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第2章 幼年編
623 魔法軍本部
しおりを挟む「アリサ、明日は学校の帰りに魔法軍に行くからな」
「わかった、お兄ちゃん。フンだ!」
ダンジョンから帰ってきた夜にアリサに伝えたんだ。
この春からは魔法軍軍団長を師匠に迎えて指導してもらえって。
たださ、ダンジョンから帰ってきた日、なぜかアリサがめちゃくちゃ怒ってたんだけど?
土産がなかったからかな。なぜかな?
「(なぁオヤジ、アリサはなんで怒ってんだよ?)」
「(知らん。お前なんかやったんだろう?)」
「(やるわけないじゃん。だってまじめにダンジョンに行ってたんだぜ?)」
「父様もお兄ちゃんもうるさい!」
「「はい‥‥」」
「(ほらみろアレク。お前ぜったい‥)」
「(えー?俺なんも‥)」
「2人ともうるさい!」
「「はい。ごめんなさい‥‥」」
午後からアリサを連れて魔法軍軍団本部に行ったんだ。
そういや学校ではおギンもなぜかプリプリ怒ってたんだけど?
宮殿に近い魔法軍本部は、いかにもって感じでカチッとした官公庁みたいな雰囲気があった。
出入りしてる人には例のとんがり帽子にローブの魔法士さんが多かったよ。
1歩後から俺の腰紐をぎゅっと掴んだアリサがついてくる。緊張してるんだろうな。
「アリサ、兄ちゃんにまかしとけば大丈夫だ。心配しなくていいからな」
「う、うん」
「すいません。ルシウスさんに呼ばれてきた帝都学園のアレクですけど」
1階の事務室っぽいところ。窓口に座ってる若い男性に声をかけたんだ。やっぱり黒いロープ姿だな。
「‥‥」
「すいません。ルシウスさんに呼ばれてきた帝都学園のアレクですけど?」
「‥‥」
軽く、それでも確信犯的にシカトされたんだ。
「すいません!」
周りの人が注目するくらい、けっこう大きな声でもう1度声にしたんだ。
「なんだよガキ。うるせえな。なんか用か?」
「はい。軍団長のルシウスさんに」
「はぁぁぁ?ルシウス軍団長にぃぃぃ?」
「はい」
「お前夢見てんのかよ!なんで軍団長がお前らみたいなガキに用があるんだよ!いくら軍団長が辞めるからって言って孫や親戚のガキ呼ぶかっつーの」
「わかんないわよ。あのおっさんなら。フフフ」
「まぁなんでもいいや。ガキは他所で遊べって!」
けんもほろろにつっかえされたんだ。
「だってお兄ちゃんは私のために‥」
「おっ!野郎のガキはどうでもいいが、君はかわいいね。髪もきれいじゃん。こんなガキは放っといて僕と‥」
窓口の男が話しながらアリサの髪に触ろうとしてたんだ。
「てめー誰の妹に触ってんだよ!」
窓口の外からだよ。外からちょっと、伸びてきた手を押しただけなんだよ。
バターーンッッ!
だけど男は椅子に座ったまま、背中から倒れたんだ。
「な、な、なにをするんだ!?お前、僕に暴力をふるったな!」
ざわざわ
ザワザワ
「暴力もなんもねぇだろうが。呼ばれたから来た俺たちをわざとシカトしやがって。
しかも椅子に座ってるお前の手を触れただけでなんで倒れるんだよ?いったいなんのいやがらせだよ!」
「違うわ!この子いきなりマットを押したのよ!私見たんだから!」
「おお、グリサの言うとおりだ。このガキ、俺様を突き飛ばしやがった」
「嘘言わないでください!この人が私の髪を触ろうとしたからお兄ちゃんが怒って‥」
「嘘よ!この2人がいきなりマットを突き飛ばしたのよ!」
わいわいワイワイ
ざわざわザワザワ
部屋にいる1人、ロープ姿の女の子が階上に駆け上がっていった。
たぶんルシウスのおっさんを呼びに行ったな。
あとはみんな薄笑いを浮かべながら俺たちを見つめているよ。
「来たかーアレク。早う上がってこい!」
階上から声がしたんだ。
「こ、こちらです。ご、ご案内します」
消え入りそうな小さな声で。ルシウスのおっさんを呼びに行ってくれた女の子が言ったんだ。
「はい。行くぞアリサ」
「うん」
「おいガキ。あとでな。逃げんなよ」
「誰が逃げるか!ついでにヘタレ仲間も呼んどけ」
「「「このガキ!」」」
部屋にいた10人ほどの男女全員から敵意のある眼差しを向けられたよ。みんなロープ姿だから魔法士なんだな。
