悪役令嬢の心変わり

剣術トーナメント編

第52話 兄弟対決

ダリアはトーナメントを始める前に余興戦としてファン・モンフォーヌ対ノア・モンフォーヌの対戦を宣言した。
バッカスには「特別枠」と伝えたがダリアは嫌味をたっぷりと乗せて余興試合・・・・と発言した。


沸き立つ会場の中央に進んで前に出るのは11歳と13歳の少年ふたり。

見下すような態度のファン・モンフォーヌ。
そして見上げるようにして兄であるファンを睨みつけるノア・モンフォーヌ。

公に闇の魔法を扱うものが試合に出ることは滅多にないため皆が注目していた。
いくら余興試合とはいえわずかな時間でひとつの領を治めることが出来ている騎士団の手腕がいかなるものなのか、確かめずにはいられないのだ。


｢やぁ、我が弟よ。憐れみでなんちゃって騎士団に入れた気分はどうだ？｣

剣を振り回しながら歩み寄る兄に訝しげな視線を向けながら静かに答える。

｢我らは星、、、全ては我が主の道を照らすための灯りである。｣

｢は？なんだそれ。それもおままごとのひとつなのか？｣

試合開始の合図と共にファンは剣を構え、そしてノアはゆっくりと剣を抜きながら何かを言い始める。

｢ひとつ、気高くあれ。ひとつ、驕ることなかれ。ひとつ、美しくあれ。ひとつ、醜くあれ。｣

ファンは勢いよく斬りかかってくるが剣を向けながらノアは目を見開き目に見えぬ早さでファンの目の前から消える。
気づいた頃にはファンの首元に剣が寸止めされていた。

｢ひとつ、、、敵を許すことなかれ。｣

凄まじい殺気とともにドスの効いた声で最後のひとつをつぶやく。

｢なっ！！おまえっ！｣

｢ご挨拶がまだでしたね。お久しぶりです、兄上。｣

｢誰がお前を弟などと思うかっ！｣

首筋に当てられた剣をなぎ払い、距離をとりながら叫ぶファン。
そんなファンをノアは氷よりも冷たく鋭い視線を向けていた。

｢私も、貴方が兄だなんて微塵も思いたくありませんよ。｣

審判が｢勝負あり｣と声を上げたもののファンは納得していないようだったらしく、構わずにノアに向かって斬り掛かる。
審判の停止も聞かずに向かってくるファンに慌てもせずに静かに剣を振るうノア。

黙って見守っていたダリアは口の端を少しばかり上げて微笑していた。

その場が騒然とした中、ファンの剣はノアの剣によってバラバラに折られていた。
再び審判が｢勝負あり！勝者、ノア・モンフォーヌ！｣



｢この程度、王宮騎士見習いなのであればできておいたほうがよろしいですよ。兄上。｣






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