160 / 170
新婚旅行
しおりを挟む「よぉ、この前ぶりだな!」
「おう!デニスは嫁さんと仲良くやってるか?」
「あぁ、ようやく会えてホッとしてるぜ」
冒険者のデニスじゃなくて普通の服のデニスは新鮮だな。
「ここに孤児院はあるか?」
「おう、あるぞ?なんだ子供か?」
「あぁ、口減しで奴隷になってた子供がいてな」
「な!そんなことしてる奴がいるのか?」
「あぁ、シャーディカの街の貴族だ」
「可哀想に……ちょっと待ってくれ、嫁に聞いてくる」
「いや、孤児院でも」
「いいから待ってろ!」
と言ってデニスは走って行ってしまった。
30分ほど待つとデニスが女の人を連れてきた。
「子供はどこに?」
「宿にいるが」
「よし!宿に行こう!いで!」
叩かれるデニスは恨めしそうに女を見る。
「私の紹介をしなさい!」
「あ、俺の嫁のカナンだ」
「俺はヤトだ。よろしく」
「話には聞いてたがいい男だね!で?子供達を見に行こうじゃないか」
と言って宿屋に向かう。
宿屋に着くとアーシャを呼んで2人を連れてきてもらう。
「まぁ、可愛い!男の子と女の子ね」
「あはは、奴隷にされてたところを助けてきたんだ。孤児院にでも入れればと思ってな」
「水臭いぞ!俺たちが預かるよ」
「ん?本当にいいのか?」
「あぁ、こんな子供が欲しかったんだ!」
聞けば2人は子供が作れないらしい。
「お名前は?」
「ない」
「あたちもない」
「名前もつけないなんて!この子達の母親に一発ビンタをかましたいね!!」
とカナンは怒っているが子供達を優しく撫でている。
「分かった、デニスにカナン、悪いけど育ててやってくれるか?」
「おう!これから俺たちは家族だ」
「名前もつけないとな!」
と楽しそうに喋っている。
「お、そうだ、じゃあこれを受け取ってくれ」
「あ?金ならいらないぞ?」
「ダメだ!いらないなら孤児院にでも渡すぞ?」
「……分かった。これで腹一杯食べさせてやるさ!」
「ありがとう」
「礼を言いたいのはこっちだ。こんな可愛い子を連れてきてくれたんだからな!」
そう言うデニスはもう父親の顔をしている。
「あはは、お前らはいい親に恵まれたな」
髪をくしゃくしゃと撫でると、
「あい」
「はい」
と女の子の方が少しは喋れるようだな。
その日からデニスの家には子供が2人増えた。
次の日に出立することを告げると、見送りに来てくれた。
「デニス、ありがとうな!」
「こっちこそ、元気に育てるさ!」
と男の子を腕に抱いている。
「じゃあな!」
「おう!達者でやれよ!」
ある程度歩いてから車に乗り込むと、アーシャが少し寂しそうに街を見ている。
「可愛かったな」
「うん」
「また会いにこような」
「うん!」
前を向いて座り、ニコニコしている。
さて、異世界もある程度回ったし、ここからどうするかな?
『任せるにゃ!まだ、行ってないところがあるからにゃ』
「よし、ナビは任せるぞ」
『ニャー、任せるにゃ」
と新婚旅行は続く。
見たことのない景色を見ながら車を走らせる。
砂漠の街や水の街、新しくできたエルフの街など転々として、また王都に戻ってきた。
「なにするの?」
「いや。やっておかないといけないことがあるからな」
1人王城に向かい中に入って行く。
『隠密』のおかげで誰も気づく者がいないのはいいな。
先に進むと王と宰相がいたので奴隷の首輪をつけてやる。
「俺が誰だかわかるよな?」
「え!あ!これは?」
「ひ、く、首輪」
慌てふためく2人に、
「お前らが街に流してる奴属の首輪だ。金輪際奴隷を作るな!命令だ!」
「は、はい」
「わかりました」
悔しい顔をしてこちらを睨むがもう手は出せない。
「よーし、それじゃあ皆んなにちゃんと話すようにな!」
「はい」
「分かりました」
「分かってるよな?奴隷を作った者は?」
「きょ、極刑にします」
悔しそうに言う王様。
「よくできました!それじゃあな」
「ま。待って下さい!私達は」
「守られなかったら自死しろ」
「はい」
これで奴隷がなくなるとは思わないが、少しは良くなるだろう?
王城から出ると伸びをする。
城下町は活気にあふれていて人が多い。
その分悪い事を考えてる奴も多いけど、それが人間だしな。
『あ、ヤトニャー』
「ヤト、どこにも行かないで?」
「悪いな、最後に必要なことをやってきただけだから」
異世界の街を見て周り、もう一カ月は過ぎたか?
そろそろ日本に戻ろうか。
「ふぅ、色々あったね」
「アーシャがお転婆だとは思わなかったよ」
「私はこれが普通」
『ニャーも楽しかったにゃ』
と言ってハクのいる屋敷に帰るとリビングの端にまた金貨の山ができている。
「ここは住みやすいが人間が来るのが多すぎるよ」
「あはは、守ってくれてありがとうな」
「私の住処だからね」
「だな」
とハクやクナイ、シロナも寛いでいる。
クナイとシロナは少し大人びたかな?
「何にせよあっちに戻らないとな」
「そうね、もう1月以上こっちにいるもの」
一カ月もあっという間だったな。
『ニャーはあんこ餅が食べたいにゃ』
まぁ、そろそろ帰るか。
「じゃあハク達も元気でな!」
「もう帰るのか?」
とハクがいうが、
「まぁ、あっちで仕事があるしな」
「分かった、またな!」
「おう!『転移』」
148
あなたにおすすめの小説
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる