悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

文字の大きさ
64 / 127
剣術トーナメント編

第54話 悪役令嬢と悪役令嬢

しおりを挟む
トーナメントの結果はキースが優勝となった。
宣言通りに上位10名はダリアの近衛隊に任命されることとなる。

満足気に闘技場を眺めるダリアにロランは咳払いを1つしながらそっとダリアに耳打ちをした。

「お嬢様、主催者として何かお言葉を。」

「わかっている。」

うんざりした顔を見せながら重い腰を持ち上げると前に出てお得意の営業スマイルで注目を浴びる。
ダリアが前に出てきた瞬間黄色い歓声が闘技場に響き渡りその人気を語っていた。

「コホンっ。えぇ、紳士淑女の皆様。私共のような若輩者のお粗末な大会にご出席賜ったことを深く感謝致します。ご覧のように皆様の足元にも及ばぬ剣の腕ではありますがひとつの騎士団としてこれからも精進して参りますのでこれからもご指導ご鞭撻の程お願いいたします。」

清々しいほどのニッコリスマイル、そして一見謙虚な挨拶だがどこの誰かにとってはとても嫌味極まりない言葉に騎士団員含めロランたちはとてもヒヤヒヤしていた。

「さて、」

ダリアがそう言った時騎士団員たちは一斉に彼女にひざまづいた。

「我がアストルム騎士団 団員たちよ。今回の大会で自身の剣術が如何程のものだったか理解したと思う。これはただの結果に過ぎぬ。今回上位10名に入れた者も油断はせぬ事だ。これからも定期的に大会は行うことを決定する。次回の大会で上位10名に入れた者は近衛隊に任ずるが逆に次回入れなかったものは別の隊に降格とする。自分の力を過信するな。常に鍛えよ。以上だ。」

ダリアの言葉に会場は静まり返る。

それを特別観客席で見ていたブランは顔を赤らめながら微笑んでいた。

闘技場内 廊下を歩くダリアとロラン。
いつにも増してニヤニヤするダリアにロランは生唾を飲み込みながら恐る恐る尋ねる。

「お、お嬢様。なにかいい事でもございましたでしょうか?」

尋ねるロランに振り向きながら満足気に語り始める。

「そうだね、私は今回のイベント実に満足だ。」

ダリア専用の部屋に入ると椅子に足を組みながら座り頬杖を着きながらロランに部屋から出るように命じた。

「すまないが大切な人に手紙を書きたくてね。少し1人にしてくれないか?」

「かしこまりました。」

頭を下げながら部屋を後にするロランを確認すると瞼をそっと閉じ眠りに入る。


つい最近 ダリアは夢の中で「本当のダリア」に出会うようになった。


はじめて夢の中で会ったのはダリアが騎士団を創立した日のことである。
大きなダイニングテーブルを挟んで向かい合って座る前世のダリアと現在のダリア。
髪が長いかそうでは無いかだけの違いのはずだがどこか姉妹にも見えるふたり。

「こんばんは。ダリア。」

「、、、、あなたが私の代わりにこの世界でダリア・・・になってしまった者ね。」

「そうなるね、でも今は夕だよ。」

夕の向かい側に座るダリアはどこか申し訳なさそうな、少し苦しそうな表情で俯き夕と目を合わせようとしない。

「ダリア?」

「ダリアは今のあなた、、、、私は。」

「いや、君がダリアだよ。」

「、、、私はしくじった。」

「そうだね。」

「闇の魔法を使って事件を起こして、、、あの人を傷つけて、、、挙句の果てに反逆者の焼印を押されながら処刑された。」

「私は、、、ただ誰かに必要とされたかった。愛されたかった。」

「うん、そうだね。」

「私の力は聖女たるものではなかったけれど。それでもあの人の力になれるのだと証明したかっただけなのに、、、」

徐々に溢れる涙は目に留まることが出来ずにダリアの強く握られた拳にこぼれ落ちていく。

「うん。」

「だれも、、、悪女・・である私の言葉なんて聞いてくれ無かった!」

「だからやり直したかった、、、、時の砂・・・の力を使って過去に戻った。でも私の魂は体に戻らず代わりにあなたが来た。ううん、戻るのが怖くて私は躊躇っていた。過去に戻っても私は変われないんじゃないかって、、、なにも帰ることが出来ないんじゃないかって。」

