勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール

文字の大きさ
10 / 14

10話.村びとの決意

しおりを挟む


ソフィの手のひらに強い光の球体が現れる。

きっとそれがメタトロンさまの加護なのだろう。
これがあれば、俺も勇者に。
それは、俺が一番欲しかった才能という力。

加護を譲渡なんて、またよくわからない理屈だけど、そんなことはもう関係ない。

俺もこれを受け取ればそっち側にいける。

ふと、考える。
今までの生活を。

惨めだった。
才能がないと言うだけで、幼馴染と引き離され、夢は潰れて全てを失った。

そして、無気力に生きてきた。

ソフィだって、俺にふさわしいと託してくれてるんだ。
受け取ることは、悪いことではないはず。

俺はゆっくりとソフィの腕に手を伸ばす。
だが、光に触れる寸前。

ふと、ある記憶が蘇った。3年間ずっと追いかけてきた日々の記憶。
俺はぴたりと手を止めた。


「ソフィ。ごめん。俺はそれを受け取ることはできない」
ソフィは驚いて顔を歪める。
「そんな!?どうして!?これがあれば夢が叶うんだよ。世界を救って英雄になれるのに。なんで!?」
俺は首を振る。

「これは、もうお前の物語だからだ。お前の活躍は、ずっと見てきた。覚えてるか?村の中央にある会館の掲示板。あそこにさ、ずっとお前の活躍が張り出されてたんだ」
「え?」
ソフィは、不思議そうにして戸惑っている。
だからなんだと言うのだ、と思っているのだろう。
俺は言葉を続ける。

「毎日、俺はあの掲示板に足を運んでた。だから、お前たち勇者一行の動向は、見聞き程度だけど分かってる」 
「そんな表面だけみて、何だって言うの」
ソフィが眉をひそめた。


「例え表面でも、お前たちがどれだけの偉業を成し遂げてきたかは、分かってるってことだ。ソフィ、お前は、ずっと頑張ってきたじゃないか。世界を救うために、一歩一歩強くなって、仲間との絆を深めて、それで、魔王にもうちょっとまで迫った。もうお前は、俺にとって単なる幼馴染じゃない。俺が知ってる中で1番かっこいい英雄なんだよ」
「・・・っ」
「そうやって地道にやってきた強さを、俺が貰ったから何ができるって言うんだ。仲間の思いも、メタトロンさまの加護も、全部お前が向き合ってきたものだろ。だから、それはお前の力だ。最後までお前が使うべきだ」

ソフィは小さく悲しそうに笑って手のひらの光を消した。

うん、と頷き、俺も小さく笑う。

心が晴れたような気分だ。
ソフィの気持ちが分かって。
ずっと迷子だった俺が、どう歩くべきなのか、やっと道が見えたような気がした。

確かに俺にはメタトロン様の加護のような特別な力も才能もない。

それでもソフィが憧れてくれた昔の俺を貫きたい。

それが俺の答えだ。

そして、昔の俺ならきっと、ソフィの加護を受け取ったりしない。

それがソフィの提案を断った理由だ。

「お前が俺のことをよく知ってるように、俺もお前のことは1番よくわかってる。お前ならきっと魔王にも打ち勝てる」

そうして、ソフィの肩に手を置く。
それは、ずっと隣でソフィを見てた本心の言葉だった。

ソフィも納得してくれるんじゃないかと思った。

だが、それを聞いたソフィの返答は俺の予想しないものだった。


「そうやって、また逃げるの?あのときみたいに私に押し付けて。レオはずるい。ひどいよ。また、私を1人にするの?」
ソフィは泣き崩れた。
また、とソフィは言った。
それが何を意味するのか、俺にはよくわかっている。

「あの日は、悪かったと思ってる。本当にすまなかった」
俺は、頭を下げた。
ほんとうは、あの日しないといけないことだったんだ。

「やっぱり、レオはずるいよ」
ソフィは俺の謝罪を受けても泣き止むことはなかった。

当然だ。そんな一言で許せるわけがない。
だから、証明しなければならない。

「勘違いしないでくれ。俺はもうお前を1人で戦わせるつもりはない」
「え」

「例え力がなくても一緒に戦う。いや、戦わせて欲しいんだ。俺はもう逃げない」

それが、俺の覚悟の証明だ。

「それってどうするの?」
「ソフィこの呪いに打ち勝つための時間を1秒でも長く稼ぐ」

慌ててソフィが叫ぶ。

「そんなの無理だよ!大体わたしにこの呪いは」
「ソフィならとけるはずだ」
結局頼ったのは、俺の気持ちのゴリ押し。
単なる村人である俺には、それくらいしかできない、

ただ、やるべきことをやると言う信念。
かつてソフィを感動させた信念。
それに賭けたのだ。

「分かってるだろ。無理かどうかは関係ないんだ。お前を守れるなら、俺は死んだって構わない」
それは、俺の原点だった。
誰かのために。

ましでソフィのためならば、何だってできる。


「そんなの本当に死んじゃうよ!!」

「大丈夫。俺は死なない」
「何でそんなことが言えるの!?私は」
「言ったろ。お前のことは、俺が1番よく分かってるって。ソフィは、俺が好きになった人は、こんな呪いなんかに負けるようなやつじゃないってな」

どさくさに紛れた告白。
それは、この3年で俺が気づいた俺の本心だった。

受け流してくれていい。
ただ覚悟を決めるために伝えたかっただけだから。

俺がソフィと釣り合わないことなんて、俺が1番知ってるから。

こんな周りくどくしか言えないなんてとてもカッコ悪い。

だけど、これで思い残すことはもうない。

「え」
ソフィは目を見開いた。
「俺が伝えるべきことは伝えた。だから、先に行く。待ってる」










_______________


読んでくださりありがとうございます。

よければ感想、お気に入り登録お願いします。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが

空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。 「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!  人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。  魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」 どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。 人生は楽しまないと勿体ない!! ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...