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「は…?……なに、それ……?」
熱で半ばボゥッとしている頭が、一気に目覚める感じだ。
「…うん…………」
「それ、本当かよ?」
「………うん……信じてはもらえないけどね……?あっちのお婆ちゃんは、本当の孫が欲しかったんだって…預かるにしても何にもならない女はいらない、出てけって……それで、今、揉めてる……」
「………」
だから、自分の病室にいたくないっていう訳か……
「……帰れなくなったら、どうするの?」
一応まさりは里親の家にいるらしいし…?
「ん?施設に帰るだけだけど?」
事もなげにまさりはケロッと言う。施設って合宿か何かみたいなものなのか?合宿に参加した事ないけど……
「それで……お前は納得できるの?」
なんとなく、家にいられなくなるのはまさりにとって嫌なんじゃないかと、自分の家がなくなるんだからそんな不条理に怒り狂っているもんだと思ってたんだけど…
「仕方ないんじゃない?いらないって言うんならさ…」
「…………」
「嫌だって言う所に無理やりいてもねぇ…双方嫌な思いするだけだし…」
「だってまさりの里親は子供が欲しかったんだろ?」
「そう、だね。だけど、お婆ちゃんの言うことには逆らえないみたいよ?」
「……そんなもんなのか……?」
子供を育てるのって、そんなもの?育てたことなんて無いから勿論わからないけど…
「でも、私も施設の方が慣れてるからそっちでもいいかな………」
「そう……?」
なんだか、こっちがグッタリとしてしまう。熱があるのと、昨日あまり寝てないからだと思うけど。
「あ!でも、嫌なことばかりじゃなかったよ?里親が喧嘩しているのは見たくなかったけどさ。」
「いいことって、何よ?」
僕はもう目を瞑る…ゆっくり半分眠りながらまさりの話を聞くことにした。
「ふふん…善君に会えた!」
上から目線なまさりの物言いに、それを突っ込み返す気力は僕にはない。
「なんで…?今、関係なくない?」
「関係あるって!お婆ちゃんに突き落とされて足折らなかったら、病院なんて絶対に来たくなかったし、それでもって善君には絶対に会ってないよ?」
悪かったな…まさりがその絶対に来たくないって言っているここに僕、もうずっといるんだけどな……
「お前ね……」
まさりのあんまりな物言いに一言文句を言ってやろうと僕は目を開ける。
「………ちか…………」
目の前にまさりの顔のドアップ…まさりの瞳は髪と同じ様に少し色素が薄くて茶色っぽく見えた。
いい、匂い……シャンプー?
「だから、この怪我は私にとってはラッキーだったわけ。」
「何が、ラッキーなんだよ?痛い思いしてさ…」
「へへ、もう痛くありませ~ん!」
「で、なんでこんな時間に突撃してくるんだよ……」
今は朝食をが終わって、朝のケアが始まっている時間だ。昨日眠れなかった僕はさっき着替えだけ済ませたばかりで…
「……ここ、出る前にさ、沢山善君と話したいと思って…ま、これが本音かな…?」
「…出る…?退院……?」
自分でも驚く位、声が裏返った…
「うん。もういいですって。後は何回か診せに来るくるのと、リハビリ?」
「………」
そうか…そうだ、普通は退院するんだよ。入っても直ぐに家に帰る。そうじゃない時もあるって知っているけど、若い人は大体帰っていく…
「まだいつって決まってないけど、ね?善君、それまでここに来ていい………?」
勝手にここに来ては自分勝手に話しているのに、そんなまさりの図々しさは徐々に無くなって、今更ながらに声が小さくなっていく。自分が結構なゴリ押しでここに来ている事がわかっているんだろうと推測できる。案の定、薄目から見えるまさりの表情は自信なげに揺れていて…
こんな風な表情ができるまさりは、狡いと思う…少しでも、まさりの心に近付いた事がある者にとっては断り難いじゃないか…
「はぁ………いいよ……」
ため息を吐きつつ、僕はこう言うしかなかった。
熱で半ばボゥッとしている頭が、一気に目覚める感じだ。
「…うん…………」
「それ、本当かよ?」
「………うん……信じてはもらえないけどね……?あっちのお婆ちゃんは、本当の孫が欲しかったんだって…預かるにしても何にもならない女はいらない、出てけって……それで、今、揉めてる……」
「………」
だから、自分の病室にいたくないっていう訳か……
「……帰れなくなったら、どうするの?」
一応まさりは里親の家にいるらしいし…?