目を擦ろうとする腕を咄嗟に夕が掴んで止める。

「跡になる、擦るのはお止め。」

そう言うとハンカチを胸ポケットから取り出し優しく涙を拭ってやるとダリアの隣に座った。
その行動に驚いたのか目をまん丸にさせて夕に視線を追っていくダリア。

「何かを変えるってとても大変な事だよ。君自身何も変えなくていいんじゃないかな?」

「で、でも私の性格が悪いから!」

「本当に性格悪いやつは自分のこと良い奴だって誤解してるもんなんだよ。それにあんな母上の元で過ごしていればね、、、価値観がねじ曲がるのも無理はないよ。」

「、、、、私を恨まないの?」

「いや、恨んではないよ。むしろこんなにも早く第2の人生が歩めるとは思ってもいなかった。感謝をするべきなんだよ。」

テーブルの上に置かれた花瓶に活けられた薔薇を取るとダリアに差し出しながら真剣な眼差しで見つめた。

「だから君が第2の人生を歩める方法をこの世界で探し出す。君が言う “時の砂”を探してもう一度君をこの世界に呼ぼう。」

「え?な、、、なんで、、、」

「悔しいからだよ。それに君が出来たんだ、私にだって出来るはずだろう?」

自信ありげな夕の言葉にダリアは少しだけ微笑んだ。

「ま、任せてみるわ。」

「あぁ!この姉に任せたまえ!」

「姉」という言葉にダリアは目を丸くすると涙を薄く浮かばせながら「うん!」と笑いながら頷いて見せた。
そんなダリアに夕も微笑みながらその夢は白い光に包まれながら現実の世界へと戻っていく。






𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌃


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

本の通りに悪役をこなしてみようと思います

Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。 本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって? こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。 悪役上等。 なのに、何だか様子がおかしいような?

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

悪役令嬢は間違えない

スノウ
恋愛
 王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。  その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。  処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。  処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。  しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。  そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。  ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。  ジゼットは決意する。  次は絶対に間違えない。  処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。  そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。   ────────────    毎日20時頃に投稿します。  お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。  

【完結】あなたが私を『番』にでっち上げた理由

冬馬亮
恋愛
ランバルディア王国では、王族から約100年ごとに『裁定者』なる者が誕生する。 国王の補佐を務め、時には王族さえも裁く至高の権威を持ち、裏の最高権力者とも称される裁定者。その今代は、先国王の末弟ユスターシュ。 そんな雲の上の存在であるユスターシュから、何故か彼の番だと名指しされたヘレナだったが。 え? どうして? 獣人でもないのに番とか聞いたことないんですけど。 ヒーローが、想像力豊かなヒロインを自分の番にでっち上げて溺愛するお話です。 ※ 同時に掲載した小説がシリアスだった反動で、こちらは非常にはっちゃけたお話になってます。 時々シリアスが入る予定ですが、基本コメディです。

【完結】あなたの色に染める〜無色の私が聖女になるまで〜

白崎りか
恋愛
色なしのアリアには、従兄のギルベルトが全てだった。 「ギルベルト様は私の婚約者よ! 近づかないで。色なしのくせに!」 (お兄様の婚約者に嫌われてしまった。もう、お兄様には会えないの? 私はかわいそうな「妹」でしかないから) ギルベルトと距離を置こうとすると、彼は「一緒に暮らそう」と言いだした。 「婚約者に愛情などない。大切なのは、アリアだけだ」  色なしは魔力がないはずなのに、アリアは魔法が使えることが分かった。 糸を染める魔法だ。染めた糸で刺繍したハンカチは、不思議な力を持っていた。 「こんな魔法は初めてだ」 薔薇の迷路で出会った王子は、アリアに手を差し伸べる。 「今のままでいいの? これは君にとって良い機会だよ」 アリアは魔法の力で聖女になる。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

処理中です...