異世界無宿

ゆきねる

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第二十四章 暴走を止めろ

第四百二十五話 緊急会議

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妨害も無く屋敷に戻って来れたイズミ達はマスタングを馬車置き場に停めると、グラテミアへ報連相を行う為に執務室へ向かう。
扉をノックして返事が来たので執務室に入ると、既にグラテミアとフラウリアが待機していた。

「イズミ様、つい先程レシピ本に多数の更新がありましたが」

「それはですね…」

教会に行くついでに独自にお供え物をする話はしていたが、想定外の展開になってしまったと説明する。
精霊達からのプレゼントであるショットグラスを取り出すと、フラウリアの目は興味関心に満ちた輝きを見せる。

「これは素晴らしいですね…作りも良いですが、かなり精密に魔力が練り込まれています。浄化と解毒と言った所ですね」

「このような品を精霊達が贈与する意味を、イズミ様はご存知ですか?」

フラウリアの分析を聞いたグラテミアが問う。

「そうですね…策謀に注意せよ、ですかね」

「それもありますが…可能な限り長生きして、菓子や酒の普及に努めよとの意味合いもあります。普及するまでは定期的に供えるのが良いでしょう」

「レシピがあってもスキルやノウハウが無ければ、良い物は作れないのですがね」

「それは専門知識の豊富な者を雇い、抱え込む所から始めれば良いのですよ」

「流石にそれは私のような無宿人には出来ない芸当です」

「その辺りは我々に頼んで戴ければ」

真剣な表情のグラテミアに、アヤが不安要素を発現する。
教会でも話題になった問題点だ。

「それは勿論あるわね。美容クリーム関連は既に商人ギルドに話をしていますし、チーズケーキやショートケーキもいずれは世に出しますから」

「更新されたレシピまで我々から出すとなると、厳重な警備を敷いても探りに来る者が現れかねません」

「…先んじて材料の生産地を管理する貴族に働きかけるとしても、我々が動けば悟られるわね。似たような菓子や酒が存在していたりしないか、秘密裏に調査しましょう」

「まだ広まっていないだけで、類似品が存在していても可笑しくはありませんね…それは私が」

アヤが調査の任務を引き受けると言うので、イズミは念の為に確認をする。

「アヤさん、妊娠したので業務の引継ぎをしたのでは?」

「調査程度でしたら、イズミ様から戴きました水晶で対応出来ますので」

「そんな能力が」

「元々私は透視が得意なのですが、水晶と野良猫さん達の協力のお陰で、より広範囲を精密に視れるようになりました。お任せ下さい」

自信があるようで胸を張ってグラテミアに進言する。

「私が調査には適任かと」

「そうね、アヤに任せるわ。フラウリアは引き続き既存のレシピの研究を。調査報告が上がり次第、次の一手を検討しましょう」

話をまとめたグラテミアが席を立つと、会議は解散となり各人が自分の部屋へと戻ってゆく。
その中でイズミだけは呼び止められた。

「イズミ様、教会の者に詳細な話はしていないのでしたね」

「そうです…話をした所で彼等で再現出来るかは不明ですし、何より彼等は女神様を都合良く利用しようと動く気がして」

「再現は困難でしょう、女神様は殆ど姿を見せませんし。教会はそもそも女神様を利用する前提で活動しているものです」

何を当然の事をと言った顔をされたが、イズミは神妙な表情で話を続ける。

「私は女神様を利用するより、女神様に利用されている方が好きですね。そっちの方が断然面白いですから…なにより」

「何より?」

「性に合ってる気がします。旅の目的決めにもピッタリで」

利用して私腹を肥やす事に面白さは見出せない、どうせなら女神様に利用されて旅をする位の気軽さが良い。
そう話すと、グラテミアは大層愉快そうに笑った。

「貴方のそう言う所、私は好きよ」

ひとしきり笑った後で、イズミの肩をポンと叩く。

「女神様やレシピに関する話は一旦忘れて、イズミ様はオブリビアに集中して下さい。教会は是が非でもイズミ様の秘密を解き明かそうと躍起になる筈ですが、今回の主目的はオブリビアの調査ですから」

「そうですね、やらかさないように注意します」

「女神様や精霊達はイズミ様の都合を汲み取ってくれるとは思いますが、何分イズミ様達は見ていて面白いので…例え好奇心に負けて現れたとしても寛大な心でもてなして下さい」

そう言ったグラテミアは食堂へと歩いていった。
その姿を見送ったイズミは、一度部屋に戻り装備を下ろし身体を休める。
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