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第2章 幼年編
360 幼なじみ②
しおりを挟む「こんばんはー」
「おおアレク君待ってたよ、アンナが」
「アレク君おかえりなさい。待ってたわよ、アンナが」
ワハハハ
フフフフ
ん?アンナが?土産に肉はないぞ?
ニャンタおじさんの家族は猫獣人のニャンタおじさん、人族のおばさん、娘は俺と同い年ミックスのアンナと7歳歳下のデイジーだ。
「おかえりアレク」
「えっ!?」
そこにはスッとした肢体で立っていたアンナがいて俺は思わず目を見張ったんだ。だってアンナが寝転がって肉を食べていなかったんだもん!しかも……。
「アレクおかえり!」
「ただいまアンナ。半年ぶりだな」
「そうだぞアレク。寂しかったにゃ」
半年ぶりに会うアンナはますますきれいになっていた。アンナといいシナモンといい獣人の女の子って人族より早熟なんだよな。俺の中のアンナは幼なじみで出来の悪い妹的な立ち位置なんだ。そんなアンナはいつも寝そべって肉を食べてばかりいるはずなのにそうじゃなかった。しかも寂しかったって。幼なじみの俺と遊べなかった寂しさなんだろうけど。なんだか照れるぜ、まったくよぉ。しかも‥‥やっぱ綺麗になっているじゃん!
きれいになった妹に戸惑う兄の心境だぜ。
「アンナ、き、きれいになったな‥」
「えっ!?なにアレク?なんだって?」
「な、な、な、なんでもねぇよ!」
きれいになったアンナを見てられなくって思わず俺、顔を伏せてしまった。ぜったい耳まで赤くなってるよ。
「(きれいになった‥ブツブツ‥)」
下を向いてなんか呟いてるアンナ。どうしたんだろう?
と、下を向いた俺とアンナの妹のデイジーの目が合った。
「デイジーちゃん!」
「にゃ?」
「アレクお兄ちゃんが帰ってきたにゃ」
「アレクお兄ちゃんおかえりにゃ」
「ただいまにゃ。デイジーちゃんは元気にしてまちたにゃ?(すーはーすーはー)」
俺はデイジーを抱き上げて速攻でお腹の匂いを嗅いだ。
「アレクキモい!でも‥」
さっきからアンナが赤い顔をしているのにはまるで気がつかない俺。そう、俺は猫吸いに夢中だった。
(あーなんで獣人の幼児はこんなにいい匂いがするんだ。すーはーすーはーたまらんのぉ)
「アレクお兄ちゃんくすぐったいにゃ。キャッキャッ」
「デイジーちゃんはかわいいでちゅねー。アレクお兄ちゃんがデイジーちゃんをもらっていこうかにゃ」
「くすぐったいにゃ。キャッキャッ」
「くすぐったいかにゃ?くすぐったいかにゃ?くすぐったい‥」
「あのねアレクお兄ちゃん」
「なんにゃ?デイジーちゃん」
「チャミーお姉ちゃんが言ってたよ。ヘンタイには気をつけなちゃいって」
「えっ!?俺はヘンタイなのか……」
「うん。アレクお兄ちゃんはヘンタイにゃの」
ワハハハハハ
フフフフフフ
キャッキャッ
ガビーン!
ヘンタイって幼児に言われてしまったよ。これは地味にショックだな……。
「おばさん、これお土産」
「あらこんなにたくさんいいの。いつもありがとうねアレク君」
お土産にメイプルシロップと干し魚を手渡した。海から離れたデニーホッパー村で海魚の干物は案外ぜいたく品なんだ。猫獣人はやっぱり肉はもちろんだけど魚も大好きだし。
たくさんあるのはリアカーのおかげだよ。
「これは何なの?マヨネーズっぽいけど?」
「ああこれはね、メイプルシロップっていうんだ。おばさんみんなにスプーンとって」
「え?ええ‥」
「じゃあみんな、ちょっとなめてみてよ」
そう言った俺はみんなのスプーンに少しずつメイプルシロップを注いで手渡した。
「「「えっ!!あまーい!あまーい!あまーい!」」」
でしょでしょー。甘いでしょ~。
「何につけても甘いからね。あーでもそのままなめてたらすぐになくなるよ。しかも虫歯になるからダメだよ!」
「「「あまーい!あまーい!あまーい!」」」
あーダメだわ。アンナもデイジーもぜんぜん聞いてねぇーや。
「あのさ、うち今から温泉に行くんだけどみんなも一緒にどう?」
「いいな。じゃあわが家も行こうか?」
「ええ」
「「行くにゃ行くにゃ」」
「じゃあ準備できたら家に行ってて。俺教会にもお土産置いてすぐに戻るから」
「わかったよ」
「アレクありがとうね」
「アレクお兄ちゃん甘いのありがとうにゃ」
「デイジー明日おやつにパンケーキを作るからな。パンケーキにメイプルシロップはめっちゃ美味しいんだよ」
「楽しみにゃ」
「じゃあ俺教会に行ってくるから」
「「わかったにゃ」」
▼
教会にもお土産を届けてきたんだ。クーラーボックスに入れた魚の干物とメイプルシロップ。それからタイラーのおっさんから預かった手紙と酒。ロジャーのおっさんからの結婚式の招待状だ。
ダンジョンからのドロップ品のレプリカで時計塔を作りたいって話もしたよ。
「師匠、タイラーのおっさんが兄弟子だなんてなんで教えてくれなかったんですか?」
「わははは。わかって接してたらアレク、お前は構えるだろう。構えず先入観を持たずに人に向かうことこそ大事なんだぞ」
「なるほど!さすが師匠だ」
「今日はこれからみんなで温泉なんです。じゃあ明日あらためて来ます。時計塔の場所も決めといてください」
「明日は午後から刀をみてやるからな」
「はい。お願いします。じゃあ失礼します」
「シスター、秋にはヴィヨルドへ行くことになるからの。1週間ほど誰かに留守の手配を頼ばねばの」
「はい神父様。楽しみですね」
「そうじゃの」
わが家とジャンを除く3家のみんなで温泉に一緒に行ったんだ。
手を繋ぐヨハンとチャミーを見てやっぱり羨ましかった。
でもいいんだ。俺はデイジーをおぶっているから。ああ仔猫はやっぱりかわいいよな。
俺におぶさったデイジーはアンナと手を繋いで歩く。
「(あなた‥)」
「(ああアンナの想いが叶えばうれしいんだがな)」
「(どうにかならないかしら)」
「(こればかりはなぁ)」
「「‥‥」」
そうは思いつつも、ニャンタ夫妻は思った。娘の想いが通じることは厳しいだろうと。それはアレクがこのまま村に止まる将来の絵図はどうにも想像できなかったからだ。
▼
みんなで入った温泉の帰り。
「アレク‥」
そこにはいかにも俺を待っていた仲間の姿があった。
「おおーシャーリーただいま。俺、今日帰ったんだ」
「うん‥‥おかえり‥‥」
「手紙読んだよ。ミリアの手紙もな」
「う、う‥‥うわーん」
いきなり号泣したシャーリーが俺に抱きついてきたんだ。
「ちょっ!?おま‥」
一瞬キムラ君のモノマネが頭に浮かぶようなベタな台詞(誰もわかんないよな)を発してしまったけど‥‥女の子に抱きつかれるなんてドキドキした。でも、どどど、どうしたんだ?
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