異世界無宿

ゆきねる

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第二十四章 暴走を止めろ

第四百十三話 グラテミア式トレーニング

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馬車置き場に到着したイズミは早速マスタングに相談をする。

「マスタング、トレットとカーネリアの魔法練習に付き合う事になったのだが、攻撃可能な非殺傷武器を実体化出来るか?」

「少々お待ち下さい」

トランクが開いたので確認すると、1艇のリボルバーが簡素な木箱に納められていた。
ショルダーホルスターで眠る44マグナムよりも細く小型で華奢にも見えるソレを取り出すと、フレームにある特徴的なシンボルに目が行った。

「コルトか」

「32口径の4インチモデルをベースにしています。練習用との事で非殺傷の魔法弾を発射します…薬莢部に魔力を自動充填するように魔石を使用しましたので、再装填は不要です」

「何時でも撃てる訳だな、威力は?」

「成人男性のデコピンから、タンスの角に足の小指をぶつけた時の痛み程度に調整しております。不慮の事故を防止する為、眼球等に命中しても怪我や損傷等の発生しない安全仕様です」

「弾速は?」

「…10歳以上用のエアソフトガン程度です。目でも追い切れるかと」

「完全に練習用だな」

ニッケルシルバーのリボルバーを操作してシリンダーを確認すると、薬莢の雷管部分が魔石になっており弾頭の無い空薬莢状態である。

「マスターが持っていても特に利点の無い練習銃ですので、使用後はグラテミア様にお渡し下さい」

「利点が無いって」

「武器としての威力も無ければ殺傷能力もありません、この世界では脅しの道具にもなりません。44マグナムの使用を強く推奨致します」

「…そこまで言うなら、そうするとしよう」

完全に練習用、訓練用のリボルバーとして実体化したようだ。
だからそれ以外の用途で使おうと考えるなと言いたいのだろう。
リボルバーを木箱に戻すと、ソレを持って中庭へ戻る。

「お待たせしました。練習用の道具を用意しましたので、何時でも出来ます」

「有難う御座います。ではこれから私が手本を見せますので、私に攻撃をお願いします」

グラテミアがトレット達に説明をすると、イズミから少しだけ距離を取った。

「それでは…グラテミアさん、当たると少し痛いですので」

「大丈夫ですわ。私に当たる事は無いですから」

当然のように返事が返って来たので、イズミは木箱からリボルバーを取り出した。

「そう言う事でしたら。ではいきますよ」

イズミはグラテミアの胴体に狙いを付けると、リボルバーの引き金に指をかけた。

ポスッと間の抜けた音と共に魔力弾がグラテミア目掛けて飛んでいったが、グラテミアの目の前で空間が歪みだし、その歪みの中に魔力弾が吸い込まれてしまった。

その間にグラテミアは身動き1つ取っていない。

「…消えた?」

「厳密には、転移魔法で別の場所に飛ばしただけです」

そう説明するグラテミアがトレットに笑顔を見せると、トレットの頭上の空間が歪み魔力弾がトレットに命中した。

「痛っ?」

「時間の管理は高難易度ですが、転移魔法はこのようにも使える訳です。イズミ様、もう一度お願いします。今度は連続で」

グラテミアの指示に従い、今度は5発連続で撃ってみる。
素早く連射したつもりだったが、全弾空間の歪みに吸い込まれてしまった。

突然の攻撃に頭を抱えていたトレットだったが、グラテミアは笑顔のままトレットの近くに転移魔法の出口を作った。
今回は複数方向から同時である。

トレットは最初の1発目でこうなると予想していたのか、避ける動作をしたもののグラテミアはそれを考慮した上で出口を作っていたらしく3発は命中していた。

「時間差で発動させるのまで覚えて欲しい所ですが、最初は単純な転移魔法からです。人間サイズの大きさの転移よりも先に、小さなものから始めましょう」

「グラテミア様、それは昨日やりましたよね」

「ええ、しかしそれで満足されても困るわ。あれは言わば触りであり、実戦的では無いですから。そこでイズミ様のお力を借りた訳です」

転移魔法の初歩が出来たら次はそれを実戦形式で活用させ、それが出来るようになったら次のステップへ進む。
段階を踏んでいるのだ。

「失敗すれば攻撃を受け、成功したら別の場所へ攻撃を転移させる。単純ですが有効な練習方法です」

「アレ、地味に痛いんですけど」

「だから丁度良いのですよ」

トレットは立ち上がると、グラテミアの前に来て練習の準備を始める。
カーネリアも次は我が身と分かっているので、真剣に観察しているようだ。

「ではトレットさん、準備は如何ですか?」

「大丈夫です、お願いしますわ」

準備が出来たようなので、イズミはリボルバーのハンマーを起こして狙いを定める。
引き金を絞り1発目を撃つと、魔力弾はトレットに吸い込まれてゆく。
転移魔法の発動が遅かったようだ。

「いたっ」

「トレット、練習あるのみですよ」

「グラテミア様、その笑顔が怖いですぅ!」

グラテミアはトレットの両肩を掴み逃げ出せないようにすると、満面の笑みで練習を再開させた。
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