アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

567 メヒコ

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 「(団長‥‥)」

 意味深な目線となんとも言えない雰囲気を漂わせたドンに誘われて、俺は喧騒渦巻く円形闘技場から人気のない地下の小部屋に入った。

 「(なにかあったドン?)」

 「(はい)」

 室内に入っても小声を保つドンに、これから話す内容の尋常ならざることが容易に推測できたんだ。

 あの夏休み以降、ドンとの間には話すでなくとも、目を見れば互いの意思疎通が図れるようになったからね。

 「(武闘祭の予選から観戦していたうちの草が言うには、辺境ティティカカ学園のメヒコがめちゃくちゃヤバい奴のようなんです)」

 「(ヤバい?)」

 「(はい。どの予選も相手の得意とする武器、体術、魔法に応じて対戦する、そこは団長と同じなんです。
 そうなんですが‥‥すべて1撃で、しかも容赦なく相手を下しているそうなんです)」

 「(容赦なく?)」

 「(はい。剣では対戦相手の手脚を平然と斬り落とし、体術ではタップした相手でも容赦なく骨を折るそうです。審判に止められなければ生命も獲るまでやるそうなんです)」

 「(なるほどね。それでメヒコは膨大な魔力を纏ってるんだろうね)」

 「(はい。俺も夏休みのマル爺師匠のご指導のおかげで少しは魔力が見えるようになりましたので)」

 「(うん。もうドンは相手の魔力が見えるもんね)」

 「(はい。俺はこの予選3戦ほどのメヒコしか見てませんが、開始前のメヒコからは魔力がまったく感じられなかったんです。しかも戦意でさえも。だけど‥‥)」

 「(いきなり試合直前に膨大な魔力を纏い、戦意に溢れ出していた‥‥)」

 「(団長の言うとおりです。このメヒコ‥‥ヤバいです。
 今の俺じゃ悪意の塊のようなコイツには‥‥勝てません。
 コイツ、必ず何かありますよね)」

 「(ありがとうドン。俺も当たったらやられないように気をつけるよ)」

 「(団長に限ってやられるわけはないと信じてますが‥‥メヒコのあの魔力、悪意はとんでもなく‥‥)」

 「(大丈夫だよドン)」

 「(はい‥‥)」

 俺を信じてるって言うドンからは正直不安そうな、俺を心配する雰囲気も伝わったんだよね。理由が闇堕ちとはドンもわかんないけど悪意の塊って思うのはまさに核心をついてるよな。

 闇堕ちした相手と闘う。これは一筋縄ではいかないってことくらい俺でもわかるよ。だって俺自身が闇堕ちしかけたからね……。

 ドンとの話のあと、喧騒の闘技場に戻ったよ。

 「決勝リーグ。第3試合は陸軍兵学校のランディ君対東の辺境ティティカカのティティカカ学園メヒコ君です」

 ワーワーワーワー
 わーわーわーわー

 うん、今のところメヒコからは魔力の欠片も見えないな。てか、やっぱ戦意すら感じられないよ。
 ふつうに村にいる痩せた若い農民って感じ。

 カチッ  カチッ

 ん?微かにそんな音が聞こえたぞ。
 そしたら。

 グオオオォォォォォーーーーッッ!

 いきなりメヒコの体内から膨大な魔力が溢れ出したんだ。バケツをひっくり返したようなとんでもない魔力……。

 (な、なんだよこれ!?)

 それは観客席から見守るジンとシェールの間にも衝撃が走った。

 「「シェール(ジン)!?」」

 「いきなりとんでもなく魔力が上がったの‥‥」

 「ええ。子どもレベルじゃないわ」

 「あの眼を見てみい。あれは戦意ではないの。殺意じゃわい」

 「でもジン、殺意でもいきなりこうなった契機がわからないわ‥‥」

 「本来の闇堕ちならば、闇堕ちすればその状態のままで元には戻らないからの。ところがどうじゃ。このメヒコ君は何かの契機で闇堕ちして、また何かの契機で元に戻る‥‥」

 「タネを孕ませられたわね。しかも不完全な‥‥」

 「殻を破っては芽吹くの繰り返しね。この子おそらく‥‥耐えきれなくなって死ぬわよ。」

 「どこかに契機があるわ!」

 「「どこじゃ(どこ)?」」

 メヒコの突然の膨大な魔力。俺はスイッチのようなものとイメージしたんだけど、ジンさんとシェールは何らかの契機と解したみたいなんだ。どちらも同じだね。

 
 メヒコの身体が膨大な魔力に包まれてから。そこからはわずか数秒で闘いが進行、いや決着したんだ。

 「両者互いに礼」

 「よろしくな」ぺこり

 「‥‥」
 
 ちゃんと礼をするランディとは違い、不敵な笑いを浮かべて礼もしないメヒコ。

 「おいおい礼くらいしろよな」

 ランディが軽く非難するように声をかけたけどガン無視してるよ。

 「始‥」

 すっっ。

 審判の開始の合図が最後まで宣言される間もなかった。
 速い!
 スッと動いたメヒコがランディの腕をとり、そのまま腕ひじきの体勢に誘導する。

 ダーーーンッッ!

 パンパンっ!

 ランディのタップする暇さえ与えずに。

 プチッッ!
 ボキッッ!

 腱を切断しつつ腕も折ったんだ。

 「ガハッッ!」

 マジか。容赦ないな。
 えっ?!
 それだけでは終わらなかった。勝敗のついた倒れているランディに向けて正拳突きかよ?


















 「ガハッッ‥‥」

 倒れたまま口から血を流したランディ。






















 ランディの腹部には拳が突き抜けた痕があった……。

 「勝者メヒコ君‥‥」

 「「急げ急げ!回復士!」」 

 「「「‥‥」」」

 静まり返る円形闘技場。

 「ブツブツブツブツ‥‥」

 何言ってんだこいつ。

 「悪魔よ去れ、悪魔よ去れ、悪魔よ去れ‥‥」

 真っ赤に血走ったメヒコの眼が担架で運ばれていくランディの姿を追っていた……。

 でもさ、こいついきなり魔力が溢れ出したけど。
 その前にカチッって音がしたんだよな。なんだろ?


――――――――――


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