「ん?施設に帰るだけだけど?」
事もなげにまさりはケロッと言う。施設って合宿か何かみたいなものなのか?合宿に参加した事ないけど……
「それで……お前は納得できるの?」
なんとなく、家にいられなくなるのはまさりにとって嫌なんじゃないかと、自分の家がなくなるんだからそんな不条理に怒り狂っているもんだと思ってたんだけど…
「仕方ないんじゃない?いらないって言うんならさ…」
「…………」
「嫌だって言う所に無理やりいてもねぇ…双方嫌な思いするだけだし…」
「だってまさりの里親は子供が欲しかったんだろ?」
「そう、だね。だけど、お婆ちゃんの言うことには逆らえないみたいよ?」
「……そんなもんなのか……?」
子供を育てるのって、そんなもの?育てたことなんて無いから勿論わからないけど…
「でも、私も施設の方が慣れてるからそっちでもいいかな………」
「そう……?」
なんだか、こっちがグッタリとしてしまう。熱があるのと、昨日あまり寝てないからだと思うけど。
「あ!でも、嫌なことばかりじゃなかったよ?里親が喧嘩しているのは見たくなかったけどさ。」
「いいことって、何よ?」
僕はもう目を瞑る…ゆっくり半分眠りながらまさりの話を聞くことにした。
「ふふん…善君に会えた!」
上から目線なまさりの物言いに、それを突っ込み返す気力は僕にはない。
「なんで…?今、関係なくない?」
「関係あるって!お婆ちゃんに突き落とされて足折らなかったら、病院なんて絶対に来たくなかったし、それでもって善君には絶対に会ってないよ?」
悪かったな…まさりがその絶対に来たくないって言っているここに僕、もうずっといるんだけどな……
「お前ね……」
まさりのあんまりな物言いに一言文句を言ってやろうと僕は目を開ける。
「………ちか…………」
目の前にまさりの顔のドアップ…まさりの瞳は髪と同じ様に少し色素が薄くて茶色っぽく見えた。
いい、匂い……シャンプー?
「だから、この怪我は私にとってはラッキーだったわけ。」
「何が、ラッキーなんだよ?痛い思いしてさ…」
「へへ、もう痛くありませ~ん!」
「で、なんでこんな時間に突撃してくるんだよ……」
今は朝食をが終わって、朝のケアが始まっている時間だ。昨日眠れなかった僕はさっき着替えだけ済ませたばかりで…
「……ここ、出る前にさ、沢山善君と話したいと思って…ま、これが本音かな…?」
「…出る…?退院……?」
自分でも驚く位、声が裏返った…
「うん。もういいですって。後は何回か診せに来るくるのと、リハビリ?」
「………」
そうか…そうだ、普通は退院するんだよ。入っても直ぐに家に帰る。そうじゃない時もあるって知っているけど、若い人は大体帰っていく…
「まだいつって決まってないけど、ね?善君、それまでここに来ていい………?」
勝手にここに来ては自分勝手に話しているのに、そんなまさりの図々しさは徐々に無くなって、今更ながらに声が小さくなっていく。自分が結構なゴリ押しでここに来ている事がわかっているんだろうと推測できる。案の定、薄目から見えるまさりの表情は自信なげに揺れていて…
こんな風な表情ができるまさりは、狡いと思う…少しでも、まさりの心に近付いた事がある者にとっては断り難いじゃないか…
「はぁ………いいよ……」
ため息を吐きつつ、僕はこう言うしかなかった。
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