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第2章 幼年編
674 4年10組 ハイル(後)
しおりを挟む「やあハイル君。来てくれたんだね」
「ま、まあな、おっさん。話くらいは聞かへんとな」
領都の南外れ。
貧民街の食堂で。
4年10組のハイルを待っていたのは人族初老の紳士だった。
特徴のないところが逆に特徴的……。
事実、ハイルはこの男の名前も覚えてはいなかった。
「いやいや、それだけでもうれしいよ。こないだも話したように僕は南部の出でね。
たまたま君の南部訛りの言葉に、たまらなく懐かしさを覚えて声をかけさせてもらったんだよ。
まあ食事でもしながら話そう。ハイル君、好きなものを注文しなさい」
「い、いいのかおっさん?」
「当たり前じゃないか。郷里の有望な若い衆と食事をできるだけで、僕は誇らしく思うんだよ。光栄だなぁと」
「へへへ。ほな遠慮なく」
▼
「はあ、食った食った。うまかったー。俺こんなにいっぱい美味いもん食ったの初めてやわ。
寮のメシもうまかったけど、味が薄いんやわ。住ましてもろてる今の家はめっちゃマズいし‥‥」
「そりゃよかった。これからはいつでも声をかけてくれよハイル君。
君には好きなだけご馳走させてもらうよ」
「いつでも言うたって、俺おっさんの連絡先知らへんし」
「ああそうだったね。それじゃ本題に移ろうか。
ハイル君、君にこの魔石を預けよう」
初老の紳士がビー玉サイズの魔石をハイルに手渡した。
「なんやこの魔石‥‥あっ!」
ドクンッ ドクンッ ドクンッ‥‥
手にした瞬間、不思議とハイルの心音が跳ね上がった……。
「ハァハァハァ‥‥」
「なんやこれ!?なんかヤバいやつと違うんか!?」
「そりゃヤバいさ。普通じゃとても手に入らない魔石だからね。
ハイル君、この魔石に力をこめてごらん。強くなりたい。俺は強いんだって」
「こ、こうか、おっさん?」
ハイルの手のひらの中で、鈍く煤けた色が徐々に鮮やかな紫色となっていった魔石。
「おぉ!?なんやこれ?色が出るんやな」
「うん、君はやはり特性があるよ」
「特性?」
「そう、これはね、強者たる証し、特性なんだよ。この魔石を手に色が変わるのは強者だけなんだよ」
「そうなんや。やっぱ俺は強者なんや」
「フッ。当たり前じゃないか。
ハイル君、今日はこの魔石を握っていなさい。君は今日1日だけでも見違えるほど強くなってるよ」
「えーホンマかいな?」
「本当さ。強くなりたいと握るだけでいい。
ただね、君に渡したこの秘密の魔石は、おそらく明日には砕けてなくなるよ」
「なんでなん?」
「それはねハイル君、君の身体の中の魔力がとんでもなく強いからなんだよ」
「俺の魔力は強いんか?そんなん初めて言われたわ」
「みんな気がつかないだけなのさ。君の本当の実力を」
「‥‥」
「明日またこの店においで。効果がないと思ったら来なくてもいいよ」
「‥‥」
「効果があると思ったのなら、次の魔石をあげるよ。
やがて夏が終わり、秋になるころ、今の紫色が真っ黒になったら‥‥ハイル君、君は学園最強になってるよ」
「ほんまかいな?」
「まあ騙されたと思って今日はこの魔石を君に預けよう。
走って帰ってごらん。すでに君は速く走れてるよ」
「なんやパチモンくさいなぁ」
「ハッハッハッハ。ものは試しと言うじゃないか。
なにより君は郷里が生んだ伝説の男になると僕は思ってるんだよ」
「なあ、なんでおっさんは俺なんかに良くしてくれるんや?」
「言っただろ。同郷のハイル君を見てたらなんとか手助けをできないかなって思ったのさ。
やがてこの国で英雄になるであろうハイル君は僕の同郷だって自慢できるからね」
「へへへ。おっさん、わかってるやん!俺は未来の英雄だからな。
なんやわからへんけど、今日はごっそーさん。効果あったらまた来るわ」
「ハイル君、人に見せちゃダメだよ。誰もが羨むこの魔石は数がないんだからね」
「わかったわ」
▼
ググググググウウウゥゥゥッッッ!
「うわっっ!なんやこれ!いつもの突貫よりもめっちゃ速いわ!魔力も減らへんやん!どうなってんのや!ワハハハハハ」
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