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第二十五章 オブリビアダンジョン
第四百三十八話 事前準備
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翌朝。
ベリアは冒険者ギルドに昨日の件を伝えに向かうと、事前にヴィラードから情報を受け取っていた光の教会の人間も待機していた。
「ありゃ?朝一番に来たのに」
素の反応をしたベリアを見て、目の前にいる2人が笑う。
「年寄りの朝は早いのだよ」
「早すぎるくらいだな。若い頃はもっと寝ていたいと思ったものだが、今じゃ夜中に何度目が覚める事か」
人間が歳を取ると何かと面倒も増えるのだと感じたベリアだったが、気を取り直して報告を始めた。
時を同じくして。
イズミはマスタングに頼みショットガンのスキャンを頼んでいる。
昨晩の戦闘にてケルベロスの口内に右腕ごと入ってしまったので、何か異常が無いかを確かめる為だ。
「外装に牙の跡がありますが、動作に異常はありません。洗浄しておきますか?」
「頼む」
替えの服に着替えてから、マスタングの魔力補給を行う。
メーターで減りは確認出来るが、これは移動用のみであり戦闘用は別だ。
「昨日の戦闘での魔力消費は?」
「およそ0.3%です」
「思ったより消費してないな」
「ガトリングと火炎放射器の魔力消費量が、そもそも少ないのです」
マスタングのエネルギー理論は皆目分からないが、長期間の戦闘継続能力があるのは確かである。
魔力補給を済ませたイズミは、汚れてしまったジャケットを水洗いする為に井戸に水を汲みに向かう。
昨晩飲み屋で宿屋の空きを確認したら、幸運な事に2人分の部屋を確保出来たのだ。
井戸に向かうではち合わせた宿屋の主人と挨拶を交わし、水を確保してからマスタングの元へ戻りジャケットを水洗いし始める。
何故マスタングに洗浄を頼まないのかと問われると、自分の着る衣服くらいは自分で洗う方が良いと考えているからだ。
洗い終えたジャケットを干してオブリビアのある方角を眺めていると、くたびれた様子のベリアが戻って来た。
「イズミ、話しはして来たぞ」
「こっちもジャケットの洗濯を終えたところだ。後ろに居るのは?」
「あー、光の教会の方で今回の調査の責任者で」
「シュナイダーと申します、お会い出来て光栄です」
シュナイダーと名乗る男は、短く整えられた銀髪に彫りの深い顔をした高身長の男だった。
「イズミです。只の旅人ですので、畏まった言い方は不要です」
「いえいえ、オブリビア調査に協力して下さる方にそのような態度や言動は…」
そう言っているシュナイダーだったが、イズミが気軽に会話出来る範囲で構わないと付け加えると表情が少し和らいだ。
「早速なのですが、2点ほど確認をさせて頂きたく」
「なんでしょう?」
「昨日オブリビアにて、ケルベロスと戦闘になったと伺いました。右腕を噛まれはせずとも、口内に入ったと」
「そうですね。噛み千切られなくて良かったですよ」
右腕の跡を見せると、興味深げに跡を観察する。
「呪いや壊死は無いようですね…やはり高ランクの魔物の唾液の影響でしょう。しかし跡が消えるまでは魔物達から狙われる可能性が高くなりますので、注意した方が良いですね」
「餌だと思われると?」
「マーキングされたと考えると、分かりやすいかと」
「それは分かりやすいですね…」
しょぼくれた表情をしたイズミは、コップに飲料水を注ぎ喉の渇きを潤すと2つ目の確認事項を問う。
「もう1つは?」
「テレジアとヴィラードからの報告を聞きました。道中で祈りを捧げていたら、精霊様がお見えになられたと」
「そうですね。何やらテレジアさんの聖魔法についてお話をなさったとか」
「そう報告を受けました。驚きましたよ、出発前に話した時よりも聖魔法の制御が上達していましたので」
その話しぶりからすると、お供え物の事は伏せてくれたようだ。
ところで、と間をおいてシュナイダーは話を切り出した。
「テレジアにお渡しになったペンダントですが、何処で入手した物でしょうか?」
「残念ながらその質問には答えられない」
「女神様を象った物の販売する場合は、その商品に教会認定品の印が無ければなりません。あのペンダントにはありませんでした…これは極めて重大な違反行為の恐れがあります」
マスタングはエレナが作り出した氷像をベースにしてメダルを実体化したので、女神様を象ったと言っても間違い無いが、シュナイダーの口調からしてテレジアは『女神様をあしらった道具』と精霊が言っていた事は伝えていないようだ。
なのでしらばっくれる事にした。
「美人さんの横顔が彫られた、只のメダルでしょう。考え過ぎでは?」
「あの精巧さは熟練の職人が手掛けたとしか思えません。横顔からも伝わる慈悲深き微笑み、あれは間違いなく女神様をモチーフにしています。誰かが違反行為をしているとしか考えられません」
信仰心の深さなのか、メダルから何かを感じ取ったのか自信に満ちた声でシュナイダーは断言した。
イズミはそんなシュナイダーの目をジッと無言で見つめる。
ただ無感情に目の前に立つ男を見つめる。
暫しの沈黙の後、イズミは口を開いた。
「探しても見つからないとは思いますが、頑張ってください」
「教えては頂けないようですね…見つけ出しますよ、必ず」
シュナイダーは挨拶をするとその場を去る。
イズミはシュナイダーが視界から消えるのを待つと、手に持ったコップに水を注ぎ何事も無かったかのように一口飲んだ。
「イズミ、ちょっとマズいぞ」
「そうか?」
「違反者を庇ったようなもんだぞ。要注意人物のリスト入りは確定だな」
「俺は既に冒険者ギルドの要注意人物リストに入ってるし、今更だな」
人探しを始めるようでは、決して制作者には辿り着けないのだ。
お手並み拝見と言った所である。
「よし、昼間のオブリビアを見に行くとしますか」
イズミは気を取り直してジャケットを回収すると、マスタングのエンジンをかける。
ベリアも助手席に乗り込んだので、まったりとマスタングをオブリビアへと走らせる。
ベリアは冒険者ギルドに昨日の件を伝えに向かうと、事前にヴィラードから情報を受け取っていた光の教会の人間も待機していた。
「ありゃ?朝一番に来たのに」
素の反応をしたベリアを見て、目の前にいる2人が笑う。
「年寄りの朝は早いのだよ」
「早すぎるくらいだな。若い頃はもっと寝ていたいと思ったものだが、今じゃ夜中に何度目が覚める事か」
人間が歳を取ると何かと面倒も増えるのだと感じたベリアだったが、気を取り直して報告を始めた。
時を同じくして。
イズミはマスタングに頼みショットガンのスキャンを頼んでいる。
昨晩の戦闘にてケルベロスの口内に右腕ごと入ってしまったので、何か異常が無いかを確かめる為だ。
「外装に牙の跡がありますが、動作に異常はありません。洗浄しておきますか?」
「頼む」
替えの服に着替えてから、マスタングの魔力補給を行う。
メーターで減りは確認出来るが、これは移動用のみであり戦闘用は別だ。
「昨日の戦闘での魔力消費は?」
「およそ0.3%です」
「思ったより消費してないな」
「ガトリングと火炎放射器の魔力消費量が、そもそも少ないのです」
マスタングのエネルギー理論は皆目分からないが、長期間の戦闘継続能力があるのは確かである。
魔力補給を済ませたイズミは、汚れてしまったジャケットを水洗いする為に井戸に水を汲みに向かう。
昨晩飲み屋で宿屋の空きを確認したら、幸運な事に2人分の部屋を確保出来たのだ。
井戸に向かうではち合わせた宿屋の主人と挨拶を交わし、水を確保してからマスタングの元へ戻りジャケットを水洗いし始める。
何故マスタングに洗浄を頼まないのかと問われると、自分の着る衣服くらいは自分で洗う方が良いと考えているからだ。
