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第2章 幼年編
717 グラシア動乱④
しおりを挟む【 ここまでのあらすじ 】
ブッシュウルフの大群を迎え撃つアレクの奇想天外の作戦。
そこには適材適所、誰にも忖度しない、徹底して合理的な考えから構築された作戦だった。
そのアレクの考える作戦に一切の疑問を抱かず付き従おうとするヴィヨルド領主の次男モーリス。
対して権威至上主義の文官、武官からはアレクの考えは受け入れ難く、大きく乖離がみられるのだった。それでもアレクに賛同する小さなうねりは次第に大きくなっていく。
―――――――――――――――
【 サカス市文官side 】
「「(どうする?)」」
「(ふんっ。どうもこうもあるか。こんな夢みたいな作戦が成功するわけないだろ。力押しだけでなんとかあると思ってる。だからヴィヨルドのバカは嫌いなんだよ!)」
「「(違いない)」」
「(でもさ、万に1つ成功してみろよ。グラシアもサカスもますます体力バカどもの天下になるぞ)」
「(そりゃマズいだろ。だいたい俺らの天下と思ってこんな辺境くんだりまできたのによぉ)」
「(なんとか手はないのか?)」
「(そうだ。なにかいいネタはないのか?)」
「(クックック。あるだろうブッシュウルフの死骸が。あいつらロナウに捨てたら終わりって思ってやがるからな。
そうだ!万が一奴らの作戦が上手くいっても最後の最後に下手うちゃいいんだよ。
なんなら死骸を運んで王都の港でばら撒きゃいい」
「「(なるほど!)」」
「(うん‥‥死骸のばら撒き。それがいいな。王都の仲間に連絡をとれ。船で集めてばら撒きゃいいんだ)」
「(そんだけか?)」
「(まだあるぞ。とっておきのやつがな。グラシアのバカ商会からのネタがな)」
「「「(??)」」」
「(まあ明日のお楽しみだ)」
「(でどうすんだよ?このままじゃ俺らもグラシアに行く羽目になるぞ?)」
「(ぼ、僕は行かないぞ!)」
「(僕もだ!)」
「(い、嫌だ。なんで死にに行かなきゃなんないんだよ!)」
「(そこは大丈夫。安心しろ。あの1号機とかいうバカが参加は有志って言ったからな)」
「「(ホントだな?!)」」
「(有志はな強制じゃないんだよ。だからサカスとグラシアのまともな文官の俺たちはもちろん行かない。救援?ハァ、なんで平民なんか助ける?てか行くわけないだろ)」
「「(おぉ!)」」
「(そんじゃあ体力バカ共が行った後。グラシア復興のスケジュールを俺たちが作るぞ。これでまた俺らの天下に近づく)」
こくこく
コクコク
こくこく
―――――――――――
―――――――――――
「‥‥さて。あとは同じ流れで東門と西門だ。ここは俺たちヴィヨルド学園10傑が騎士団さんに共闘してもらうぞ」
こくこく
コクコク
こくこく
その前に‥‥キャロルに近づいた俺は彼女に小声で尋ねたんだ。
「(キャロルは実家に行ってていいからな)」
「(そう言うと思ったわよ。でも私だけそんなことは絶対しない。
言ったよねアレク。私後悔したくないって。
だから明日の晩、ブッシュウルフを全部倒すわよ!)」
「(‥‥わかったよキャロル)」
「ボイスさん、東門はボイスさんの指揮でサカス騎士団が担当してください。正門でやる同じ方法です。1つの砂時計の出口を3人で担当させてください。西門はグラシアの騎士団さんで。何組で回すのかはブッシュウルフの数に合わせて臨機応変に対応してください」
「わかったよ1号機君」
「それとボイスさんとグラシアの騎士団長さん、ゴスペルさんとグラシアの冒険者ギルド長の4人は本部に詰めててくださいよ」
「「ん??」」
「なにが起こるかわかりませんからね。全体の指揮は本部の4人だけが頼りです」
こくこく
コクコク
「じゃあ学園10傑の配置な」
「まず魔法士の2人。火魔法使いのアリシアは東門、風魔法使いのキャロルは西門に入ってくれ。状況に応じて遠距離魔法でブッシュウルフの間引きを頼む。お前らの攻撃魔法はもう充分大人レベルだからな」
アリシアとキャロルの2人がハモったんだ。
「「あんたには勝てないけどね!」」
「(なあ女学生さん、どう言う意味だよ?)」
「(フフフ。そのまんまの意味ですよ)」
「「(?)」」
ずっと俺を睨んでた若い騎士団員が聞いてきたんだ。
「(なあ1号機、もしかしてお前、火魔法と風魔法も発現できるのか!?)」
「(どうだろうな?できなくもない‥‥かな)」
「チッ!」
「東門はセロとハンス、それとアリシアが入ってくれ。
西門はトールと3号機、それとキャロルだ」
こくこく
コクコク
こくこく
「東西どっちの門に多く押し寄せるか分からない。ブッシュウルフにこっちの都合は通じないからな。増援は本部からの指示でいくからな」
「「「わかった」」」
「正門前は篝火もガンガン焚いてとにかくいっぱい集めるからな。極端10,000ぜんぶ寄ってきたら勘弁してくれ」
「「こっちこそ勘弁してくれよ!」」
「「殺す気か1号機君!」」
「「せめて6,000にしてくれよ!」」
「さーせん!」
わははははは
ワハハハハハ
「最悪俺ら14人で先にエサになりましょうよ。まあ2号機のコイツはマズいだろうけど」
「なんだよ1号機!お前もマズいだろ!」
「違うぞ。1号機君も2号機君も俺らと同じ、筋肉が多すぎるからな。2人とも堅くてマズいだろ」
「「違いない」」
わははははは
ワハハハハハ
わははははは
「1号機!俺はモーリス様と‥」
「だめだ。誰1人欠けてもダメなんだよ。俺は‥‥‥‥お前ら全員を守るほどの力はない。適材適所だ。酷だけど今回は俺の指示に従え」
「わかった‥‥」
「ゴスペルさん、冒険者は弓が使える人を城壁にあげてください。あとは石を投げてでも数を減らしてください。グラシア市内の警備も冒険者に任せます。臨機応変に対応してください」
「了解した1号機君」
いつのまに。サカスの救援隊の誰もがアレク(狐仮面1号機)を中心に動くようになっていた。
「じゃああと少しだけ打合せをしたら出発しようか」
こくこく
コクコク
こくこく
「残ったグラシアの市民で動けない子どもからお年寄りは教会へ行ってもらう。薬師がいてくれたらいいがな。見守りは誰1人割けないぞ」
ひそひそ
ヒソヒソ
ひそひそ
「(教会って、子どもや年寄り集めるだけでどうすんだよ?)」
「(人がいねぇんだろか?)」
「(誰も割けないのか?)」
「猫仮面」
「教会のお年寄りや子どもたちは猫(セーラ)の聖壁で守っててよ」
こくこく
「1号機君‥‥こちらの猫さんは聖壁を発現できるのかい?!」
こくこく
コクコク
「はいボイスさん」
聖壁を扱える。それだけで稀有な人材であることは誰もが理解していた。
「それはたいへん心強いが‥‥聖壁とは言っても教会には数多くの避難民が来るよ。1,000人以上を守る聖壁はいくらなんでもそちらの猫のお嬢さんには‥‥」
「大丈夫です。俺が保証します。猫仮面ならやってくれます」
「そんな!?1,000人からの聖壁‥それって聖女‥‥」
「いいえ!猫仮面です。仮面をしてグラシアのために闘ってくれる猫仮面です」
ざわざわ
ザワザワ
ざわざわ
「おい!」
シューーーッッ‥‥
シューーーッッ‥‥
シューーーッッ‥‥
見えるように、周囲を威嚇するように体内魔力を放出したんだ。
もちろん今度は背の刀に手は回した。
「無償の愛で猫仮面は困った人を救う。
まさか、その思いを反故にして人に吹聴する。そんな輩はヴィヨルドにはいないよな?もしあとからわかったら‥‥‥‥」 」
「「いるわけない!」」
「「1号機君!」」
「「あなたも仲間だ猫仮面さん!」」
「「ありがとう!」」
「だそうだぞ猫」
「はい‥‥」
「朝までだ。いけるだろ?」
「仕方ありませんね。1号機のお願いだから応えましょう」
「打ち合わせはこんなもんだ。じゃあ最終確認後、1点鍾したら出発するぞ。いいな?」
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっっ!
耳を塞がたくなるくらいの雄叫びが上がったんだ。
でも。
やっぱり会場室からこそこそと退散していくのは文官たちだったよ。
「騎士団員さんと冒険者さんはちょっとだけ残っててください」
あっ!植木鉢には悪いことしたよ。
「元どおりにするな。ありがとう」
砂と土を集めて、鉢入れの植木に戻したんだ。俺特性のヒール水も土に浸透させて。
スーーーーーッ
クッ
クッッ
クッッッッッッ‥‥
パカーーーンッッッ!
蕾だった植木から淡いピンク色の花が見事に咲いたんだ。
「「「す、すげぇ‥‥」」」
「「「1号機‥‥」」」
それを眺めていたセーラが独り言た。
(聖魔法も着々と覚えてますねアレクは)
会議室からはいつの間にか文官たちは1人もいなくなっていた。
いるのは70人足らずの国士のみ。
「邪魔もんは行ったな」
わははははは
ワハハハハハ
フフフフフフ
もうここにいるのは味方だけだ。
「最後に。もう1つ大事な助っ人がいるんだ。グラシアで助っ人を見ても驚かないでほしい。助っ人は俺たちの味方だから」
「「「助っ人?」」」
「「「味方?」」」
「「「驚くな?」」」
「「「???」」」
「お前この1、2年でめちゃくちゃ顔も広くなったみたいだな」
「まあな」
「で、助っ人さんで驚くってなんだよ?」
「人間じゃないんだけどな」
「「「???」」」
「北の港で。リアカーで捨てたブッシュウルフを全部始末してくれる助っ人、仲間がいる」
「「「???」」」
さっき作った俺のキン消しを地図上の港に置いて。
石を発現して地図の上部全部に這わせる、長ーーーーーい筒状の大蛇を置いたんだ。
「「なんだこれ?」」
「「蛇?」」
「「「???」」」
「ピーちゃんだ」
―――――――――――
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