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若返り
しおりを挟む「父さん、武器を作ってくれないかな?」
「おう、金は取るぞ?」
「うん、それなりに稼いでるからね」
「よし!どんなのがいい?」
と錬金術ができる俺に頼んでくるようになった夜叉はA級冒険者になっていた。
彼女の蘭真ちゃんとも良好らしい。
最近は『ガチャ』をやっていなかったから忘れていたが、焼肉でもしようかと思い『ガチャ』をやることにする。
『ガチャガチャ』
赤が1、緑が5、青が2、紫が3、
「あはは、流石に11連じゃこんなものか」
まだ魔石はあるが無駄に使う気はない。
肉もまだそれなりに残ってるし新しく入った肉も入れれば皆んな満足するだろ。
スーパーで買った肉も沢山あるしな。
「久しぶりだな。焼肉なんて」
「だろ?久しぶりにしたくなったんだ」
青蘭と話をしていると、
「父さん、焼けてるから早く取って」
「分かったよ」
肉を取り食べる。
「うん。美味いな」
「いや、すごく美味いよ!」
「また竜の肉?」
アーシャが聞いてくる。
「色々だよ、スーパーの肉も入ってる」
「そう、無駄に美味しい肉を食べさせたら後が可哀想だからね」
「そんなことないだろ?美味しいを知っていて損はない」
「そう?」
「あぁ」
歳をとるとあまり食欲が湧かないがこれなら食えるからな。
みんなも楽しそうに飲んで食べている。
「あのさ、話があるんだけど?」
カレンとシオンだ。
「ダメよ?」
「な、なんでよ!私たち仲間でしょ?」
「仲間だからこそよ?言ったわよね?」
「わ、分かったわよ!」
カレンは怒って行ってしまった。
「なんだ?」
「秘密だけど聞かなくていい」
カレンは仲間だが、最近は歳をとったな。
まぁ、みんな歳をとりおじさんおばさんになっている。
「まぁ、いいけどな」
カレンとの仲が悪くなってもそのうちまた仲良くしてるだろうしな。
焼肉も終わり、みんな各々掃除して帰る。
「父さん。ご馳走様」
「夜叉のお父さん、ご馳走様でした」
「あはは、これくらいはいいだろ」
と夜叉達も満足そうだな。
ヤトベースに篭るようになって一週間、俺は夜叉の両手剣を作っていた。
魔法鍛治でベースを作り合成し、魔法を付与して行く。
これが夜叉の命を守ってくれるようにできることはしたい。
「ふぅ」
『ヤトー!』
「おう、テンか、なんだ?」
『集中し過ぎにゃ!アーシャがちょっとでも帰ってこいって言ってるにゃ!』
「ん?まだ時間はかかるぞ?」
『だからにゃ!心配かけるにゃ!』
とダメだしされる。
「分かったよ。んじゃ少し帰ろうかな?」
テンと2人で最上階に戻ると、
「あんたはいいわよね!私は嫌なの!こんな年老いて行くのが!」
「そうよ!ヤトに作らせなさいよ!」
「だから言った。ヤトは好きで不老になったわけじゃない!私達は甘え過ぎ」
「ふざけないで!私は若返るだけでいいのよ!」
「そうよ!あんただってそうでしょ?ヤトがどんだけ繕ってもあんたはおばさんになってる!惨めじゃないの?」
カレンとシオンだな。人は変わるものだな。
「俺は誰にも作らないぞ?もちろんアーシャにも作ってない」
「ヤト……」
「ヤト!作りなさいよ!金なら渡すから」
「嫌だね。お前たち変わったな?アーシャみたいに美しくいれないのか?」
アーシャはピンと背筋を伸ばし髪も整えまだ若い。
「く、う、うるさいわね!若返りの薬くらいいじゃない!」
「ダメだ。俺はアーシャと約束した。これから生きる人間には必要ないからな」
「お、覚えておきなさい!老いは誰にでもくるんだから!仲間でしょ!」
「そうね、私達だけじゃないわよ?」
「お前らが束になっても敵わないことはわかってるだろ?早死にしたいのか?」
短剣を出すと、
「あ、あんた、私を殺すの!?あんなに好きになってやったのに!」
「それはお前の勝手だ。俺が愛するのはアーシャだけだ」
それを聞くとカレンとシオンは走って逃げて行った。
「話し合ったんだけど、その時は良かったのに」
「人は変わるんだな。老いはその一つなんだろうな」
「そうね。それよりも早く帰ってきてね?」
「分かったよ」
部屋に入って風呂に浸かる。
「作ってやるのは簡単だが、それはカレンのためにならないな」
老いない身体になったらやはり普通に老いて行くのが人生だと思う。
人の人生は短いから夢中になったりするんだ。
こんな今でもアーシャに頼って生きるようでは俺もまだまだなんだろうな。
「はぁ。アーシャを選んで良かった」
風呂から上がるとビールを飲みながらソファーに座るとつまみが出てくる。
「ありがとうアーシャ」
「うん、薬は作らないでね?」
「分かってるよ」
「カレンも気の迷いだったらいいのだけどね」
と外を眺めながらテンが、
『人間は弱いにゃ、しょうがにゃいことだけど、目の前に若返る薬があれば飲むにゃ』
そうなんだろうが、アーシャは決して飲むとは言わないんだよな。
一度死に損なったから今度はちゃんと死にたいと言っていた。
俺がどうしてもと迫っても、断って来たからな。
「アーシャは強いな」
「ううん。弱いけどこのままがいいの」
「そうか」
ゆっくりと日が落ちるのを見ていた。
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