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第2章 幼年編
129 フォックス
しおりを挟むひょんなことからヴィヨルドの冒険者ギルドで模擬戦となった。
「ねーねーアレク、アレク。なんか楽しそうだね。アタシも参加したい!」
「あーシルフィ起きたの」
頭上のシルフィが久しぶりに起きたかと思ったら、俺の横でワクワク顔をして飛びまわっている。
そんなシルフィの姿はおろか、俺との会話は訓練場の誰も気づいていない。
「そうだねシルフィ。ちょっとだけだよ」
「あの狐野郎、ギッタンギタンにしてやるんだから!」
(ギッタンギタンって‥)
シルフィはこないだのエルフのマリー先輩との模擬戦に参加できなくて不完全燃焼だったもんな。
訓練所の観覧席はいつのまにかけっこうな数の冒険者が集まっていた。
俺はフォックスに賭けるぞ!
俺もフォックスに賭ける!
俺も!
俺も!
鉄級冒険者 狐獣人フォックスと赤銅級冒険者学園1年生の俺の模擬戦。
こんな娯楽は見逃すものかと賭けに興じる冒険者たち。
早くも賭けが‥‥‥賭けが成立しない。
「かーこんなんじゃ賭けになんねーじゃねーか。誰かガキに賭ける奴はいねーのか?」
しーん
胴元となった冒険者が嘆く。
しーん
「ヨシ、じゃあ坊主には俺が賭けてやる」
ロジャー顧問が言った。
「わ、私もアレク君に賭けます!」
「ガハハ。坊主が勝ったらヒロコと俺の総取りだ。わかりやすいな」
ヒューヒュー
ロジャーさんご馳走さん!
おい、誰か俺に金貸してくれ!
俺も俺も!
そんな中、サーマル副ギルド長も大金をフォックスに賭けたそうだ‥。
「ヨシ、じゃあそろそろ闘るか。俺が見届け人をやるロジャーだ。坊主、ああアレクだったな。素手にするか?木刀にするか?」
「いえ、剣のままで構いませんよ」
「えっ?」
これには逆に狐獣人のフォックスが驚いたようだ。
「おい、ヒューマンの
ガキ。模擬戦とはいえ本当に真剣でいいんだな?間違って腹刺したり、手足落としても後から文句言うなよ!」
「ああ。でもアンタよくしゃべるな。
俺も間違ってアンタの手を落としても文句言わないでくれよ」
「・・・」
俺の纏う雰囲気が変わったことにフォックスも気づいたようだ。
「ロ、ロジャーさん。ガキとはいえやり過ぎちゃマズいかと‥」
「いーやフォックス。死ぬ前に俺が止めてやるよ。存分に闘れ」
ワーワー
始まるぞー
俺は背にした剣を抜き、正眼に構える。
「殺す以外、なんでもアリだ。それじゃあ、いくぞ。始め!」
抜け目なく両手剣を構えるフォックス。
俺も正眼に構える。
構えた姿を見て、相手の力量が判るようになってきた俺。
うん、見たところフォックスはそこそこ実戦は積んでそうだ。
獣人だからたぶん魔法は使えないとは思うけど。でも何が起っても不思議はない。決して油断はしないぞ。
俺は余所見をすることなく、相手ににじり寄る。
「舐めんなガキー」
長い手足(リーチ)を活かして右手で突きにかかるフォックス。最初から正中狙いだよ、コイツ。さらには左手に掴んでいた煙粉のようなものを俺の顔目がけて投げつけた。
「ふん、甘いわよ。エアガード!」
俺自身が避けるまでもなく、シルフィが俺目がけて寄せてくる煙粉をそのまま突風のようにフォックスの顔に見舞った。
「クソっ!見えねー」
自身が放った煙粉で自爆したフォックス。
それでもさすがに戦闘慣れしていると言うか、さらには狐獣人らしい狡猾さからか、即座に俺の間合いから離れるフォックス。
俺は追撃するまでもなく、そのままフォックスの目が見えるまでを待った。
「クソっ。油断したよガキ」
再度詰め寄る狐獣人のフォックス。
でも次の手を打とうとしているのはバレバレだよ。
狐らしい細い目線の先で、舎弟?にアイコンタクトを送っているのはバレてるよ。
うん、判るよ。訓練場外のお前たちも仲間なんだよね。
「死ねー」
俺に向け振りかざした両手剣を上段から振り下ろすように見えた瞬間。俺を前にしていたフォックスがその身体を一気に屈みこんだ。
舎弟?のようについてきた2人組の狐獣人が15メル(15m)先に見える。
1人が周囲から身を隠して、もう1人が不自然な挙動。
刹那、その狐獣人の膨らんだ口元が見えた。
「アレク!」
シルフィが俺に注意を促す。
「ああ見えてるよ」
舎弟が口にした小筒。そこから放たれたのは吹き矢だった。
ヒュッ!
おれめがけて吹き矢が飛んできた。
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