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帝国海軍の猫大佐 裏話
一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 16
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帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです
+++++
「和人、パパ歩きにくいんだけどな」
車からおりたとたん、おちびさんが修ちゃんの足にへばりついた。そのかっこうは、木にしがみついているコアラさんだ。
「かず君、パパが歩けないって言ってるよ?」
「……」
そう言っても、不機嫌そうな顔をしてしがみついたまま。さすがにそのまま歩くわけにもいかないので、修ちゃんはしかたなくおちびさんを抱っこした。
「しようがないなあ……どうした? 今日は朝からご機嫌ななめだなあ、んん?」
「……」
顔をのぞき込もうとすると、修ちゃんの肩に顔を押しつけて顔をかくしてしまう。今日は朝からずっとこんな調子だ。ううん、昨日の夜、寝る時からかも。
「あー……帰るのがイヤなんだね、かず君」
頭が少しだけタテに動いた。
「しかたないだろ、和人。幼稚園もあるし、ママだって仕事あるんだぞ?」
「やすむ」
「幼稚園をか? お友達に会えないぞ? 仲良しのヨシ君やケンちゃんと遊べなくてもいいのか?」
「……やだ」
答えるのに間があった。きっと、おちびさんなりに葛藤があったにちがいない。
「だろ?」
「でもパパいないのもヤダ」
「そればっかりはなあ」
修ちゃんは困った顔をしながら笑った。
これでも修ちゃんが勤務している場所は、我が家から一番近い場所なのだ。それ以上に近い場所となると、もう市内の地方協力本部勤務しかない。そして今の修ちゃんは、そこを希望したとしても絶対に却下される状態にいた。ま、本人は、上官に気に入られるのも善し悪しだねと笑っているけど。
「こんなんじゃ、横須賀やもっと遠い場所への転勤になったら大変だな」
「はんしんきちがいい」
「よく知ってるな、和人」
意外な場所が出て感心している。
「前に護衛艦がきたニュースを見たんだよ」
「なるほど。みむろもそのうち、あそこに寄港すると思うぞ?」
「そうなの?」
「まだ一度も立ち寄ってないんだよ、あそこ」
「へー。とっくに立ち寄ってると思ってた。じゃあ、その時はまた見に行くよ」
ニコニコしながら言ったら、微妙な顔をされた。
「え、来るのか?」
「行くよ」
「マジで?」
「マジですよ」
「えー……」
「えーって、なんなん。かず君、阪神基地でみむろが一般公開したら絶対に行くよね?」
しがみついたままのおちびさんに声をかける。
「いく」
「ほらー」
「だからさあ、二人が来ると気恥ずかしいんだって」
「修ちゃんの気恥ずかしさより、パパに会いたい和人の気持ちが優先でしょ?」
「そりゃまあそうだけどさあ」
ぶちぶちともんくをいう修ちゃんにかまわず、お店に入った。そこは地元の人達に人気がある海産物屋さん。修ちゃんや山部さんの奥さんのおすすめは、新鮮な魚で作られたチクワとカマボコ。もちろん他にもおいしいものがたくさんあるけど。
「いらっしゃーい」
「クール便で送っていただきたいんですが、大丈夫ですか?」
「はい、できますよ。何をお送りしましょうか? 三千円以上なら送料無料ですよ」
「えーと、だったらあ……」
店員さんに送ってもらう商品を伝えていると、奥でチクワを袋詰めをしていた年配の女性が、ニコニコしながら出てきた。
「あらあら、どうしたの? ご機嫌ななめねー? うちのカマボコ、おいしいよ? 試食してみる?」
ツマヨウジに刺したカマボコを、奥さんがおちびさんに差し出した。
「ほら、かず君。カマボコだって」
顔をそろっとあげると、目の前に差し出されたツマヨウジを手にとる。そしてカマボコを口に入れた。
「どう? おいしい?」
「……ぷりぷりでおいしい」
「よくわかるねー、そうなのよ、うちのカマボコ、ぷりぷりでおいしいの!」
奥さんの笑顔につられて、おちびさんもニッコリと笑った。
「じゃあ、カマボコ、送るのとは別に買って帰えろうか。ばあばにも食べさせてあげたいし」
「シイタケたちにも」
「うんうん、そうだね、シイタケ達にも」
私達の会話に奥さんが首をかしげる。
「しいたけって、あのしいたけ?」
「あ、シイタケってのは、うちの猫の名前なんですよ」
「マイタケもいるよ」
「ああ、猫ちゃんの名前なの? シイタケちゃんとマイタケちゃん。いいわね、なかなか面白いわ。うちも今度そういう名前をつけようかしら。うちはね、ダイフクとキンツバなの。猫っぽくないって言われるんだけど、シイタケちゃんとマイタケちゃんには負けるわね!」
奥さんは笑いながら、ショーケースの向こう側に戻り、またチクワの袋詰め作業を再開する。
「こちらに住所とお電話番号をお願いします」
「はーい」
送り状に書き込んでお支払いをした。明日の夜便で届くそうだ。
「修ちゃんは買わなくてもいいの?」
「うん。食いたくなったらここに来るから」
「いいよねー、ご近所においしいチクワとカマボコのお店があるって」
