アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

693 人族たらしめるもの

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 「アレク君あの2人はすごくいいね。数字に強くて発想も柔軟。実にいいよ。できればすぐにでも商業ギルドで働いてほしいくらいだよ」

 「でしょミョクマルさん。2人は今のヴィヨルド学園の頭脳だからね」

 「うんうん、領の宝だよ」

 「うん!」



 頭脳のみで1組入りしている4年1組のステラと2年1組のヨーク。

 屋台ギルドの設立に向けて必要なさまざまな原案を、ミョクマルさんと俺の会話の中から具体性のあるものとして2人には構築していってもらったんだ。

 「屋台ギルドの叩き台とスケジュールはできたステラ?」

 「ええ」

 「マニュアル化はどうだヨーク?」

 「マニュアル化もできましたよ団長」

 「マジか!さすがだな2人は!」

 フフフ
 えへへ



―――――――――――



 「ハイル、カーマンさんが呼んでるぞ」

 「ん?わかったわ」

 (なんやこないだからますますよう話してくる、うぜぇ先輩やな。
 まぁ住ましてもろとるからしゃあないか。機嫌だけはとらへんとな。

 ハイルはカーマンの誘いもあり、カーマンが住む屋敷に用意した部屋に同じような誘いに乗った幾人かと暮らしていた。

 宿泊費タダ、食費もタダ。行動も自由。月に幾許かのお小遣いももらえる。その代わり、秋の武闘祭とその準備に纏わることは主人のカーマンの言いつけを聞くこと。

 それが契約魔法を結んだ所以である。

 「ハイル、お前最近出歩いてるってな」

 「へへへっ。なんやカーマン先輩はお見通しなんや」

 「フン。まぁ武闘祭で俺の言うとおり動きさえすれば何をしててもいいがな」

 「あざーす」

 (ハイルめ。コイツ‥‥雰囲気が明らかに変わったよな。肝が据わったっていうかヤバい雰囲気になったな)

 「今度の休養日は空けとけよ。ダンジョンに練習に行くからな。あと奴隷を用意するから人を斬るのにも慣れてもらうからな」

 「はいよー」
 
 (めんどくせぇけどしゃあないな。ほんでも人を斬れるんか。
 たぶんあのおっさんやったら、頼んだら用意してくれはると思うねんけどな。クックック。楽しみや)


―――――――――――


 「よいかなリリス。人族という種族は飽くなき欲望が人族を人族たらしめているんだよ。それを忘れてはならぬぞ」

 「欲望ですかバルバス様?」

 「そうだよ。睡眠欲、食欲、性欲、生存欲、名誉欲、支配欲、快楽欲、我欲、怠惰もまた欲望だ……。
 特にあ奴らの我欲は我ら悪魔のそれよりタチが悪い。

 我らはサタン様の復活と我ら悪魔による世界の復権しか考えておらぬだろ?」

 「仰るとおりですバルバス様」

 「が、あ奴らの欲望は尽きることを知らぬ」

 「どうすれば良いのでしょう?その、バルバス様の仰る教育では?」

 「なに簡単なことだよ。あ奴ら人族の欲望を高めてやればいい。我欲に性欲、我欲に名誉欲、我欲に支配欲とな。自分が1番と思いさせさえすればいいんだよ」

 「なるほど!」

 「クックック。ゆっくりゆっくり教育していくんだよ」



―――――――――――



 「アレク君、出資が多くて当初のサンアレ商会は儲からないわね」

 「そうだねサンデーさん。でも長い目でみたら‥‥‥‥すごいことになるよ」

 「ヴィヨルド領も帝国も庇護してくれてるしね。‥‥すごいことになるのは私でもわかるわ」

 「俺のほうがわからないよ!とにかくサンデーさんだけが頼りなんだから!」

 「まあ!煽てるのも上手くなって!アレク君ったら!」

 はぁ。プンプンしてる顔もかわいいよなサンデーさんは。あざといの万々歳だよ!


 (帝国の1年間で。アレク君の才能は飛躍的に伸びたわ。言葉にも行動にも自信が溢れているし。
 もう私が教えられることのほうが多いくらいなんだよ!)