洗い終えたジャケットを干してオブリビアのある方角を眺めていると、くたびれた様子のベリアが戻って来た。
「イズミ、話しはして来たぞ」
「こっちもジャケットの洗濯を終えたところだ。後ろに居るのは?」
「あー、光の教会の方で今回の調査の責任者で」
「シュナイダーと申します、お会い出来て光栄です」
シュナイダーと名乗る男は、短く整えられた銀髪に彫りの深い顔をした高身長の男だった。
「イズミです。只の旅人ですので、畏まった言い方は不要です」
「いえいえ、オブリビア調査に協力して下さる方にそのような態度や言動は…」
そう言っているシュナイダーだったが、イズミが気軽に会話出来る範囲で構わないと付け加えると表情が少し和らいだ。
「早速なのですが、2点ほど確認をさせて頂きたく」
「なんでしょう?」
「昨日オブリビアにて、ケルベロスと戦闘になったと伺いました。右腕を噛まれはせずとも、口内に入ったと」
「そうですね。噛み千切られなくて良かったですよ」
右腕の跡を見せると、興味深げに跡を観察する。
「呪いや壊死は無いようですね…やはり高ランクの魔物の唾液の影響でしょう。しかし跡が消えるまでは魔物達から狙われる可能性が高くなりますので、注意した方が良いですね」
「餌だと思われると?」
「マーキングされたと考えると、分かりやすいかと」
「それは分かりやすいですね…」
しょぼくれた表情をしたイズミは、コップに飲料水を注ぎ喉の渇きを潤すと2つ目の確認事項を問う。
「もう1つは?」
「テレジアとヴィラードからの報告を聞きました。道中で祈りを捧げていたら、精霊様がお見えになられたと」
「そうですね。何やらテレジアさんの聖魔法についてお話をなさったとか」
「そう報告を受けました。驚きましたよ、出発前に話した時よりも聖魔法の制御が上達していましたので」
その話しぶりからすると、お供え物の事は伏せてくれたようだ。
ところで、と間をおいてシュナイダーは話を切り出した。
「テレジアにお渡しになったペンダントですが、何処で入手した物でしょうか?」
「残念ながらその質問には答えられない」
「女神様を象った物の販売する場合は、その商品に教会認定品の印が無ければなりません。あのペンダントにはありませんでした…これは極めて重大な違反行為の恐れがあります」
マスタングはエレナが作り出した氷像をベースにしてメダルを実体化したので、女神様を象ったと言っても間違い無いが、シュナイダーの口調からしてテレジアは『女神様をあしらった道具』と精霊が言っていた事は伝えていないようだ。
なのでしらばっくれる事にした。
「美人さんの横顔が彫られた、只のメダルでしょう。考え過ぎでは?」
「あの精巧さは熟練の職人が手掛けたとしか思えません。横顔からも伝わる慈悲深き微笑み、あれは間違いなく女神様をモチーフにしています。誰かが違反行為をしているとしか考えられません」
信仰心の深さなのか、メダルから何かを感じ取ったのか自信に満ちた声でシュナイダーは断言した。
イズミはそんなシュナイダーの目をジッと無言で見つめる。
ただ無感情に目の前に立つ男を見つめる。
暫しの沈黙の後、イズミは口を開いた。
「探しても見つからないとは思いますが、頑張ってください」
「教えては頂けないようですね…見つけ出しますよ、必ず」
シュナイダーは挨拶をするとその場を去る。
イズミはシュナイダーが視界から消えるのを待つと、手に持ったコップに水を注ぎ何事も無かったかのように一口飲んだ。
「イズミ、ちょっとマズいぞ」
「そうか?」
「違反者を庇ったようなもんだぞ。要注意人物のリスト入りは確定だな」
「俺は既に冒険者ギルドの要注意人物リストに入ってるし、今更だな」
人探しを始めるようでは、決して制作者には辿り着けないのだ。
お手並み拝見と言った所である。
「よし、昼間のオブリビアを見に行くとしますか」
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