アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
398 / 722
第2章 幼年編

399 シェフアレク

しおりを挟む


 「帰ろうかセーラ‥」

 「ですねアレク‥」

 「ユーリ隊長、ライラ先輩お先に失礼します」

 「「また明日(ね)‥」」

 「「はい‥‥」」

 「なんかつまんねぇ‥」

 「ほんと‥」





 ダンジョンに向けて気が進まない分、余計に直前に迫ったロジャーのおっさんの結婚式の披露宴と引出物(手土産)の準備に俺は前のめりになっていったんだ。

 さすがに披露宴当日はダンジョンの中だろうからそれまでに納得いく形にして少しでも喜んでもらいたいからね。
 あっ、喜んでもらいたいのはもちろんミランダさんにだよ。ロジャーのおっさんはついでだよ。









 「うん。いいわねこの質感。わしだっけ?これは素晴らしい出来、いえ芸術作品だわ」

 ロジャーのおっさんの結婚式の招待状は既に中原中に送ってあるよ。VIP用は和紙の招待状、そのほかは洋紙の招待状で。
 そのサンプルを手にしたサンデーさんが感嘆の声を上げる。

 「わし(和紙)もよーし(洋紙)もサカスで順調に生産が進んでるからねアレク君」

 「うん。サンデーさんありがとう」

 「披露宴のあと、間違いなくわしもよーしも、どちらもとんでもないことになるわ」

 「あははは‥」



 結婚式の招待状。
 王家と各国の要人、各領主用には和紙で作った招待状100枚を配付したんだ。偉い人(VIP)の結婚式披露宴はどこも2人参加なんだ。だから100枚だから200人。そのほかのお付きの人はとうぜん別室で控えてるんだって。
 お付の人たちにもなんか用意しなきゃな。

 でその招待状は和紙。従来の羊皮紙のそれより圧倒的に上質なんだよね。今ごろ受け取った人はみんなびっくりしてるだろうな。

 袱紗を開けると2枚折の和紙の招待状。中にヴィヨルドの国花竜胆(名前もリンドウなんだ)を押し花にして和紙に取り込んであるよ。

 押し花は土魔法の圧縮と風魔法の乾燥で。生活魔法レベルの発現力で上手く作ることが出来るんだ。しかも俺が知ってる押し花よりもきれいな色合いが出るんだよね。

 この押し花の装飾を加えた和紙も、今後はサカスの街に作ったアレク工房で製造するみたいなんだ。土と風の生活魔法を発現できる魔法士さんたちも専属で雇うことも決定してるみたいなんだ。
 「みたい」って結局俺はいつもどおり言うだけで何にもしてないんだけどね。


 このほかの800人に対しては封筒に入れた洋紙の招待状(カード)。
 文面、竜胆のイラストはこの世界初の活版印刷を採用したよ。
 印刷も今後飛躍的に普及するよね。そのうち新聞とかも作ったりして。

 サカスのアレク工房は製紙と印刷、製版等をメインにするみたいだよ。
 あっ、また「みたい」って言っちゃったよ。



 「わしを入れるこのふくさ?これがまた素晴らしいわ。これぞ芸術品よね!」

 「だよね!この袱紗はグラシアで織ってもらってるよ。グラシアはミョクマルギルド長に紹介してもらったんだ。元々服を作ったりしてた街なんだってね。
 でもやっぱ形になったのはサンデーさんやミカサ会長がいつもどおりに俺のわがままを聞いてくれたからなんだよね」

 「フフフ。グラシアのアレク工房は寡婦や事情を抱えた女性たちを中心に雇って織ってくれてるのよね」

 グラシアのアレク工房は織機中心なんだ。絹織物と木綿織物。

 「いつもありがとうね。サンデーさん」

 「なに言ってるの。私はアレク君の1番の味方なんだよ!
 こないだのアネッポも楽しかったんだから。
 アレク君はこれから学園ダンジョンでしょ。だからこの後私がグラシアとサカスを直接見てくるからね」

 「うん。よろしくね」




 ヴィヨルド領第2の都市サカスは製紙業、印刷業の街として、第3の都市グラシアは紡績の街としてともにヴィヨルド領興隆を支える礎の一端を担っていくことになるんだ。


 紡績の編機は東北の田舎の婆ちゃんがやってたのを思い出して作ったんだ。蚕も黒い森にいたのをグラシア近郊に養蚕畠を作って育てることにしたし。綿花栽培も併設して始めたよ。

 農業はノームにお願いするとすごく良いものが早く育つんだよね。

 絹は高級品として、木綿は普及品としてどんどん量産化していく予定だよ。

 えーっとね、本当は紙の話と養蚕から紡績の話だけで話し尽くせないほどたくさんあるんだけよね。だけどそのへんの話はまたの機会かな。



 「相変わらずアレク君の古代文明の転用は素晴らしいわね。今も図書館通いをしてるの?」

 「あははは。でもヴィヨルドに来てからは学園長のおかげなんだ」

 「へぇーそうなの」

 さまざまなアイデアは古代文明の復元として、その知識を学園長から勉強してることにしたんだ。もちろん学園長には許可をもらってるよ。出来の悪い甥っ子に頼まれたって苦笑いしてたけど。
 今や学園長も俺の大事な家族なんだ。



