焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!

雷覇

文字の大きさ
24 / 42
第1章

第24話:父の内面

しおりを挟む
廊下を歩く足音は、己の鼓動と同じでよく響いていた。

焔木本家の石床は、冷たく、重く、よく通る音を返す。

まるでその足取りが、心の迷いを暴いてくるようだった。



(あれが……海人か)



思い出の中の海人は、まだあどけない顔で木刀を握り、何度倒れても起き上がるような少年だった。

言葉数は少なかったが、決して諦めず、不器用ながらも誠実で



(そして、俺を……信じていた)



それを裏切ったのは、誰でもない――この、自分だ。



六年前。

一族内での政争、派閥、力の継承争いが熾烈を極めていた時代。

「家の秩序を乱す因子」として、上層部の会議で名が挙がったのが――まだ幼い海人だった。



その時、厳山は当主の補佐という立場にいた。

自らが異議を唱えれば、会議の決定は覆る余地があった。

それでも――彼は、言葉を飲み込んだ。



(言い訳は、いくらでもできる。“守ろうとしたが無理だった”。“私情は挟めなかった”。“それが当主の決定だった”)



だが真実は――恐れていたのだ。



息子を庇って自分の立場を失えば、一族に何が起こるかわからない。

一族を守るために黙った。



けれど、結果はどうだ?

海人は幽閉され、声も届かぬ場所に隔離され、ついに処刑島ともいえる夢幻島に送られた。



(守れなかった。結局、俺はただ自分の地位を奪われるのを恐れただけだ)



それを「仕方なかった」などと綺麗にまとめる気にはなれない。

あのときのあの沈黙は、父として最もしてはいけない“放棄”だったのだ。



そして、今――彼は戻ってきた。

この焔木の地に、あの冷たい目をして。



(俺を見ても、何も言わなかった。怒りも、蔑みも、悲しみも……感情が見えなかった)



それが、何よりも苦しかった。



息子に拒絶される覚悟は、幽閉を選んだあの瞬間にもう、していたつもりだった。

だが、実際に目の前で、父子としての繋がりを断たれた時――



(こんなにも、心が痛むものなのか)



父としての言葉は、今さら何の意味も持たない。

彼にとって自分は、もはや“血がつながっているだけの他人”なのだ。



(……それでも、願ってしまう)



あいつの力が、これから多くの者の目に晒されることになる。

そして、恐れられ、利用されようとするだろう。



(どうか、お前が……信じたものに、再び裏切られることがないように)



焔木家は、変わらない。

力のある者は神輿にされ、失敗すればすぐに捨てられる。

それは自分がそれを最も知っている。



だからこそ――



(お前には、俺のようになってほしくない)



たとえ、父としての立場を取り戻せずとも。

たとえ、今後も顔を合わせることがなくとも。

それでも、祈るしかなかった。



「……強くなったな、海人」



声にはしなかったその言葉が、胸の奥に沈んでいく。



今の彼に、父としてしてやれることなど、もはや何もなかった。

幽閉される息子に手を差し伸べなかった父として――

焔木厳山は、その罪を、生涯背負い続けるつもりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

処理中です...