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第2章 幼年編
379 護衛依頼
しおりを挟む「久しぶりねアレク君。フフフ、いろいろ聞いてるわよアレク君の活躍は」
「えっ?何?えーっと‥あははは‥」
久しぶりのサンデーさんはやっぱりめちゃくちゃ綺麗可愛かった。のんのん村のシスターサリーに近い雰囲気なんだよね。小柄でキュート。それでいてお身体は大人……。俺思わずドギマギしてしまったもん。
「さて冒険者のアレク君はこれから3日間どうか私を守ってくださいね。商人のアレク君とは3日間いろいろお話をしましょうね」
上手いこと言うよなサンデーさん。
「はい。冒険者としてサンデーさんを絶対に守ります!商人としては‥‥いろいろ教えてください」
「フフフ。それとね紹介するわ」
犬獣人の仮面を外した男性は高齢のエルフ族だった。無造作に後ろで結えた銀髪に長い顎髭も銀色。ローブ姿は魔法使いのようにも見えた。なんかね、魔法学校の校長先生の雰囲気があったんだよな。
エルフ族だってことは馬車に乗った瞬間にわかったよ。だって肩に精霊が座っていたからね。
「ジョージ・テンプルじゃ。よろしくのアレク君」
「よろしくお願いします。テンプル先生」
「あら。アレク君先生を知ってたの?」
「あっいえ!すいません。ついつい雰囲気でそう呼んじゃいました」
まぁフフフ
ワハハハハ
あはははは
「去年の12月ごろからテンプル先生には商団の護衛長や私の護衛をお願いしてるのよ。
いつも仮面を被ってもらってるから気づかれてないけどね。めちゃくちゃ心強いのよ。あとふだんに聴く先生のご経験からの話は素晴らしくためになるわ」
「アレク君はヴィヨルド学園じゃったかの」
「はいヴィヨルド学園の1年生。4月から2年生です」
「ビリーは息災にしてたかの?」
「えっ?!じゃあテンプル先生はやっぱりビリー先輩に矢を教えた先生だったんですね!」
「ははは。そうじゃよ。あの子は精霊が見えないのに天性の才があったんじゃろうな。弓はみるみる上達したの。もちろん頭の吸収も早かったがの」
「そうだったんですね。俺ビリー先輩にはめちゃくちゃ世話になりました。ビリー先輩が俺たち仲間をまとめ上げてくれたおかげで俺はダンジョンから生きて帰ってくることができましたし。なんていうかビリー先輩は素晴らしい先輩です!」
「そうかいそうかい。弟子の活躍を聞けるのはいつになってもうれしいものじゃの」
テンプル先生がビリー先輩に矢を教えた先生だったのには驚いたな。不思議な縁だなって思ったよ。帰ったらビリー先輩に手紙を書かなきゃな。
サンデーさんからは改めてなぜ俺に指名依頼となったかの経過を話してもらった。
「アレク君が学園ダンジョンに向かった頃からかしら。アレク袋やマヨネーズの紛い物がけっこうな数見つかったのよ」
「あーやっぱり出ましたか」
パクり商品が出てくることは想像してたけどね。
「ただね、それが見つかった場所が問題なのよね。そのほとんどが王国以外の周辺国からなのよ」
「そうだったんですね」
「しかもね厄介なことに商品の品質がけっこう高いのよ」
「へぇー」
ミートマッシャーやアレク袋、マヨネーズなど俺が登録して発売してる商品にはアレク工房製って刻印が打ってあるんだ。
製造はほとんどが王都のアレク工房から。発売元はミカサ商会やサンデー商会。中原の商会や商人はミカサ商会やサンデー商会からアレク工房の商品を仕入れて商いをしてるはずだよ。
商品にアレク工房製って銘が打ってあるのは基本的な考えとして模造品が現れてもアレク工房製品は高品質なものだから自然と粗悪品は淘汰されるだろうとした考えなんだよね。でも本物そっくりの模造品(コピー商品)が現れる可能性も考えてその刻印自体にちょっとした細工を施してあるんだ。明朝体とゴシック体みたいな感じだね。これはサンデーさんや俺が見たらようやく判るくらいのものなんだ。ぱっと見じゃあ判断し辛いくらいの細工なんだよ。よーく見ると初めて判るくらいの違いなんだ。
「でね、調べたらアザリア領辺りから紛いものが出てるってことまでを突き止めたのよ。しかもこの紛いものにアザリア領自体が噛んでるみたいなのね」
「アザリア領かあ‥」
サンデーさんの話に納得するものがあったのは事実なんだ。
アザリア領。
位置的にはヴィンサンダー領の北西なんだ。地図でいうとヴィヨルド領の上って感じかなあ。ヴィヨルド領と同じように西海に面してる領がアザリアなんだ。面積はヴィンサンダー領と同じくらいかな。大戦後に王国に恭順するようになった、いわゆる「外様領」だね。
「アザリアは西海に面しているでしょ。だから流通段階から王国の各領を経ないで商いができるのよね」
「アザリアのあんまり良くない噂は俺も聞いたことがあります。噂だから確かなことは言えませんが」
「アレク君の噂に踊らされないその考え方はいいわね。ただね、やっぱり何かあるところから噂が立つのも事実なのよね」
「そうなんだ‥」
