9 / 23
~9~
しおりを挟むその後、無事に茶会は終わった。
問題はなかったと思う。始終アルバートとアリーシャが楽しそうに会話を続けていた。
時折アルバートが俺に会話を振ってくるので、返事を返すが正直何を話したかはよく覚えていない。
アリーシャを馬車まで送り届ける際、二人は次の約束を交わしていたようだ。
来週、王妃の茶会に呼ばれているからその後で会うらしい。
また庭園でも散策するのだろうか?それとも今日のように温室で会うのだろうか?
次回はそこに俺は含まれてはいないだろう。
一体、俺はどうしたいんだろう?
茶会の後、アルバートとルドルフと三人で執務室へと向かう。
アルはソファーに一人で座り、その向かいに俺とルドルフが並んで座る。
アルバートは上機嫌だった。よほど楽しかったらしい。
「今日は楽しかった。二人ともありがとう。感謝するよ。
アリーシャ嬢も楽しんでくれたと思うんだがどう思う?マルクス?」
「ん?ああ、彼女も楽しそうだったと思う。良かったんじゃないか?」
「やっぱり?お前がそういうなら本当だな?よかったよ。」
アルバートは顔をほころばせながら俺に目を向ける。
今はこいつの顔を見たくない。ひどく疲れた気がする。
「アル、今日来てもらったお礼状を書いたらどうだ?たまにはお前からってのもいいだろう?」
ルドルフがアルバートに言えば
「そうだな。そうするよ。また返事ももらえるだろうし、さっそく書くよ。」
そう言ってアルバートは机に向かい、引き出しから便箋セットを取り出し書き始める。
「アル、今日はそろそろ俺たち帰るわ。もう大丈夫だろう?そろそろ代わりの護衛も来るし。」
少し早い気もするが、退勤の時間近くではあるがルドルフにしては珍しいなと思ったが、
「ああ、今日はありがとう。ゆっくり休んでくれ。」
アルバートも退勤の許可をくれた。「じゃあ、」と席を立ちドアの前まで来たところで
「マルクス」と声がかかる
振り向くと、執務机に頬杖をつきながら俺を直視する瞳と目が合った。
射貫くような瞳に、逸らせない、動けない、逃げられない、ドクンと鼓動が鳴る。
「聞こえていたと思うが、来週の王妃の茶会にアリーシャ嬢が呼ばれているらしい。
その後で会う約束をした。その時、お前は来なくても良い。
二人きりで会いたいと俺が願い、彼女はそれを受けいれてくれた。
・・・・・・・・
俺が動いても良いんだろう?お前が最初に願ったことだ。」
アルバートの言葉に俺は動けないまま、声を出すことも忘れていた。
「何か問題あるか?」
「いや、、、問題はない。殿下の思うままに。」
そう言うと重い足をなんとか動かし、ドアを開け執務室を出る。
後からルドルフも部屋を出て、ガチャリとドアが閉まった。
何も考えられない。あれは誰だ?アルバート?俺は何をしたんだ?
二人でしばらく歩き、廊下の窓から外を眺める。
もうすでに辺りは暗くなり、星が煌めいていた。
「マルクス、一杯付き合わないか?たまにはいいだろう?」
0
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない
千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。
失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。
ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。
公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。
※毎午前中に数話更新します。
【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜
マロン株式
恋愛
公爵令嬢ユウフェには、ひとつだけ秘密がある。
――この世界が“小説の中”だと知っていること。
ユウフェはただの“サブヒロイン”で、物語の結末では魔王のもとへ嫁ぐ運命にある……はずだった。
けれどーー
勇者の仲間、聖女、そして魔王が現れ、〝物語どおり〟には進まない恋の三角関係(いや、四角関係?)が動き出す。
サブヒロインの恩返しから始まる、ほのぼの甘くて、少し切ない恋愛ファンタジー。
◇◇◇
※注意事項※
・序盤ほのぼのめ
・勇者 ✖ サブヒロイン ✖ 魔王 ✖ 巫女(?)の恋愛模様
・基本はザマァなし
・過去作のため、気になる部分あればすみません
・他サイトと並行改稿中のため、内容に差異が出る可能性があります
・設定ゆるめ
・恋愛 × ファンタジー
『やりたくないからやらないだけ 〜自分のために働かない選択をした元貴族令嬢の静かな失踪〜』
鷹 綾
恋愛
「やりたくないから、やらないだけですわ」
婚約破棄をきっかけに、
貴族としての役割も、評価も、期待も、すべてが“面倒”になった令嬢ファーファ・ノクティス。
彼女が選んだのは、復讐でも、成り上がりでもなく――
働かないという選択。
爵位と領地、屋敷を手放し、
領民の未来だけは守る形で名領主と契約を結んだのち、
彼女はひっそりと姿を消す。
山の奥で始まるのは、
誰にも評価されず、誰にも感謝せず、
それでも不自由のない、静かな日々。
陰謀も、追手も、劇的な再会もない。
あるのは、契約に基づいて淡々と届く物資と、
「何者にもならなくていい」という確かな安心だけ。
働かない。
争わない。
名を残さない。
それでも――
自分の人生を、自分のために選び切る。
これは、
頑張らないことを肯定する物語。
静かに失踪した元貴族令嬢が、
誰にも縛られず生きるまでを描いた、
“何もしない”ことを貫いた、静かな完結譚。
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
待ち伏せされた悪役令嬢、幼馴染み騎士団長と初恋をやり直す。
待鳥園子
恋愛
悪役令嬢クラウディア・エズモンドとして転生し、前世の記憶が婚約破棄の夜会数日前に戻った。
もう婚約破棄されることは避けられない。覚悟を決めて夜会が開催される大広間に向かう途中、騎士団長であるオルランド・フィンリーに呼び止められ……。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる