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第6章 大魔導士ウィスターナ
6ー1 段位者の招集
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王子の訪問の二日後。
急に段位者の招集があり、マルクとカーズ先生は王宮に行った。
他の先生たちも呼ばれたみたいで、急きょ臨時休校になった。
学校には自習で登校してもいいらしいけど、私は屋敷で本を読んでいた。
最近よく図書館で声をかけられて読書の邪魔をされたから。
こちらが注意して大人しく引き下がってくれる人はまだいいんだけど、相手をしない私が無愛想で態度が悪いように言い返してくる人もたまにいた。
前に朝食で先生たちに愚痴ったら、カーズ先生は苦笑して、マルクは眉間に皺を寄せていた。
「逆ギレは論外だけどさ、高等部に女子が少ないから、同じ年頃の女の子が気になるんだね」
「マナーについて注意しておきます」
「ありがとう」
「でも、相手から距離を置くためにもミーナはしばらく図書館の利用は避けてください。私の部屋にある蔵書は好きに入って読んで構いませんので」
「分かったわ」
彼は有言実行だった。すぐに朝礼で担任の先生から注意事項として伝えられていた。
マルクが約束を守ってくれたので、今度は私の番だ。
彼の書斎に朝から来ていた。
本棚を見れば、過去に私が持っていた同じ本もあって懐かしかった。
特にカイハーンの本は出版当時は彼の理論が認められていなかったから部数が少なくて貴重なのに全巻並べられていた。
その横にマルクの手記まであった。
きちんと整理整頓されているのに、意外に分類は適当だから、思わずクスリと笑ってしまった。
マルクが弟子に来て間もないころ、カイハーンの話を夜も寝かさない勢いで彼と会話した記憶が懐かしかった。
彼はまだ子どもだったのに本人かと思うほど的を射た答えが返ってきて、あんなに議論が楽しかったのは初めてだった。
カイハーンの本は、理解するために何度も読み、他の資料を漁ったほど、難解なレベルだったから特に。
マルクは本当に不思議ね。
彼の本棚から見慣れない本を探して読んでいたら、昼過ぎにはマルクたちが戻って来たらしく、使用人が知らせてくれた。
彼に呼ばれて応接室に向かうと、マルクとカーズ先生が深刻そうな暗い顔で待っていた。
二人は応接セットの長いソファに向かい合わせに座っていたので、なんとなく近づきやすいマルクの隣に腰を下ろした。
「厄災が出たそうです。段位所持者の魔導士は再び王宮に徴集されて、すぐに討伐に向かいます」
どうやら魔物の討伐に出かけた軍が厄災を見つけたようだ。
厄災——それは自然発生する破壊的存在。
姿形は不定形で、獣のような時もあれば、モヤのように輪郭が朧げなこともある。
移動しながら街や生き物を破壊し尽くし、厄災が過ぎ去ったあとは何も残らないほどだ。
勝手に生まれた厄災は、勝手に消えることもあるし、しつこく粘って複数の国を滅亡させることもある。
過去にこの厄災のせいで、沢山の国が滅んだ。
国を守るために何人もの魔導士たちが投入されて死んでいったと、過去の歴史書に記録が残っていた。
「まさか、こんなに早く厄災が発生するなんて思いもしないわよね。数百年に一度の周期で発生すると言われているけど、前回この地に現れたのは百年くらい前の話だから、まだまだ先だと思っていた」
「私も同感です。だから、聞いたときは耳を疑いました」
「厄災を見つけて軍は無事ではなかったでしょう? 何人亡くなったの?」
マルクが悲愴な顔を浮かべる。
「魔導士部隊の上級者十名のうち三名が死亡です」
「……それはひどいわね」
死者の無念さと残された家族を思うと、心が痛み言葉を失った。
「あなたが以前書いた論文を読んでいた班長がいたおかげで、厄災に対して魔導を使わなかった班は全滅を免れたようです」
厄災はマナに引き寄せられる。
だから、魔導を使えば襲われる。その習性に気づいたおかげで前回の厄災に勝てた。
今回、私の論文を読んで知っていた者は、厄災に遭遇しても助かったみたいね。
「まぁ、それで今度はそれより強い俺たち段位者を向かわせることになったんだ」
「でも、たぶん私以外の魔導士を何人送っても、みんな殺されちゃうわよ」
二人は何も答えなかった。いや、答えられなかったのよね。
私が行けば解決する問題だから。でも、それは私が大魔導士だと公表するのと同意だ。
あえて私に何も言わなかった二人の優しさに気づく。
迷いは一瞬だった。すぐに決意できた。
「私が行くわ。これ以上、誰も死なせたくないもの」
でも、そのあとを想像するだけで、身体が震えそうになる。
やっぱり怖くてたまらない。
「ミーナ」
横にいたマルクが近づいてきたと思ったら、私に密着して抱き寄せられた。
いきなり緊張して胸の鼓動がうるさくなった気がした。でも、彼の異変にすぐに気がついた。
「あー俺、席を外すわ」
慌ててカーズ先生は立ち上がると、宣言どおりに部屋から出て行く。
ドアが閉まった音が聞こえた直後、室内は急に静まり返る。
私たちはすぐに二人きりになった。
急に段位者の招集があり、マルクとカーズ先生は王宮に行った。
他の先生たちも呼ばれたみたいで、急きょ臨時休校になった。
学校には自習で登校してもいいらしいけど、私は屋敷で本を読んでいた。
最近よく図書館で声をかけられて読書の邪魔をされたから。
こちらが注意して大人しく引き下がってくれる人はまだいいんだけど、相手をしない私が無愛想で態度が悪いように言い返してくる人もたまにいた。
前に朝食で先生たちに愚痴ったら、カーズ先生は苦笑して、マルクは眉間に皺を寄せていた。
「逆ギレは論外だけどさ、高等部に女子が少ないから、同じ年頃の女の子が気になるんだね」
「マナーについて注意しておきます」
「ありがとう」
「でも、相手から距離を置くためにもミーナはしばらく図書館の利用は避けてください。私の部屋にある蔵書は好きに入って読んで構いませんので」
「分かったわ」
彼は有言実行だった。すぐに朝礼で担任の先生から注意事項として伝えられていた。
マルクが約束を守ってくれたので、今度は私の番だ。
彼の書斎に朝から来ていた。
本棚を見れば、過去に私が持っていた同じ本もあって懐かしかった。
特にカイハーンの本は出版当時は彼の理論が認められていなかったから部数が少なくて貴重なのに全巻並べられていた。
その横にマルクの手記まであった。
きちんと整理整頓されているのに、意外に分類は適当だから、思わずクスリと笑ってしまった。
マルクが弟子に来て間もないころ、カイハーンの話を夜も寝かさない勢いで彼と会話した記憶が懐かしかった。
彼はまだ子どもだったのに本人かと思うほど的を射た答えが返ってきて、あんなに議論が楽しかったのは初めてだった。
カイハーンの本は、理解するために何度も読み、他の資料を漁ったほど、難解なレベルだったから特に。
マルクは本当に不思議ね。
彼の本棚から見慣れない本を探して読んでいたら、昼過ぎにはマルクたちが戻って来たらしく、使用人が知らせてくれた。
彼に呼ばれて応接室に向かうと、マルクとカーズ先生が深刻そうな暗い顔で待っていた。
二人は応接セットの長いソファに向かい合わせに座っていたので、なんとなく近づきやすいマルクの隣に腰を下ろした。
「厄災が出たそうです。段位所持者の魔導士は再び王宮に徴集されて、すぐに討伐に向かいます」
どうやら魔物の討伐に出かけた軍が厄災を見つけたようだ。
厄災——それは自然発生する破壊的存在。
姿形は不定形で、獣のような時もあれば、モヤのように輪郭が朧げなこともある。
移動しながら街や生き物を破壊し尽くし、厄災が過ぎ去ったあとは何も残らないほどだ。
勝手に生まれた厄災は、勝手に消えることもあるし、しつこく粘って複数の国を滅亡させることもある。
過去にこの厄災のせいで、沢山の国が滅んだ。
国を守るために何人もの魔導士たちが投入されて死んでいったと、過去の歴史書に記録が残っていた。
「まさか、こんなに早く厄災が発生するなんて思いもしないわよね。数百年に一度の周期で発生すると言われているけど、前回この地に現れたのは百年くらい前の話だから、まだまだ先だと思っていた」
「私も同感です。だから、聞いたときは耳を疑いました」
「厄災を見つけて軍は無事ではなかったでしょう? 何人亡くなったの?」
マルクが悲愴な顔を浮かべる。
「魔導士部隊の上級者十名のうち三名が死亡です」
「……それはひどいわね」
死者の無念さと残された家族を思うと、心が痛み言葉を失った。
「あなたが以前書いた論文を読んでいた班長がいたおかげで、厄災に対して魔導を使わなかった班は全滅を免れたようです」
厄災はマナに引き寄せられる。
だから、魔導を使えば襲われる。その習性に気づいたおかげで前回の厄災に勝てた。
今回、私の論文を読んで知っていた者は、厄災に遭遇しても助かったみたいね。
「まぁ、それで今度はそれより強い俺たち段位者を向かわせることになったんだ」
「でも、たぶん私以外の魔導士を何人送っても、みんな殺されちゃうわよ」
二人は何も答えなかった。いや、答えられなかったのよね。
私が行けば解決する問題だから。でも、それは私が大魔導士だと公表するのと同意だ。
あえて私に何も言わなかった二人の優しさに気づく。
迷いは一瞬だった。すぐに決意できた。
「私が行くわ。これ以上、誰も死なせたくないもの」
でも、そのあとを想像するだけで、身体が震えそうになる。
やっぱり怖くてたまらない。
「ミーナ」
横にいたマルクが近づいてきたと思ったら、私に密着して抱き寄せられた。
いきなり緊張して胸の鼓動がうるさくなった気がした。でも、彼の異変にすぐに気がついた。
「あー俺、席を外すわ」
慌ててカーズ先生は立ち上がると、宣言どおりに部屋から出て行く。
ドアが閉まった音が聞こえた直後、室内は急に静まり返る。
私たちはすぐに二人きりになった。
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