アザリアは武に秀でるわけでも知に秀でるわけでもない領だ。農業も漁業も商業も芳しくない。
ただアザリアという領名はよく知られているんだよね。昔から中原内でモノマネをするといえば「アザリアをする」という言葉が良くない表現の慣用句として使われているくらいなんだ。
また古くから奴隷商の集積地として中原に知られた領であることも「人の褌で相撲を取る」みたいに「アザリアをする」という具合なんだよね。過去にも模造品絡みで王国内のいくつかの領と訴訟になっているという話は俺も聞いたことがある。まああんまり関わりたくない領なんだよね。
「最初に紛いものが見つかったのはアザリアじゃなくってヴィンサンダー領なのよ。見つかったのはたまたま偶然ね。サウザニアのサンデー商会に西海の海洋諸国の商会からマヨネーズの大量追加注文が入ったの。でもうちはそことの取引はこれまでに1度もしてなかったのよね」
「なのに追加注文?」
「ええ。おかしいでしょ。で調べたらよくできたマヨネーズの模造品が出てきたの。そこからは模造品の粉芋入アレク袋やらナン入りアレク袋とかがどんどん出てきたわ」
「へぇー。どこから?」
「商業ギルド管轄の倉庫からね」
「なにそれ?」
「どうやらサウザニア商業ギルドの誰かが認可を出してるのよ。しかも輸送にはサウザニアの冒険者ギルドから護衛がついていってるのよね」
「えー。それじゃあアザリアで偽物を作ってわざわざサウザニアに持ってきてまたアザリアに戻すの?」
「ええ」
「持ってくるのも持って帰るのも別の鉄級冒険者に振り分けてるみたいなのよね」
「うん‥でも無駄なことやってるけどそれじゃあ他国の相手商人は信じるよね」
「でしょー。だいたいヴィンサンダー領だから野盗も魔獣も少ないのが運ぶのにも好都合なのよね」
「なるほどねー」
「それでね、私サウザニアの商業ギルド長に相談したのよ。去年暮れあたりに。アザリアも絡んでないかってことも含めて」
「うん」
「そしたらね、ほぼそのあたりから私何度か狙われだしたのよね」
「えっ?!サンデーさん大丈夫なの?」
「ええ。ふだんから行動は知られないようにしてるわ。護衛はついてもらってるし馬車も特別に速いものだからね」
「そうなんだ‥」
「でね、狙われるのは決まってヴィンサンダー領周辺に来てるときなのよ。しかも商業ギルドに行ったあと。それでヴィヨルドのロジャーさんとミョクマルさんに相談して今回の流れになったのよ」
「うーん。でもそれで俺っていうのがわかんないなぁ」
「何言ってるのよ!すぐにロジャーさんから勧められたのがアレク君なのよ。もちろんミョクマルさんからもね!アレク君は強いから安心していいって。だから冒険者でもあるアレク工房のアレク君に来てもらったのよ」
「へぇー」
でも俺そんなに安心してもらえるほど強くなったのかなぁ。
「3日後アザリアの領都アネッポで商品見本市が開かれるの。海洋諸国を中心の商人たちにね。アザリアにはヴィヨルドからミョクマルさんの護衛でロジャーさんが来るってことも、帰りには私も一緒にヴィヨルドに行くってことも誰かさんの耳には入ってるわ。まあだからね、今朝ヴィンサンダー領から馬車2台の荷物で私がアザリア領に向かう情報とその護衛は冒険者3人だけだということもおそらく誰かさんに伝わってると思うのよ。誰かさんはロジャーさんとことを構えることは絶対にしないわ」
「ロジャーのおっさん一応『救国の英雄』だもんね」
フフフフ
ワハハハ
「ロジャーさんをおっさん呼ばわりにするアレク君のほうがすごいわよ。ねぇ先生」
「ほんにのぉカッカッカッ」
ん?おっさんはおっさんじゃね?
「だからね私を狙うんなら今日から3日間なのよ。でもまさか先生とアレク君がいるとは向こうも気づいてないわフフフ」
楽しそうに話すサンデーさん。肝が据わってるよな。
「だからアレク君はアザリアの領都アネッポに着くまで私を守ってね。領都からはロジャーさんが同行してくれるから。
おそらく今日から3日。アネッポに着くまでに襲われるわ。
でもこっちはアザリア領が偽物造りに結託してることも暴きたいのよね。もちろん思いっきりふんだくってやるけどね。楽しみだわー」
ニッコリ笑うサンデーさん。サンデーさんって綺麗可愛い顔してるのにまさかの戦闘狂だったんだな。
「じゃあ出発します」
鉤爪のリーダー・ジェイブが声をかける。
ゴロゴロゴロゴロ‥
馬車が動き出した。
【 サウザニア冒険者ギルドside 】
「マリナさん例のサンデー商会さんの件はどうなりました?」
「あああの件ね。予定通り、うちからは鉤爪の3人を護衛につけるわね。休養日明けの早朝に出発するはずよ」
「そうなんですね。あっ、忘れてた!私、昨日の分の依頼票ギルド長に渡してきますね」
「ええアンジェラさんお願い」
(去年ギルド長と一緒にやってきたアンジェラさん。やっぱりあの子も‥‥なのね‥‥)
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