異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
432 / 624
第二十四章 暴走を止めろ

第四百二十一話 怪しまれてる

しおりを挟む
少しばかり昼寝をしていると、ベリアから連絡が入る。
話がまとまったようだ。

「イズミ、今は大丈夫か」

「おう、どうなった?」

「アタイ等に同行する2人は明日ヒュミトールに到着するから、明後日以降なら確認が出来るって」

「なら明後日の午後に確認をしてもらうか。ついでに広めの部屋を借りたり出来るかな、2~3時間くらい」

「広めの部屋?どうして」

ベリアの疑問は当然の事なので、簡単な説明をする。
この説明通りに教会の人間に話をするだろうから、変な事は言えない。

「そうだな…折角教会に行くなら、個人的に女神様へ祈りを捧げたいから。でどうだろうか」

「それなら奉納の儀でも良いんじゃないか?」

「いや、奉納の儀は第三者の目があるから駄目だ」

「ひょっとして…」

先程の話し声からトーンが1つ下がったベリアが、少し間を置き小声で聞いた。

「特別なお供え物でもあるのか」

「お供え物か、最早パーティーと言った方が正しいかもしれない」

「パ…もう、説明し辛いなぁ。教会の担当者に何て言えば…」

無茶振りしてしまったが、ベリアは教会の担当者であるリーベルトに頼み、1部屋確保をしてくれた。
後でベリアに礼としてケーキを用意しないと、機嫌を損ねてしまうかもしれない。


1時間後、屋敷にベリアが戻って来た。
慣れない話し合いの場だったからか、表情から疲労が見て取れる。

「お疲れ」

「本当に疲れた。教会の調査隊は4日後に出発するってよ」

「早いな」

「道中にある町の教会にも顔を出すんだとさ」

「成る程ね、俺達は同乗者と相談してから決めるとしよう。10日もあれば到着するからな」

ベリアには一度自室へ戻ってもらい、イズミはベリア用のケーキをマスタングに実体化してもらう。

「マスター、カクテルセットも用意しておきますか?」

「お祈り用か…念の為に用意を頼む」

「かしこまりました」

マスタングはイチゴのショートケーキを3つ実体化してくれたので、形を崩さないように注意してショルダーバッグに収納した。

ベリアの居る部屋に向かい扉をノックすると、ベリアは武器の手入れを中断して扉を開ける。

「相手の反応はどんなだった?」

「勿論不審がってたぞ。個人的に祈るにしても、個室があるにも関わらず広い部屋を指定する理由が分からないし、奉納の儀では駄目な理由も納得の出来る説明で出来てないし、2~3時間も部屋を借りて祈る人なんて滅多にいないし」

「どう考えても怪しまれてるよな」

「怪しんでくれって宣伝してるようなもんだからな」

話を聞いたイズミはテーブルにそっとケーキを用意した。

「おぉ、ケーキだ!」

ベリアは武器を手際良く片付けると、椅子に座り姿勢を正した。

「食べて良いのか?」

「色々と頼んじまったからな、そのお礼だと思ってくれれば」

「コレって、明後日の対応も含まれてる?」

「忙しくなるだろうけど、それは別途相談で頼みたい」

「分かった」

ベリアがケーキを食べる姿を見ていると自分も食べたくなるので、イズミはベリアの部屋から出て自分の部屋に戻る。
その途中で屋敷の従者に呼び止められたので、グラテミアの執務室へと向かう。

「どうかしましたか?」

イズミが尋ねるとグラテミアは従者を下げてから話し始めた。

「マスタング様より依頼がありましたので、トニックウォーターをチーズケーキを手配しました。準備が出来ましたらお声掛け致します」

「ありがとうございます」

「それともう2点…イズミ様の血を調査中なのですが、魔力反応が出ませんでした。なので転移魔法陣の発動条件はシビアになるかもしれません」

「そうですか…上手くいかないものですね。もう1つは?」

「夕食後にコチラをお飲み下さい」

グラテミアは3本の小瓶を机に置く。
中身の液体はそれぞれ青、緑、黄色である。

「ええと、アレですか」

「そうです。イズミ様がオブリビアに向かう前に、事を進めておきたいと思いまして」

グラテミアは先を見据えた行動を取り始めている。
腕時計を確認すると16時を過ぎていたので、そろそろ夕食の準備も本格的に動いているだろう。

「分かりました、夕食後ですね」

小瓶を受け取ったイズミは執務室から出て自室へ戻る。
ジャケットを脱いで装備をショルダーバッグに仕舞うと、椅子に座り身体を休ませた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...