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帝国海軍の猫大佐 裏話
一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 4
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帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです
+++++
「かず君、左と右、どっちの窓際がいい?」
「……」
私の問いかけに、おちびさんは放心状態になった。さすがにこの質問はダメか。
「ごめんごめん。窓際ならどっちでもいいよね、お外みれるし」
「うん」
「じゃあ、指定席、特急券こみでお願いします。大人一人、子供一人で」
窓口のおじさんにそう言って、電車の切符を買った。チラッとタッチパネルを見たところでは、週末だけど指定席の車両はすいているようだ。
「じゃあ、電車が来るまでもうちょっと時間あるから、お茶しようか。どこにする?」
「えーとね、コマダ!」
駅周辺にはシネコンもあるせいか、最近はいろいろなお店ができている。だけどそこは、駅からちょっと遠かった。私だけなら早足で往復すれば良いけど、おちびさんと一緒だとちょっと難しい。
「あー、コマダはちょっと遠いから、時間が心配かな。コマダは帰りにお茶で寄ることにして、今日はサリーコーヒーにしない?」
「いいよー、だきょーしまーす!」
いきなり聞き慣れない言葉を口にしたので、思わず笑ってしまった。しかも使い方も間違っていない。
「どこでそんな言葉を覚えたの」
「ミミ先生!!」
ミミ先生とは、おちびさんが通っている幼稚園の先生。御実家が耳鼻科の病院なせいで、「耳先生」というあだ名がついてしまったとか。先生曰く、「鼻先生」じゃないだけマシだと思いますってことだった。
「ミミ先生、なんの妥協だろうねえ」
「わかんない」
もしかして耳先生という名前のことかな。
「パパにライスバーガーおみやげしないー?」
「モモバーガーの? そりゃ買っていったらパパは喜ぶだろうけど、電車の中でめっちゃにおわない?」
市バスと違って電車は窓が開けられない。ギョウザやフライドチキンよりはマシだろうけど、持ち込むにはちょっと躊躇してしまう食べ物だ。
「じゃあ、なし。パパがお家にかえってきたら、いっしょに行く!」
「そのほうが安心だねー。あ、今の話、パパには内緒ね? また食べられなかったって泣いちゃうから」
「うん」
ニタッと二人で笑った。
「あ、じゃあさ、サリーコーヒーのバウムクーヘンをおみやげにしようか。あれならにおわないし」
「うん!!」
「じゃあ、お茶もサリーさんでしようね。なにがいいかなー」
「ミックスジュース!」
「ああ、いいねー、ミックスジュース。ママもそれにしよー」
駅近くのカフェに入ると、お持ち帰り用のバウムクーヘンと、ミックスジュースを頼む。席につくと、おちびさんのリュックにバウムクーヘンを入れた。
「かず君、リュックをしょってる時には気をつけてね。バウムクーヘンがぺったんこになるから」
「りょうかいでーす」
電車の到着時間をメールで修ちゃんに送る。改札口に降りたら、きっと待っていてくれるだろう。
「あ、そうだ。明日の見学さ、艦長さんのお茶会がるんだよ。前に艦長さんとリンゴジュース飲んだの、覚えてる?」
「うん」
「でね、新しく配属になった人のご家族が、何人か来るんだって。だから、ちょっとだけお行儀よくしてね」
「たくさん?」
この「たくさん」は、人がたくさんか?ではなく、時間がたくさんか?という質問だ。
「どうかなー……」
前の時はどうだったかなと思い返してみる。それこそ招待された人によるよね。おちびさん一緒だから、さっさと退席させてくれると良いんだけど。そのへんの空気を読んでくれる人達だと良いなあ。
お茶しながら時間をつぶし、そろそろなのでお店を出る。そして駅に向かう。
「乗る前に、おトイレいっとこうか。電車の中にもトイレあるけど」
「うん!」
私が子供の頃は、駅のトイレも電車のトイレも使いたくないなって思ったものだけど、最近はとても綺麗だ。ここの駅のトイレも、何か月か前の改修工事でかなり綺麗になった。観光客が利用することが増えたかららしい。旅行シーズンは人が増えてうんざりだけど、こういう点だけは観光客様様だよね。
トイレをすませてホームにあがる。十分ほど待つと、乗る予定の特急列車がホームに入ってきた。
「さて、いよいよ出発ですよー」
「しゅっぱつー!」
電車に乗って席に落ち着いたところで、修ちゃんからメールが返ってきた。
『改札口の前で待ってる。買い物して帰ろう』
「かず君、パパ、お迎えに来てくれるって。お買い物して帰ろうって言ってるよ」
「夜ごはんどうする? 回るお寿司いく?」
「えー、さすがにちょっと早くない?」
とは言え、一度、家に落ち着いちゃったら、出かけるのが面倒くさくなるのは間違いない。
「お寿司を買って帰るのはどう?」
「えー……」
思いっ切り不服そうな顔をされた。
「回るお寿司の気分なわけ?」
「そーゆー気分なわけ!」
「しかたないねえ……だったらお買い物して、ご飯の時間にまた出かけるしかないか」
「ないです!」
ま、到着まで二時間ほどあるし、その間に気持ちが変わるかもしれない。