 
 アレクとサンデー、ミョクマルに因る屋台ギルドの設立から人材募集までの立案。

 これが、ステラとヨークの未成年の抜群の頭脳を経て完成した。領主側の承諾も得た。
 あとは実行のみである。

 「当初はうちとアザリアかな。あとヴィンサンダーは参加するかなぁ?たぶんしないと思うんだよね」

 「どうでしょうね」

 「なんだかんだとテンプル先生は優しいんだよな」

 「いい先生よね」

 「だよねサンデーさん」

 (フフフ。アレク君‥‥「うち」がヴィヨルドになってるわよ)






 【  アザリアside  】

 「アネキア様、ヴィヨルド領顧問のテンプル老師より、我が領都ネッポに屋台ギルドを作らんかとの誘いがきておりますがいかが致しましょう?」

 「仔細は老師からの先の手紙じゃな?」

 「はは」

 「ならば悩むまでもない。ヴィヨルドと我らアザリア、ヴィンサンダーは3兄弟。長兄の勧めに逆らうなどあり得んだろう。これも含めて我らの共存共栄に役立つのならばな」

 「かしこまりました。それではさっそく老師とヴィンランドギルドのミョクマル様に承諾の旨をお伝え致します」

 「善きに計らえ」







 【  ヴィンサンダー領主シリウスside  】

 「シリウス様、先の手紙にあったように屋台ギルドについてヴィヨルド領商業ギルドより誘いが来ております。いかが返答致しましょうか?」

 「はあぁぁーヴィヨルド?そんなもん無視だ無視。シカトシカト。
 なんであんな奴らと組まなきゃならないんだよ!
 低所得者層からの下支えと治安維持だと。そんなもん搾れるだけ搾り取ればいいだけだろうが!治安維持より適当に荒れてたほうが都合いいんだよ!
 そんで弱い奴らが搾れなくなったら奴隷にして売っちまえばいいんだよ!」








 『あなたも屋台の主人になれる!
 詳細は商業ギルドまで』


 「いいじゃんこのビラ!さっそくギルドや教会、いろんなとこに貼ってよ」

 うわあぁぁぁ!
 すごいわあぁ!

 屋台店主募集のビラを作ったんだ。活版印刷で多色刷りの本格的なやつを。

 狂犬団美術部と広告部の合作。

 ヴィヨルドのご領主様からは領内のどこに貼ってもいいって許可までもらったよ。さらにね‥‥

 「アレク君あのビラを1,000枚ほどくれないか?」

 「いいですけど‥‥ご領主様?」

 「あとな文言を追加してほしい。
 ヴィヨルド領領都ヴィンランドは地方からの移住も歓迎すると文言を入れといてくれんか?」

 「?」

 「わしから説明しようアレクよ」

 先代様(前領主ヘンドリック・フォン・ヴィヨルド様)がこう言われたんだ。

 「ここからはわしらの独り言じゃぞ。ビラをサウザニアの各地にばら撒いてやるのさ」

 「えっ!?」

 「先の件ではよくぞヴィヨルドを馬鹿にしてくれたからな。ガハハハハハ‥‥」

 「せ、先代様。だ、大丈夫ですか?」 

 「大丈夫じゃよ。逆に文句を言ってくるほうが見どころがあるわい」

 「「「クックック」」」

 先代様に加えて、テンプル先生と現ご領主のジェイル・フォン・ヴィヨルドさんとモーリスの兄さんの長男ヘンリー・ヴィヨルド様も腹を抱えて笑っていたよ。

 帝国留学後、俺は急速にヴィヨルドのご領主様たちと親しくなっていったんだ。





 先代様の仕返しっていうか悪だくみっていうか。ヴィヨルド領主様たちのそんな考え方はものの見事に的中したんだ。

 屋台ギルド設立構想。

 即座に参加を表明したアザリア領と完全シカトのヴィンサンダー領。

 結果的には。
 ヴィンサンダー領を出てヴィヨルド領に向かう人、移民って言うのかな。そんな人がこの夏以降増えたんだ。

 順風満帆の長男。挫折から急速に回復中の次男。どんどん衰退していく3男。

 辺境の3領もますます変わり始めていったんだ。



―――――――――――


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