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「は……?」
そして、僕の感想…なんだそれ?
「いや、最初にお兄さんがドア開けた時から、わ、カッコイイって少し見入っちゃいまして、思い切って声かけたのでした…!」
へへへ、とヘラヘラ笑いながら、彼女は続ける。色素が少し薄い長めの黒髪は少し癖っけなのかゆるくウェーブがかかっている様に見える。彼女は無造作に一本にまとめて後ろで結んでいた。
「私は、まさりって言います。ね、お兄さんは?」
何故か突然の自己紹介?
「まさりって君の名前?珍しくない?」
漢字はなくてひらがなで書くんだそうだ。まさり?男まさり?とか、そんな事しか頭に浮かばん……
「そう?捨てられた時にね、名前のメモにそう書いてあったんだって。だからそのまま、まさり。」
「ふぇ!?」
今、凄いものを聞いた気がする……
「あ、私、捨て子だったんだよね~今もまだ本当の親は居ない~」
明日はまた雨か~くらいのテンションでまさりはそんな事を話し出す。
「………へぇ………」
「ねぇ?お兄さんは?」
「何?親?いるよ?」
「違う違う!お兄さんの名前。親いるのかぁ~まぁ、ほとんどはそうだよね?」
「善、と書いて、よし…」
「へぇ~善君も珍しい名前なんじゃない?」
「さぁ…?」
「善君の親は病院来てくれる?」
「うん、まぁ……」
「そっか…そりゃ親だもんね…」
「…誰も来ないのかよ?」
「え?養護施設から先生が来るよ?」
「へぇ……」
「でも親じゃないし、友達でもないし、こうやって景色見ながらお話なんてしてられないし?」
「ふぅん……」
「ねぇ、善君は歳いくつ?」
「………………18」
本当なら大学受験に向かってエンジンかけなきゃいけない時…何してんだろな…
「へえ!私と近い!私、17なんだ!今月誕生日だったんだよ?」
「へぇ…誕生日いつ?」
「ん~本当の誕生日はわからないけど、先生が付けてくれたので今月の13日かな。」
「え、分からないのかよ?」
「うん。出生届けが出されてなかったんだってさ。だからおおよそで。」
まさりが言うには親の情報はおろか、自分の出生日も分からないらしい。母子手帳も置いてなかったそうで出産前後の状態も分からずだったそうだ。分かっていたのは、名前がまさり、と言うことだけらしい。
「外見が日本人だから、多分親は日本人だろうって先生に言われたけど。」
「………」
「まぁ、それは親じゃなきゃ分からないよねぇ……」
確かにそうだけど、そんな事を言われたってなんて言ってやればいいのか……
「だから、わからない事を考えても仕方ないからやめたよね……」
「は?」
「だから、親の事も、どこの誰かって考えるのもうやめたの。だってそんなのに時間取られちゃったらこんな景色も見られないんだよ?ほら!もう直ぐ夕日が落ちる。ね?善君、この空の色が綺麗でしょ?」
「あぁ、まぁ……」
正直に言ってこんな空は何度も病室から見ているし、改めて感動を覚える様なものじゃない、と思う。そう、もう、何度も…
「私さ、入院って初めてで、ちょっと緊張したんだよね?だって足はぽっきりいっちゃってて痛いし、一人で不安だし…でもよく考えたら、病院っていろんな人の集まりで施設と一緒で知らない人だらけだけど、一人じゃ無いなって。そしたら心細いのが無くなっちゃって、で、善君見たら凄いカッコイイし、つい声かけちゃった!」
自由人だ……他の人がどんな理由で、どんな病気で入院しているかなんてこいつには関係ないのかよ?
「ふ~~ん…で?」
「ん?やっぱ声かけてよかったなって。善君やっぱカッコイイわ。」
「……褒めても煽ても何も出ないぞ……?」
「あ、別にいいよ?何か欲しいわけじゃないしね?ただ、今一緒に話す人が欲しかっただけだし…」
「ふ~ん、足、いてぇの?」
「え?」
痛みがあって気晴らししたいのか?
「ううん、もうほとんど痛くないよ?一時は手術になるかもって言われてたけど、大丈夫みたいだし…」
「………」
「もう直ぐ退院できるし……」
だったら、もう少しで出られるじゃん。
「ふ~~~ん…」
「善君は?いつ退院?」
「…………さぁね……」
「さぁって……いつから入院してるの?」
「ずっと前………」
やっぱり、話さなきゃ良かった…同年代の奴にこういうの、聞かれるのしんどいし、こいつが話す言葉がやたらキラキラして聞こえてきて、物凄くうるさかった…
これが僕のまさりについての正直な感想だ。
そして、僕の感想…なんだそれ?
「いや、最初にお兄さんがドア開けた時から、わ、カッコイイって少し見入っちゃいまして、思い切って声かけたのでした…!」
へへへ、とヘラヘラ笑いながら、彼女は続ける。色素が少し薄い長めの黒髪は少し癖っけなのかゆるくウェーブがかかっている様に見える。彼女は無造作に一本にまとめて後ろで結んでいた。
「私は、まさりって言います。ね、お兄さんは?」
何故か突然の自己紹介?
「まさりって君の名前?珍しくない?」
漢字はなくてひらがなで書くんだそうだ。まさり?男まさり?とか、そんな事しか頭に浮かばん……
「そう?捨てられた時にね、名前のメモにそう書いてあったんだって。だからそのまま、まさり。」
「ふぇ!?」
今、凄いものを聞いた気がする……
「あ、私、捨て子だったんだよね~今もまだ本当の親は居ない~」
明日はまた雨か~くらいのテンションでまさりはそんな事を話し出す。
「………へぇ………」
「ねぇ?お兄さんは?」
「何?親?いるよ?」
「違う違う!お兄さんの名前。親いるのかぁ~まぁ、ほとんどはそうだよね?」
「善、と書いて、よし…」
「へぇ~善君も珍しい名前なんじゃない?」
「さぁ…?」
「善君の親は病院来てくれる?」
「うん、まぁ……」
「そっか…そりゃ親だもんね…」
「…誰も来ないのかよ?」
「え?養護施設から先生が来るよ?」
「へぇ……」
「でも親じゃないし、友達でもないし、こうやって景色見ながらお話なんてしてられないし?」
「ふぅん……」
「ねぇ、善君は歳いくつ?」
「………………18」
本当なら大学受験に向かってエンジンかけなきゃいけない時…何してんだろな…
「へえ!私と近い!私、17なんだ!今月誕生日だったんだよ?」
「へぇ…誕生日いつ?」
「ん~本当の誕生日はわからないけど、先生が付けてくれたので今月の13日かな。」
「え、分からないのかよ?」
「うん。出生届けが出されてなかったんだってさ。だからおおよそで。」
まさりが言うには親の情報はおろか、自分の出生日も分からないらしい。母子手帳も置いてなかったそうで出産前後の状態も分からずだったそうだ。分かっていたのは、名前がまさり、と言うことだけらしい。
「外見が日本人だから、多分親は日本人だろうって先生に言われたけど。」
「………」
「まぁ、それは親じゃなきゃ分からないよねぇ……」
確かにそうだけど、そんな事を言われたってなんて言ってやればいいのか……
「だから、わからない事を考えても仕方ないからやめたよね……」
「は?」
「だから、親の事も、どこの誰かって考えるのもうやめたの。だってそんなのに時間取られちゃったらこんな景色も見られないんだよ?ほら!もう直ぐ夕日が落ちる。ね?善君、この空の色が綺麗でしょ?」
「あぁ、まぁ……」
正直に言ってこんな空は何度も病室から見ているし、改めて感動を覚える様なものじゃない、と思う。そう、もう、何度も…
「私さ、入院って初めてで、ちょっと緊張したんだよね?だって足はぽっきりいっちゃってて痛いし、一人で不安だし…でもよく考えたら、病院っていろんな人の集まりで施設と一緒で知らない人だらけだけど、一人じゃ無いなって。そしたら心細いのが無くなっちゃって、で、善君見たら凄いカッコイイし、つい声かけちゃった!」
自由人だ……他の人がどんな理由で、どんな病気で入院しているかなんてこいつには関係ないのかよ?
「ふ~~ん…で?」
「ん?やっぱ声かけてよかったなって。善君やっぱカッコイイわ。」
「……褒めても煽ても何も出ないぞ……?」
「あ、別にいいよ?何か欲しいわけじゃないしね?ただ、今一緒に話す人が欲しかっただけだし…」
「ふ~ん、足、いてぇの?」
「え?」
痛みがあって気晴らししたいのか?
「ううん、もうほとんど痛くないよ?一時は手術になるかもって言われてたけど、大丈夫みたいだし…」
「………」
「もう直ぐ退院できるし……」
だったら、もう少しで出られるじゃん。
「ふ~~~ん…」
「善君は?いつ退院?」
「…………さぁね……」
「さぁって……いつから入院してるの?」
「ずっと前………」
やっぱり、話さなきゃ良かった…同年代の奴にこういうの、聞かれるのしんどいし、こいつが話す言葉がやたらキラキラして聞こえてきて、物凄くうるさかった…
これが僕のまさりについての正直な感想だ。
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