アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
450 / 722
第2章 幼年編

451 帝国留学前

しおりを挟む


 【  ヴィヨルド学園side  】

 「みなさんもすでに聞いているとは思いますがわが学園2年1組のアレク君はロイズ帝国との交換留学の形で1年間帝国へ留学することとなりました。

 王国での武勇1番との評価があるヴィヨルド領学園首席の実力を帝国でも充分に発揮してきてくれると思います。
 それでは最後にアレク君から挨拶を」


 壮行会。
 学園生全体の前で先生たちが激励してくれる挨拶を聞くだけで終わると思ってたんだ。まさか俺が挨拶をするなんて。いや挨拶をされられることになるなんて。
 なんだよ学園長!俺が緊張しまくるの知ってるじゃん!

 「えーっと‥‥て、帝国でもげ、元気に頑張ります。今、今日はありがとうございます‥」

 いいーーぞーー!
 狂犬アレクーー!
 変態アレクーー!
 わーワーわーワー

 なんでいつも俺への声援はこんなのばっかなんだよ!


 「相変わらず人が多いとヘタレだよなアレクは‥」

 「足なんか見てよ。ブルブルして産まれたての仔鹿よ」

 「ダーリンらしいじゃん」

 「シナモンの言うとおりよ!アレクらしくていいのよ。あれで」

 「でもさあれで強いんだから僕は未だに信じられないよ」

 「「「トールの言うとおりだな‥」」」

 「「「変態だし‥」」」

 「間違いねぇ」

 「なんかセーラさんって変わったよね。毒吐くようになったし」

 「「「うんうん‥」」」






 この仲間たちとは6年次の学園ダンジョンでほぼみんなが揃うことになる。

 学年2位のセーラ(セーラ・ヴィクトル)は1年次の学園ダンジョンで才能が一気に開花した。
 武闘祭では「武器」となる彼女の聖壁(ホーリーシールド)。これを破れるのは現学園生では俺だけだ。
 

 セーラに次ぐ学年3位のモーリス(モーリス・ヴィヨルド)。
 ヴィヨルド領主の次男は天才だが孤高の人との評価だった。
 が今では積極的に人と交わろうとしている。

 正直イケメンでなにもかも持ってるモーリスが人あたりもいいんだから俺は悔しくしかたない。モーリスの女装癖は理解できないけど。

 ご領主様の屋敷でロジャーのおっさんの結婚披露宴を準備してきたこともあり、俺はこの1年で1番仲良くなったのがモーリスだった。


 格闘1位総合では学年4位の狼獣人のハンス。ハンスも着実に に力をつけた。背も伸びてるし。イケメンだし。くそっ!

 俺が帝国に行っている間、秋の武闘祭で10傑に入ることもあるんじゃないかって思っている。
 ハンスはみんなの声を上手くまとめられる男だ。


 同5位のセロ(セロニアス)。
 セロは長身痩躯のモンク僧見習いだ。

 学園内には4年5年6年の先輩たちにもモンク僧見習いの生徒は何人もいる。だけどオニール先輩のあとに最も近いと仲間内で言われているのがセロだ。
 高速の杖さばきは今も健在でなお進化中なんだ。


 6位は熊獣人トールだ。
 その圧倒的な破壊力は他の追随を許さない。
 トールは領都ヴィンランドで人気の食堂「森の熊亭」で従兄弟のシャンク先輩と2人で鍋をふるっている。
 双子の妹弟ステファニーとステファンはリアル熊のぬいぐるみなんだ。


 7位と8位。女子にもすごい魔法士が2人いる。
 その赤い髪と同じように強力な火魔法を発現するアリシア。
 銀髪のキャロルは風魔法を発現できる。
 2人とも上級生たちに劣らないどころか学園内屈指の実力の持ち主なんだ。


 学年内9位はシナモン。
 豹獣人シナモンは男子にも劣らない速さが魅力的なんだ。
 女子の格闘術では学園女子No.1のライラ先輩に次ぐ実力を有し今もますます進化しているんだ。成熟に近づいている肢体は目に毒だけど。


10位はセバス(セバスチャン・ジャンリー)。
 こいつは相変わらずモーリス命の男だ。


 あと実力だけなら学年10傑のハイル。でも3年10組なんだけど。
 ハイルは‥‥うん、今も変わらない。狐仮面と勘違いされたことを喜んでいるし……。



 【  ヴァルミューレside  】

 サウザニアの卓越した鍛治技能を有したドワーフのヴァルカンさん。その妹ミューレさん(ヴァルミューレ) はヴィヨルド領刀鍛冶の至宝という2つ名を持っている。

 「アレク君帝国の首都スタッズに行くのよね」

 「うんマーレさん」

 ミューレさんからは帝国で鍛治に困ったときは会ってきなさいってドワーフを紹介してもらったんだ。

 「スタッズの鍛冶屋街にいるヴァルバッツォを頼りなさい。私やお兄ちゃんの従兄弟だからね。
 ひょっとしてもうお兄ちゃんからアレク君のことを知らせてるかもしれないわ。あの人筆無精のくせにときどきマメだから」

 「あははは。ヴァルカンさんらしいね」

 「ところで時計はどうなったの?」

 ダンジョンからのドロップ品の時計を小さくする取り組み。
 ヴィンサンダー領ではヴァルカンさんがヴィヨルド領ではミューレさんが主体でやってもらってるよ。

 「ええ。ヴィヨルド領はすべての街、すべての村に1つずつ行きわたるようにご領主様からご許可と支度金をもらったわ」

 さすがヴィヨルドだよな。たぶんヴィンサンダー領は渋るだろうけど。

 「じゃあミューレさん来年の春に帰ってくる予定だからね。いってきます」

 「がんばってねアレク君。いってらっしゃい」

 ミューレさんが俺の身体をハグして励ましてくれた。背丈は俺と変わらないけど横幅は俺の倍のミューレさん。
 でもミューレさんにハグしてもらうと俺なぜか泣きそうになるんだよね。








 帝国への出発は海路で行くことが決まってるんだ。
 王国に来ている帝国の商人さんの船に乗せてもらえることが決まってるんだ。
 出発は4月の半ば。
 海路2週間らしいから帝国には5月に着くんだって。



 【  森の熊亭side  】

 「今日も忙しかったねシャンク兄ちゃん」

 「そうだねトール。包丁の切れまで悪くなったからね」

 ここは森の熊亭。
 ヴィヨルド領領都ヴィンランドで庶民から愛される人気食堂だ。

 トールの父親が突然他界した哀しみは今も消えない。
 が、季節は冬から春を迎えたのと同じようにシャンクとトールの2人の気持ちも少しだけ前向きに強くなった。

 「アレクちゃん出発は明後日なんだろ?」

 「「うん」」

 「船に10日とか2週間乗ってるんだって」

 「へぇー。あんたたちアレクちゃんに船でも食べられるお弁当作ったらどうだい?」

 シャンクとトール。2人の父親が仲の良い兄弟だったように2人もまた兄弟のように仲が良かった。

 「「そうだね」」

 「あんたたち気づいてるかどうか知らないけどあの人が亡くなってからしばらく、包丁を誰が研いでたか知ってるかい?」

 「「ええ?」」

 「そういやよく切れたんだよね‥‥僕てっきりシャンク兄ちゃんが研いでるとばかり思ってたよ」

 「僕はトールが研いでてくれてるとばかり思っていたよ」

 2人は母親を見つめ予想できるその答えを待つ。

 「そうよアレクちゃんよ。あの人が亡くなってからしばらく。アレクちゃんは毎晩ご領主様のお屋敷から寮に帰る前。お店に来てあんたたちの包丁を研いでから帰ってたのよ」

 「「‥‥」」

 「心の優しい子だねぇアレクちゃんは」

 「「うん!」」

 「よしじゃあアレク君が船の上でも立って食べられるものをなにか作ろう!」

 「うんシャンク兄ちゃん!」


 

 ▼



 【  学園寮side  】

 「アレク君いよいよ出発ね。何か心配ごとはある?」

 「考え出したらきりがないけど今はとにかく向こうに行っても頑張るよ」

 「そうね。体調はどうなの?」

 「うん。最近背中が痛いんだよね。どうしてかな?」

 「それはね、背が伸びるんだわきっと」

 「だといいな。カウカウのミルクのおかげかな」

 「ええきっとそうよ。アレク君もいずれ私くらいに大きくなれるわよ」

 「うん!」














 再び王都の港から。

 「おぉ~!デカい船だなぁ。しかもこれ商船じゃなくって軍艦じゃね?」

 港に停泊していた船は帆船は帆船でも全面に鉄板が張られた武骨な仕様。火矢や多少の油でもびくともしないような極めて頑丈な船だった。うんこれは軍艦だな。


 「すいません。ヴィヨルド学園のアレクと言います。どなたかわかる方はおみえですか?」

 招待状を手に船の周りで作業をしていた女の人に声をかけたんだ。なんとなくおっさんよりも話しやすそうだったし。

 事前にアレクサンダー前皇帝陛下の印章が入った招待状をもらってたんだよね。狐仮面で行ったらわかるようにしとくからって言われてたんだけど……。


 「せんぱーい狐仮面君がきましたー」

 「「本当に狐仮面だよ!」」

 「「ちっさ!」」

 「本当にマルコより強いのか?」

 みんなに周知はされてたみたい。割と注目されてるなぁ。

 「艦長室に案内してくれー」

 船の上から大きな声がしたよ。

 「はーい。じゃあ狐仮面君ついてきて」

 「はい」

 声をかけたお姉さんに連れられて艦内に入ったんだ。

 「「おはよう」」

 「おはようございます」

 「「おっす」」

 「おはようございます」

 「「おいっす」」

 「おはようございます」


 すれ違う誰もがハキハキと挨拶してくれたんだ。軍人はみんな規律正しいな。

 コンコン

 「はい」

 「失礼します艦長。狐仮面君をお連れしました」

 「はいってもらってくれ」

 「入っていいってさ。じゃあね狐仮面君」

 「あ、ありがとうございます」

 案内してくれた女の人はすぐに駆け戻っていった。
 
 案内されたのは艦長さんのいる艦長室だった。

 「ようこそ狐仮面君」

 「はじめまして。狐仮面じゃなくてアレクです」

 「ハハハハ。狐仮面君じゃなくてアレク君だったな」

 そう言った艦長さんは2メル近くと背も高く白い軍服をしっかりと着こなした軍人さんだった。
 
 
 ―――――――――――――――

いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします! 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...