「あ、あの‥‥狂犬団のアレク団長ですか?」
「はい、そうですけど?」
「私、5年のミチーコの姉のイズミなんです」
「えっ!?ミチーコ先輩の!?ミチーコ先輩にはいつもお世話になってます」
「お世話になってます」と俺たちは頭をぺこぺこしだしたんだ。
「ぷっ。さっきまでの怖い雰囲気が嘘みたいですね団長さん」
「だってあの人たちは失礼ですよ」
「ええ。不快な思いをさせてすいません」
「いえ。イズミさんが謝ることはありません。あいつらが悪いだけですから。
ああ、あとこの制服もミチーコ先輩のデザインなんですよ」
「はい、知ってます。ミチーコが毎晩一生懸命にデザイン画を描いてましたから」
「ミチーコ先輩にはまだまだいろいろ活躍してもらいたいんですよ。狂犬団の服飾部には欠かせない人財てんすから」
「ミチーコも毎日楽しそうに学園から帰ってきます。団長さんのおかげだって」
「いえ、俺はなんも」
「フフフ。こちらです」
コンコン
「ルシウス軍団長、狂犬団のアレク団長とアリサさんをお連れしました」
「入ってくれ」
「「「失礼します」」」
その部屋は片付けの最中なのか、ほとんどの本、資料、調度品他は箱にしまわれていた。
「すまんのアレクよ。引越しの最中で満足に茶も出せぬわ」
「そんなもんいいよ。てかおっさん‥‥本当に魔法軍辞めるんだ」
「わははは。来週からはわしも賢人会じゃ」
「ほう。なるほどの」
「だろ」
アリサと握手したんだ。
「けっこうやるだろおっさん」
「たしかにの」
「よかったなアリサ。これからはルシウスのおっさんがお前の師匠だ。もうおっさんって呼ぶなよ。お前にとっては一生師匠なんだからな」
「(お兄ちゃんしーっ!おっさ‥なんて言ってるのお兄ちゃんだけだよ!ルシウス様は学園の魔法学の先生たちですら頭が上がらないんだから)」
「へぇーさすがおっさんだな」
「アホウ!」
パカーンっと俺の頭を叩くルシウスのおっさん。
「お前だけだわい。わしにそんな態度をとるのは!オラオラオラ!」
「痛い痛い痛い!頭ぐりぐりしないで!」
「さてアリサちゃんや。4の月、1日になればわしが毎夜お主の家に行くからの」
「はい。お願いします」
「その日よりは師と弟子じゃ。もうアリサちゃんなどとは呼ばんからな」
「はい師匠」
「よかったなぁアリサ。ルシウスのおっさんの火魔法は間違いなく帝国1番だからな。おっさんからたくさん学んで早く強くなれよ」
「うん」
「ただなアリサ、師匠は一生師匠なんだからな。おっさんの言うことをよく聞くんだぞ」
「(お兄ちゃん失礼すぎだよ!)」
「いいんだよ。人は年じゃねぇんだよ。ルシウスのおっさんは俺にとってダチなんだよ」
「?」
「ダチには遠慮しないだろ。だってダチなんだから」
「師匠すいません!お兄ちゃんときどき訳の分からないことを言うから」
「わはははは。よいよいアリサちゃん。このアホウは確かにわしのダチだからな」
「だろアリサ。あっ、おっさんに謝らなきゃいけないことができたんだよ」
「ん?」
「おっさん悪いな。俺たちさっき下の奴らに絡まれたからさ。ちょっとばかし指導っていうの?あとで教えとくからさ」
「クックック。アホウ!どこの世界に魔法軍の本部にカチコミかける未成年がおるか!
まぁよい、あやつらにもいい勉強になるであろう。
ただのアレクよ」
「わかってるよ。やりすぎないからさ」
「ならばよい。修練場を使って好きにやれ」
「おっさん、ありがと。んじゃね」
「師匠失礼します」
アレクとアリサが部屋を出たあと。
「イズミちゃん、帝都学園から騎士団ほかに片っ端から電話せい。魔法軍本部に狂犬団の団長がカチコミをかけてきたとわしが言っておったとな」
「軍団長‥‥わかりました」
「おもしろいことが始まるぞ、イズミちゃん」
ワハハハハハ
フフフフフフ
チリンチリーンッ♪
「しもしもー。海軍さんですかー。魔法軍本部です。ルシウス軍団長からの伝言をお伝えします。『おもしろいことが‥‥』」
「しもしもー。陸軍さんですか?」
「しもしもー。騎士団さん‥‥」
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