとも考えられるでしょう」

「…嘘をついているようには見えないけどさ、火を点けるねぇ」

「まぁ私の考えでは、と付け加えておきます」

「薬草も込みで、銀貨50枚でどうだい?正直に言うと、この金額じゃないと赤字になるのよ」

「別に構いませんよ」

イズミはショルダーバッグから革袋を取り出し、銀貨を老婆へ手渡した。

「まいどどうも。今度何かを買ってくれる時は、少しばかり相談にのるよ」

「それは助かります」

薬草をショルダーバッグに、ジッポライターはポケットに仕舞うと、イズミは店を出て市場の散策に戻った。

宿屋に帰りマスタングの元へ向かうと、早速購入した物を調べて貰う。

「マスタング、コレを調べてくれないか」

「かしこまりました」

グローブボックスに薬草とライターを入れ込むと、調査結果がモニターに表示される。

「薬草はタバコ葉に近く、煙を吸えばタバコと同様の効果があります。痛み止めの効果お虫除け効果もあるようです」

「タバコと同様なら、健康リスクも一緒か?」

「一緒です。中毒性もありますので使用する際はご注意下さい」

喫煙する予定は無いが、痛み止めと虫除け効果は使い道として有用なのでショルダーバッグに戻す。
特に虫除けは夜営時に助かるのではないだろうか、匂いしだいではあるしベリアとの相性も考慮する必要はあるが。

「魔道具ですが、着火具で間違いないようです」

「やはりな。使えるようになるか?」

「解析しますので、少々お時間を戴きたく」

マスタングが魔道具の解析作業に取り掛かったので、イズミは一度宿屋へ戻り小休止を挟む。
ベリアはまだ戻って来ていないようで、連絡はまだない。

時間潰しがてらマグナムの清掃をしていると、マスタングから完了の報告が来たので回収に向かう。

「どうだった?」

「作り自体は我々の居た世界に存在するライターとほぼ同一でした」

「それで、使えるようになったのか?」

「ウィックや綿がありませんでしたので、代用品を実体化しました。使用可能です」

グローブボックスを開けて中身を確認すると、ウィックや綿は組み込まれていなかった。
自分で組み込めというメッセージだろう。
ご丁寧に工具まで用意されていた。

「フリントを魔石で代用する都合上、各パーツの強化をしております」

「それは助かる。それにしても、どうしてコレがダンジョンのドロップ品なのかね」

イズミは一式をショルダーバッグに収納しつつボヤいた。

「ダンジョンの構造が不明なので、回答不能です。オリジナルが存在する可能性はありますが、推測の域を出ません」

「その辺は分からないままか。まぁ、良い買い物をした…オイルは?」

「市場で購入出来る植物油や魔物油で対応可能です」

腕時計を見ると4時を過ぎている。
今から油の買い出しに行くのは面倒なので明日の予定に組み込むとして、部屋に戻り椅子へ座るとライターを弄り始めた。

先ずは動作の渋くなりがちな可動部に潤滑油を染み込ませ、数回動かしてから布で拭き取る。
次にユニットを取り出してウィックを風防のある方から差し込み、ユニットの内部から必要な分だけをピンセットを使い引き出す。
目を凝らしながら綿を解し、ウィックと絡むように意識しながらユニット内に収める。

割と楽しみながら作業をしていると、あっと言う間に終わってしまった。

「…こんな感じか?後はフリントを入れて、オイルを調達すれば使えそうだな」

作業が一段落したので、夕食を食べようと思い食堂へと向かう。
食堂に入ったイズミが最初に見たのは、テーブル席に座る疲れ切った表情のベリアだった。
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