 こうした紙製品のあれこれは王都とヴィンランドを皮切りにミカサ商会とサンデー商会で結婚式披露宴のあとから一斉に発売されるんだ。
 廉価な洋紙の需要はとんでもないことになるだろうな。


 郵便制度も滞りなくと言いたいけど少しずつ実用化してるよ。
 郵便局は軌道に乗るまでは各商業ギルド内に併設されてるはず。数年の内には中原中に広まるといいな。
 一般の人まで情報の共有ができたら世の中だんだん平和になると思うんだよね。


ーーーーーーーーーーーーーー


 「「「しぇふおはようございます」」」

 「あ、ああ、はい。おはようございます」

 領都ヴィンランドの領主専属料理人さんたちから一斉に挨拶をされる。
 最初に料理したとき、シェフみたいだなと口走った言葉がそのままみんなに伝わってしまったみたいなんだ。

 結婚式披露宴の食事メニュー。
2部構成でいくことにしたんだ。

 VIP用には着座の昼食披露宴200人分。その後の夜は立食パーティー1,000人分。



 引出物

 着座のVIP披露宴用にはそれぞれの人の名前を書いた袋を式の半ば以降にお付きの人に手渡す。
 紐付きの紙バッグに入った引出物なんてこれもびっくりされるだろうな。

 立食パーティーの1,000人への引出物は散開時に受付の手渡しで。

 紐付き紙バッグいっぱいの引出物。1人だと持ち帰るのはたいへんかも。
 もちろん引出物のあれこれも式の翌日以降にミカサ商会とサンデー商会で購入できるよ。




 「じゃあ今日は本番を想定して当日と同じ流れでやりたいと思います。皆さんよろしくお願いします」

 「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」

 VIPの模擬披露宴は当日警備に就いてくれる領都騎士団の人たちに座ってもらったよ。
 午後からの立食パーティーは騎士団の人たちと当日のスタッフ、冒険者ギルドと商業ギルドからの希望者の抽選で当たった人から。
 抽選はすごい倍率になってたらしいけど。
 

 披露宴メニューは着座した各テーブルに置かれた洋紙に書いてある。
 進行次第から食事メニュー(簡単な説明付)を謳ったものなんて、これも中原初だと思う。しかも活版印刷だからね!

 今回のロジャーのおっさんの披露宴メニューから進行の一式は今後の宴席のモデルケースとして体系化して商業ギルドを窓口に販売していくつもりなんだって。ミョクマルさんがめちゃくちゃやる気になってたよ。

 アレクウェディングプランナー?俺まだ結婚どころか女子と付き合ったこともないんだけど……。




 ちなみに単価はこんな感じなんだ。ああGはほぼ円と変わらない金額かな。

 披露宴:20,000G~/1人

 立食パーティー:10,000G~/1人

 そう。
 から~なんだ。もちろんロジャーのおっさんのは松竹梅なら1番上の梅(逆の松もあるのかな)。
 今後各領で希望があればこうした大規模な宴席もミカサ商会やサンデー商会で承りますよって感じだね。
 (アレクケータリングサービスだな)

 で、今回のロジャーのおっさんの披露宴。商いのアレク工房としての最大の狙いが引出物なんだ。

 引出物に興味関心を覚えてもらうことも大事なんだけど、1番の狙いは別にある。

 引出物はヴィヨルドの新進の産物が詰め込まれているよ。あれもこれも、これもあれもPRしたいよね。だけど披露宴に主役を差し置いてそんな説明なんてことは絶対できない。

 でもやりようはあるんだ。ヒントはカタログギフト。あれを応用したんだよ。なにせ告知用最大の武器「紙」があるからね!

 
 『貴国(領)の国花(領花)入りの和紙10枚または以下のデザインから選んだオリジナル洋紙100枚を無料にてお届け致します。サイズは此度の披露宴招待状と同じ大きさです』

 ご希望のお方様はお近くの商業ギルド経由でミカサ商会(サンデー商会)へお送りください。
 送費等の一切は不要。無料です。
 納期は2ヶ月程度。完成次第お送りいたします。


 こんな文言を入れた紙も引出物の中に入っている。
 VIPの人たちは自分たちだけというものに人一倍好きだからこれは必ず食いつくと思うよ。
 で、ここからがカタログギフトなんだ。注文してもらった和紙または洋紙をお届けする際に、一緒に紙のカタログをつけて送るんだ。
 
 「アレク工房ではこんなものを売ってます」って。もちろん色付のデザイン画付でね。

 このカタログ配付が今回の目玉。
 何せ中原にはカタログなんてまったくないからね。これはとっても新鮮だよね。

 いくらアレク工房の親会社的存在であるミカサ商会が王家ご用達とはいえ、中原中の他国で売り込むのは難しいよね。
 だってどの国のどの領にもお抱え商会がいて入り込む要素なんてないんだから。
 
 だけどロジャーのおっさんの披露宴をやったアレク工房だから変ないちゃもんをつけられる可能性は少ないよね。


 カタログに商品の値段はあえて書いてないよ。だって既存の商会と価格で揉める必要もないからね。
 中にはそうしたお抱え商会経由で購入希望も出てくると思うけど、それはそれで柔軟に対応したいって思ってるよ。だって喧嘩しても仕方ないし。

 披露宴メニューや披露宴の様子は次の機会に話をするね。

 ―――――――――――――――


いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします! 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...