―― ……ってことはないかー。こういう初志貫徹なところは、修ちゃんそっくりなんだよねー。さすが親子だねー ――
ものぐさな私に似なくて本当に良かった。
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「かず君、左と右、どっちの窓際がいい?」
「……」
私の問いかけに、おちびさんは放心状態になった。さすがにこの質問はダメか。
「ごめんごめん。窓際ならどっちでもいいよね、お外みれるし」
「うん」
「じゃあ、指定席、特急券こみでお願いします。大人一人、子供一人で」
窓口のおじさんにそう言って、電車の切符を買った。チラッとタッチパネルを見たところでは、週末だけど指定席の車両はすいているようだ。
「じゃあ、電車が来るまでもうちょっと時間あるから、お茶しようか。どこにする?」
「えーとね、コマダ!」
駅周辺にはシネコンもあるせいか、最近はいろいろなお店ができている。だけどそこは、駅からちょっと遠かった。私だけなら早足で往復すれば良いけど、おちびさんと一緒だとちょっと難しい。
「あー、コマダはちょっと遠いから、時間が心配かな。コマダは帰りにお茶で寄ることにして、今日はサリーコーヒーにしない?」
「いいよー、だきょーしまーす!」
いきなり聞き慣れない言葉を口にしたので、思わず笑ってしまった。しかも使い方も間違っていない。
「どこでそんな言葉を覚えたの」
「ミミ先生!!」
ミミ先生とは、おちびさんが通っている幼稚園の先生。御実家が耳鼻科の病院なせいで、「耳先生」というあだ名がついてしまったとか。先生曰く、「鼻先生」じゃないだけマシだと思いますってことだった。
「ミミ先生、なんの妥協だろうねえ」
「わかんない」
もしかして耳先生という名前のことかな。
「パパにライスバーガーおみやげしないー?」
「モモバーガーの? そりゃ買っていったらパパは喜ぶだろうけど、電車の中でめっちゃにおわない?」
市バスと違って電車は窓が開けられない。ギョウザやフライドチキンよりはマシだろうけど、持ち込むにはちょっと躊躇してしまう食べ物だ。
「じゃあ、なし。パパがお家にかえってきたら、いっしょに行く!」
「そのほうが安心だねー。あ、今の話、パパには内緒ね? また食べられなかったって泣いちゃうから」
「うん」
ニタッと二人で笑った。
「あ、じゃあさ、サリーコーヒーのバウムクーヘンをおみやげにしようか。あれならにおわないし」
「うん!!」
「じゃあ、お茶もサリーさんでしようね。なにがいいかなー」
「ミックスジュース!」
「ああ、いいねー、ミックスジュース。ママもそれにしよー」
駅近くのカフェに入ると、お持ち帰り用のバウムクーヘンと、ミックスジュースを頼む。席につくと、おちびさんのリュックにバウムクーヘンを入れた。
「かず君、リュックをしょってる時には気をつけてね。バウムクーヘンがぺったんこになるから」
「りょうかいでーす」
電車の到着時間をメールで修ちゃんに送る。改札口に降りたら、きっと待っていてくれるだろう。
「あ、そうだ。明日の見学さ、艦長さんのお茶会がるんだよ。前に艦長さんとリンゴジュース飲んだの、覚えてる?」
「うん」
「でね、新しく配属になった人のご家族が、何人か来るんだって。だから、ちょっとだけお行儀よくしてね」
「たくさん?」
この「たくさん」は、人がたくさんか?ではなく、時間がたくさんか?という質問だ。
「どうかなー……」
前の時はどうだったかなと思い返してみる。それこそ招待された人によるよね。おちびさん一緒だから、さっさと退席させてくれると良いんだけど。そのへんの空気を読んでくれる人達だと良いなあ。
お茶しながら時間をつぶし、そろそろなのでお店を出る。そして駅に向かう。
「乗る前に、おトイレいっとこうか。電車の中にもトイレあるけど」
「うん!」
私が子供の頃は、駅のトイレも電車のトイレも使いたくないなって思ったものだけど、最近はとても綺麗だ。ここの駅のトイレも、何か月か前の改修工事でかなり綺麗になった。観光客が利用することが増えたかららしい。旅行シーズンは人が増えてうんざりだけど、こういう点だけは観光客様様だよね。
トイレをすませてホームにあがる。十分ほど待つと、乗る予定の特急列車がホームに入ってきた。
「さて、いよいよ出発ですよー」
「しゅっぱつー!」
電車に乗って席に落ち着いたところで、修ちゃんからメールが返ってきた。
『改札口の前で待ってる。買い物して帰ろう』
「かず君、パパ、お迎えに来てくれるって。お買い物して帰ろうって言ってるよ」
「夜ごはんどうする? 回るお寿司いく?」
「えー、さすがにちょっと早くない?」
とは言え、一度、家に落ち着いちゃったら、出かけるのが面倒くさくなるのは間違いない。
「お寿司を買って帰るのはどう?」
「えー……」
思いっ切り不服そうな顔をされた。
「回るお寿司の気分なわけ?」
「そーゆー気分なわけ!」
「しかたないねえ……だったらお買い物して、ご飯の時間にまた出かけるしかないか」
「ないです!」
ま、到着まで二時間ほどあるし、その間に気持ちが変わるかもしれない。
―― ……ってことはないかー。こういう初志貫徹なところは、修ちゃんそっくりなんだよねー。さすが親子だねー ――
ものぐさな私に似なくて本当に良かった。
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