合成師

あに

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エクストラポーション

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 話を聞くと5人パーティーで10階層のボスを倒したまでは良かったが、メンバーが下の階を見てから帰ると言い出し、疲れているのに階層を降りて直ぐにグレートブル亜種に出会ったらしい。
 ……運が悪いな。
 強いとは知らずに向かっていくと前衛の2人が飛ばされ、逃げようとしたが回り込まれて階段から遠くに追いやられた。
 ……運が悪いな。
 その間にメンバーの1人に蹴られて倒れた所、メンバーは逃げてしまった。
 ……うん、最悪だ。

「へぇ、じゃあ囮にされたのか、ギルドに報告すれば探索者資格剥奪だな」
「はい!あんなの仲間じゃ無いです!」
「私が残ってもしょうがなかったんですが、誰か連れて来てくれると思ったんですが」
「うーん、それなりに時間はあったが、誰も来てないぞ?」
「……そうですよね」
 悲しそうに下を向く。

 10階層に着くとモノリスで出口付近に出る。
 やはり誰もいないようだな。
 俺を先頭に黙ってギルドに入ると、
「では、2人の死亡を確認しに行きますので案内して下さい」
 おぉ、2人は死んだことになってるみたいだな。
 “シュッ”と俺の横を通る音がして男が殴られる。
「グアッ」
「な!お、お前ら」
「ふざけるな!私達を囮にして逃げやがって!」
「ち、ちがブベッ!」
 おぉ、怒ってらっしゃる。
 男達は情け無く殴られて倒れた。

「え?あ、え?貴女達は?」
「私達は死んで無い!こいつらに囮にされて死ぬとこだったんだ」
「……とりあえず事情を聞きましょう。この人達も連れて」
 なんか長くなりそうなので、
「んじゃ、俺はこれで」
「貴方が助けたんですか?」
「……」
「そこで黙ってちゃわからないでしょ!」
「……まぁ、成り行きで?」
「なら貴方も来てください」
 はぁ、今日はなんか気が乗らなかったんだよなぁ。
 3人の男達は回復魔法で治され連れて行かれる。俺たちも後を追う形で部屋に入って行く。
 部屋は会議室のような場所で、あとからゴツい男が1人入ってくると、
「ここのギルドマスターの堂本だ。あれだけ騒いだんだ。説明してもらおうか」

 説明は主に女の子がして、男達はそれに反発するが、ギルドマスターが続きを促すと黙ってしまう。

「俺たちは別に囮にしていない!こいつらが逃げ遅れただけだ!」
「……黙れ」
 とギルドマスターが言うと迫力があるな。
「クッ」
「で?2人を助けた貴方は?」
 俺に話を振ってくる。
「はぁ、グレートブル亜種に殺されかけていたので倒して怪我を治療した」
「どんな怪我だ?」
「こっちの子は腕が折れてたな。でこの子は足と他にも怪我をしていたようだ」
「どのような治療を?」
 はぁ、言わないとダメか?
「ポーションを飲ませた」
「どんな?」
「……はぁ、エクストラポーションだ」
 みんなが唖然とするが、ハイポーションじゃ全快は無理だったからな。

「わ、わかった。それならこんなに元気なのも頷けるな」
「え、エクストラポーション……」
 と2人は声を失う。

 ギルドマスターは“ゴホンッ”と咳払いをすると、
「蹴ったのはどの男だ?」
「彼です」
「うそだ!俺は蹴ってない!」
 悪あがきをする男。
「殺人未遂だな。他2人も探索者資格剥奪だ」
「いやいや、待ってくれよ!そんな証拠もないだろ?」
 確かにないが、本人達や助けた俺がいるしなぁ。
「じゃあ、なぜ2人がそんな事になっているのにお前たちは死んだと虚偽を報告したんだ?」
「そ、それは、あのモンスターから逃げ遅れたからもう死んでると思って」
「ふぅ、とりあえず警察は呼んであるから、ここからは警察署に行って話すといい」
 扉が開き、警察官が数名入ってきた。
 男達と女の子2人を連れて、って俺もかよ!

 仕方なく着いて行き、パトカーに乗せられる。


「ご協力ありがとうございました」
「はぁ、はい、どうも」
 とギルド派出所に戻って来たのは16時、とりあえずギルドに入り更衣室に入って着替えをして出ると、ギルドマスターが待っていた。
「よ!早かったな!」
「はぁ、俺はもう帰りたいんだが?」
「まぁ、そう言うな!ちょっと話をさせてくれ」
 肩を抱かれて2階に上がりギルドマスターの部屋らしき所に入るとソファーに座らされる。
「コーヒーでいいか?」
「あぁ」
「コーヒーを2つ頼む」
 と内線を使うと対面に座る。

 すぐにコーヒーを持って来た社員に会釈をしてコーヒーに口をつける。
 まぁまぁだな。

「実は話があってな、見たところジョブは分からないがエクストラポーションを持ってると言うことは生産職だろ?」
「……それが?」
「うむ、ポーションを売って欲しいのだが」
「……それは『薬師』か『錬金術師』に頼め」
 普通に出回っているポーションはその辺に頼めばいくらでも手に入るだろ。

「それがレベルを上げている人間は少なくて、ポーション、その上のハイポーションを作れる人間は少ない。エクストラポーションなんて夢のまた夢だ」
 言ってることはわかるが、俺には関係ない。
「そうか、俺には関係ないな」
「そこをなんとか!頼む!」
 “ゴンッ”と頭をテーブルにぶつけながら頼み込んでくる。

「……はぁ、いくらだ?」
「……市場に出回った時は、一本100億だった」
「んじゃ100億だな」
 そんなにするんだな。まぁ、希少だからそのくらいか。
「す、少しまけてくれないか?」
「この話は」
「わ、分かった!100億で!」
 と言うことで1本100億と言う値段でエクストラポーションを売ることになった。
 ギルドカードを渡して明細を確認してからエクストラポーションを渡す。

「よ、よし!ありがとう!また頼んでもいいか?」
「……まぁ、いいけど100億な?」
「あぁ、分かってる」
 コーヒーを飲み干すと立ち上がり、
「んじゃ、コーヒーご馳走さま」

 部屋を出る。
「ふぅ、厄介なことにならなければいいけど」
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