イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛

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イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が、俺

83 今までの俺、これからの君と side 北門

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 普段なら争いごとに首を突っ込むなんてそんな愚かな真似はしない。面倒だし、やりたくはない。
 だけど先輩を侮るような態度を見せられたら、俺は黙ってはいられない。先輩は驚いて、ちょっとあっけにとられたような顔をして、でも少し嬉しそうだった。
 
 その顔を見られただけでも、声を上げた意味があった。
 先輩の声はあの頃より低くなって、でも低すぎずによく通る。いつの間にか皆先輩の話に耳を傾けていた。
 
(ああ、きっとまた。先輩を好きになった人が増えただろうな) 
 
 この人は、本当に素敵な人で、俺のロールモデルで、でも俺は、先輩とまるっきり同じになりたいわけじゃない。
 先輩の顔を久しぶりに近くで見て確信した。
 やっぱり俺はあの時、先輩に恋をしたんだって。憧れだけでは片付けられないほど、強い渇望を持って、この人の傍にいたいって望んだから、今ここに俺はいるんだ。

 友達じゃダメだ。ただの後輩じゃダメなんだ。
 
 恋人になりたい。この人の唯一になって、この人とずっと一緒にいられる、資格が欲しい。
 
 そしてもう、俺が暗い方へ歩まないように、その光で弱い俺を照らし続けて欲しい。

 俺はスマホを手に取った。唯一持っていた先輩の写真は試合中にボールをキープした後ろ姿だ。本人しか分からない程遠目で、しかも後ろ向き。横顔の先輩はボールキープの姿勢で止まってる。
 ずっとこっちを振り向いて欲しかった。

 俺は手元が狂わないように真剣に、ロック画に写真を据えた。
 
(正気じゃないだろ、こんなことして……)

 でもいい。これは賭けだ。
 スマホを置いて教室を出る。最後に先輩の姿を目に焼き付ける。友達と喋って、明るい笑顔を見せる。
 
 その顔を俺だけに見せて。俺だけに微笑んで。
 
 本音をぐっと胸に押し殺す。この欲を飼いならして大人の男になって、貴方の傍に立てる強い人間になる。
 それが俺の決意。
 
 先輩が俺のスマホを手に取って、俺の元に駆けよってくる。
 その一瞬の絆を、俺は絶対に放しはしない。
 
「俺のロック画見た時、どう思いましたか?」

 先輩が驚きのあまり飛び上がった猫、みたいな表情で固まった。そのあと小さな耳の先がみるみる赤く染まる。

「お前さあ、俺のこと、すっ好きだから、ずっとロック画を俺にしてたの?」
「さあ。どうでしょう?」
「あーもう、それなし! なしだから!」
 
 流石にもうひかないぞ、って頬を真っ赤にして上目遣いに見上げてくる。

(本当に真っすぐで可愛い人なんだよな)

 可愛すぎてキュートアグレッションを起こしたくなるの、俺が悪いのか? 先輩が可愛すぎるから悪いんだろう。

「唯!」
「違います。あのロック画はあの時だけ、ほらね」

 ポケットから取り出して見せた俺のロック画は、あの日先輩と食べたパンの写真だ。



    
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