合成師

あに

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『氷剣姫』

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 ツネに連絡して今から行くと伝え、車を走らせる。
 到着するとツネが出て来た。
「今日も暑いな!早く中入ろうぜ」
「だな」
 と喋りながら中に入ると賑わっている。
 お目当ては氷属性の剣が中央のショーケースに飾られている。
「へぇ、他のはどうしたんだ?」
「とりあえず2本はうちが確保して、残りを海外に渡したぞ。もう一本あるが、あれが売れたら取り替えるつもりだ」
 予備を持っているのか、なら安心だな。

 いつもの商談スペースに行くと、
「今日はなんだ?もしかして防具か?」
「当たりだ!」
 と革鎧を出すと、
「おぉ、革鎧か!……ブラックオーガの革で、しかも付与がエゲツないな」
「だろ?まだあるぞ」
 スーツ型防具を出す。
「すげぇ!これは映えるな!」
「これは3つある」
「お!流石だな!」
「最後はブーツだが一足だけだ」
 出してやると、
「ほぉー、これもいいね!」
「だろ?革鎧とセットだな」
「だな、防具の事は社長にも言ってある。あくまでも武器屋だからとりあえずどんなものか見てみたいと言われた」
「そっか、まぁ、大量に作れないからな」
 防具はデカいし数作るにも在庫が無くなるからな。

 とりあえずスーツ型防具は20億、革鎧は10億、ブーツが3億になった。
「多分これの倍はすると思うから社長の値付けが終わってから残りを払うから」
「あぁ、いいぞ」
 と喋っていると急に店内が騒がしくなる。

「店長!『氷剣姫』が来店なさいました」
「なに?悪い、俺が対応しないと」
 そうだな、有名人の対応はツネがやらないとな。
「おう、もう終わったから帰るよ」
「悪いな!気をつけて帰れよ」
 ツネは急ぎながらも優雅に歩いて向かう。
 へぇ、店長になると肝が座るんだな。
「俺も帰るか」
 と立ち上がり店員にお礼を言われるのを会釈で返して店内を回って見ると『氷剣姫』と目があってしまう。
 そそくさと駐車場に出ると車に乗り込み、
「ふぅ、焦ったぁー」
 と言ってエンジンをかけて発進する。
 
 マンションの部屋に戻りビールを飲みながらテレビをつけると、さっき見た場面が映ったのでビールを喉に引っ掛け咽せる。
「ゴホゴホッ!」
 なんてタイミングだ。
 氷属性の剣を買ったらしく、それを嬉しそうにしている姿が映っている。
 俺の事はツネは言わないだろうからいいとして、ギルドが言ってたらダンジョンに行きづらいな。
 まぁ、星5の人間が星3に来る事はないと思うが、ちょっと注意しとこう。

 翌日はダンジョンに行くため、車で派出所に向かう。
 夏本番で暑い中サッサと派出所に入って更衣室で着替えると、受付に行く。
「少々お待ちください」
「は?」
 この展開はまさかまたエクストラポーションか?在庫殆どないぞ?
「やぁ、待ってたよ」
「あ?俺は待ってないし、邪魔されるのが嫌いだ」
 と言うとギルドマスターはでかい身体で慌て出す。
「い、いや、これはだな。『氷剣姫』がお礼を言いたいと来てるのだよ」
「は?お前は俺の名前を出したのか?守秘義務があるんじゃないのか?」
「す、すまない。でも上層部に話さないわけにもいかなくて」
「はぁ、もういい、俺はダンジョンに行く」
「ま、待ってくれ、一度だけでいいから、とにかく会ってくれないか?」
 はぁ、面倒ごとの気配しかしないのだが、
「……別のギルドに移る」
「そ、そんな!勘弁してくれ!」
 泣きつかれてもしるかよ!

「あら、ギルマスを泣かせてはいけないわ」
 と『氷剣姫』が下りて来た。
 白髪の髪が糸のように靡く。
 少し冷たそうな瞳が笑う。
 薄い唇から白い歯が見え、俺は待つしかなかった。
「はぁ、とりあえず上に行こう。ここじゃうるさくて敵わんからな」
「そうね、ギルマスも行きますよ?」
「はい!どうぞ」
 と俺を先に行かせる。
 はぁ、面倒な事にならなければいいが。

 ギルマスの部屋に入ると俺より背は低いのに存在感がすごいな。
 ソファーに対面で座り、ギルマスは『氷剣姫』の横にでかい身体でちょこんと座る。

「貴方がエクストラポーションを作ってくださったのですね?この度はありがとうございました」
「ん?俺は売っただけでその後誰が使おうと知らないからお礼はギルマスにでもしてくれ」
 と言うと笑いながら、
「そうですか、ギルマスもありがとうございます」
「いえ、私は」
「一度お会いしましたね?『tortie』で」
「あれは会ったと言うより見かけたって言うのが正解だろ?」
「あははは、そうですね。久しぶりに対等に喋ってくれる人に会いましたわ」
 と言って笑っている。コーヒーが運ばれてきて口をつける。

「貴方の事を調べさせてもらいました」
「あ?守秘義務があるだろ?」
「ウフフ、私はギルド側の人間ですので」
「はぁ、で?何が言いたい?」
「この『合成師』と言うジョブは生産職ですね?それでもソロでやっているのには訳があるんですか?」
「まぁ、素材が必要だし、面倒だろ?レベル上げなら1人でもできるしな」
「そうですか、私とパーティーを組みませんか?」
 ゲッ!なんで星5のやつとパーティー組まなきゃならんのだ。しかも有名人と。

「お断りだ。星5だろ?」
「えぇ、でもリハビリがてら星3からスタートする事にしましたの」
「なぜ俺なんだ?」
「気に入ったからです。素材はもちろんそちらが取ればいいですし、嫌ならギルドで一度鑑定してもらった額の半分を払ってもらう形なら問題ないのでは?」
 手強いと言うか絶対に逃さない気だな?

 面倒だな。
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