異世界無宿

ゆきねる

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第二十四章 暴走を止めろ

第四百三十一話 突然の勉強会

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光が落ち着くとテレジアの目の前には、お供え物を食べる1体の小さな精霊が居た。

「え…」

「ん~~、甘くて美味しい!」

精霊はテレジア達には目もくれず、小皿に置かれたケーキを頬張る。

「あの…精霊様、此方で何を?」

「何って、僕達は魔力の流れを見守ってるの…君、僕が見えるんだ」

精霊はテレジアの顔をジッと見つめると、ふわりと浮いて右手をかざした。

「聖魔法が使えるにしては、練り込みが微妙だなぁ。独学?」

「い…いえ、光の教会で学んでおります」

「ふぅん…素養はあるのにこの程度って事は、教え方に難ありかぁ」

テレジアとヴィラードが呆然としている後ろから、イズミが戻って来た。
今回はイズミにも精霊の姿が見えたので、思わず声を上げてしまった。

「お二方、そろそろ…どちらさん?」

「あー!噂の旅人だ!ねぇねぇ、色々と教えてあげるからさぁ、葡萄のジュースって飲み物頂戴よ!」

「唐突だな、酒じゃなくてジュースか…ちょいと待っててくれ」

精霊は全長30cm位の男の子の姿をしており、ケーキを左手で持ちながら飲み物をせびってきた。
特定出来ない魔法反応から現れた存在に頼まれたのが面白く感じたのか、イズミはマスタングに頼んで冷えた葡萄のジュースを実体化させて持ってゆく。

ショルダーバッグからグラスを取り出し葡萄ジュースを注いで渡すと、精霊は大喜びでグビッと飲んだ。

「美味しい…一仕事終えてから飲むジュースって最高」

「誰からこのジュースの事を?」

「ヒュミトールで飲んだ仲間から聞いたんだ。旅人が近くを通った時にメッセージを送れば、気付いて探してくれるかもって教えてくれた」

女神様も精霊達も素晴らしい情報網で繋がっているようだ。

「で、何を教えてくれるんだ?」

「そうだなぁ…聖魔法に詳しい仲間を連れて来ようかな。ご馳走次第でレクチャーしてくれると思う」

「アンタが教えてくれる訳じゃないのか」

「僕も出来るけど、聖魔法は苦手なんだ。だから呼ぶね」

精霊が両手を天に掲げると光の玉を作り出し、独特なタイミングで点滅を始める。
程なくして、別の精霊が姿を見せる。

「呼んだかしら?」

同じ背丈をした、女の子の精霊だった。

「うん、この人間に聖魔法を少し教えてあげて欲しいんだ…変な使い方してるからさ。コッチの旅人が美味しいお菓子と飲み物をご馳走してくれるって言うし」

「この旅人が、あの人なの?」

「多分そうだよ。葡萄のジュースで話が通じたから」

精霊達の小声な会話が終わると、新たにやって来た女の子の姿をした精霊がテレジアの周囲を一周する。

「んー…貴方、名前は?」

「テレジアです」

「ではテレジア、1つ確認をさせてもらうけど。光の教会の外で聖魔法を使った経験はどのくらい?」

「教会の外ですと、5回くらいです」

「やっぱり」

精霊は腕を組み空中でクルクルと回転しながら考え込むと、ヒュンとイズミの目の前にやって来た。

「旅人さん、私は葡萄のジュースとカラフルなお菓子が食べたい」

「カラフルなお菓子?」

「そう!丸くて、甘い生地をサンドしてるって聞いた」

「丸くてサンドされたお菓子…俺みたいな人間なら一口で食べられるやつかな?」

「食べられると思う」

「多分アレかな。ちょっと待っててくれ」

恐らくマカロンだと予想したイズミは、マスタングに戻りモニターで過去に実体化したお菓子の履歴を確認する。

「ええと…あった」

「イズミ、何か進展があったのか?何回か光ってたけど」

「この手の反応に対してお供え物して、初めて精霊が姿を見せたよ」

「マジ?」

ベリアは驚いた表情をするとマスタングを降り、テレジア達のいる方へ歩き出した。
マカロンと追加の葡萄ジュースを実体化したイズミも、ベリアの後を追って歩き出す。

「コレかな?」

「そう!コレよ!念視で見たのと一緒」

精霊もお供え物に満足してくれたようで、ルンルンな笑顔でマカロンを食べる。
テレジア達は勿論、ベリアもあの日は忙しくて食べれてはいなかったようで、どんなお菓子なのか興味があるようだ。

「ご馳走様でした…とても美味しかったわ」

「それは何よりです」

丁寧なお辞儀をした精霊に返事をすると、早速テレジアに聖魔法のレクチャーが始まった。

「今の貴方の使う聖魔法はね、場所や環境に依存しているの。教会内と外で魔法の質が変わってる事に気付いてる?」

「確かに外で聖魔法を使うと、教会で使っている時より回数を使えなかったりしています」

「教会の中は光の女神様の御力があって、聖魔法を使う者達の補助をする効果があるの。でも外に出て教会から離れれば、その効果も薄れてしまうの」

「薄れてしまった分は…」

「当然、聖魔法の使用者の魔力が消費されるわね。だから使える回数が減ったり、聖魔法の効果が弱かったりするの」

端から話を聞いているイズミにはかなり大雑把にしか理解が出来なかったが、ベリアとヴィラードは魔法が使えるからか精霊の話を真剣に聞いている。

「こりゃ今日は此処で夜営だな」

腕時計を確認すると15時を過ぎた所だった。
本格的な勉強が始まったら間違いなく日が暮れると踏んだイズミは、1人先んじて夜営の準備をするのだった。
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