持って帰る分のカマボコとチクワを手提げ袋に入れてもらう。
「家で食べるの楽しみだなー」
「おいしいよ」
試食ずみのおちびさんが言った。ますます楽しみだ。そんなことを考えながら、奥さんにお礼を言って店を出た。
「……修ちゃん」
「うん」
「ダイフクとキンツバだって」
最近の猫ちゃんの名前はなかなか面白い。
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「和人、パパ歩きにくいんだけどな」
車からおりたとたん、おちびさんが修ちゃんの足にへばりついた。そのかっこうは、木にしがみついているコアラさんだ。
「かず君、パパが歩けないって言ってるよ?」
「……」
そう言っても、不機嫌そうな顔をしてしがみついたまま。さすがにそのまま歩くわけにもいかないので、修ちゃんはしかたなくおちびさんを抱っこした。
「しようがないなあ……どうした? 今日は朝からご機嫌ななめだなあ、んん?」
「……」
顔をのぞき込もうとすると、修ちゃんの肩に顔を押しつけて顔をかくしてしまう。今日は朝からずっとこんな調子だ。ううん、昨日の夜、寝る時からかも。
「あー……帰るのがイヤなんだね、かず君」
頭が少しだけタテに動いた。
「しかたないだろ、和人。幼稚園もあるし、ママだって仕事あるんだぞ?」
「やすむ」
「幼稚園をか? お友達に会えないぞ? 仲良しのヨシ君やケンちゃんと遊べなくてもいいのか?」
「……やだ」
答えるのに間があった。きっと、おちびさんなりに葛藤があったにちがいない。
「だろ?」
「でもパパいないのもヤダ」
「そればっかりはなあ」
修ちゃんは困った顔をしながら笑った。
これでも修ちゃんが勤務している場所は、我が家から一番近い場所なのだ。それ以上に近い場所となると、もう市内の地方協力本部勤務しかない。そして今の修ちゃんは、そこを希望したとしても絶対に却下される状態にいた。ま、本人は、上官に気に入られるのも善し悪しだねと笑っているけど。
「こんなんじゃ、横須賀やもっと遠い場所への転勤になったら大変だな」
「はんしんきちがいい」
「よく知ってるな、和人」
意外な場所が出て感心している。
「前に護衛艦がきたニュースを見たんだよ」
「なるほど。みむろもそのうち、あそこに寄港すると思うぞ?」
「そうなの?」
「まだ一度も立ち寄ってないんだよ、あそこ」
「へー。とっくに立ち寄ってると思ってた。じゃあ、その時はまた見に行くよ」
ニコニコしながら言ったら、微妙な顔をされた。
「え、来るのか?」
「行くよ」
「マジで?」
「マジですよ」
「えー……」
「えーって、なんなん。かず君、阪神基地でみむろが一般公開したら絶対に行くよね?」
しがみついたままのおちびさんに声をかける。
「いく」
「ほらー」
「だからさあ、二人が来ると気恥ずかしいんだって」
「修ちゃんの気恥ずかしさより、パパに会いたい和人の気持ちが優先でしょ?」
「そりゃまあそうだけどさあ」
ぶちぶちともんくをいう修ちゃんにかまわず、お店に入った。そこは地元の人達に人気がある海産物屋さん。修ちゃんや山部さんの奥さんのおすすめは、新鮮な魚で作られたチクワとカマボコ。もちろん他にもおいしいものがたくさんあるけど。
「いらっしゃーい」
「クール便で送っていただきたいんですが、大丈夫ですか?」
「はい、できますよ。何をお送りしましょうか? 三千円以上なら送料無料ですよ」
「えーと、だったらあ……」
店員さんに送ってもらう商品を伝えていると、奥でチクワを袋詰めをしていた年配の女性が、ニコニコしながら出てきた。
「あらあら、どうしたの? ご機嫌ななめねー? うちのカマボコ、おいしいよ? 試食してみる?」
ツマヨウジに刺したカマボコを、奥さんがおちびさんに差し出した。
「ほら、かず君。カマボコだって」
顔をそろっとあげると、目の前に差し出されたツマヨウジを手にとる。そしてカマボコを口に入れた。
「どう? おいしい?」
「……ぷりぷりでおいしい」
「よくわかるねー、そうなのよ、うちのカマボコ、ぷりぷりでおいしいの!」
奥さんの笑顔につられて、おちびさんもニッコリと笑った。
「じゃあ、カマボコ、送るのとは別に買って帰えろうか。ばあばにも食べさせてあげたいし」
「シイタケたちにも」
「うんうん、そうだね、シイタケ達にも」
私達の会話に奥さんが首をかしげる。
「しいたけって、あのしいたけ?」
「あ、シイタケってのは、うちの猫の名前なんですよ」
「マイタケもいるよ」
「ああ、猫ちゃんの名前なの? シイタケちゃんとマイタケちゃん。いいわね、なかなか面白いわ。うちも今度そういう名前をつけようかしら。うちはね、ダイフクとキンツバなの。猫っぽくないって言われるんだけど、シイタケちゃんとマイタケちゃんには負けるわね!」
奥さんは笑いながら、ショーケースの向こう側に戻り、またチクワの袋詰め作業を再開する。
「こちらに住所とお電話番号をお願いします」
「はーい」
送り状に書き込んでお支払いをした。明日の夜便で届くそうだ。
「修ちゃんは買わなくてもいいの?」
「うん。食いたくなったらここに来るから」
「いいよねー、ご近所においしいチクワとカマボコのお店があるって」
持って帰る分のカマボコとチクワを手提げ袋に入れてもらう。
「家で食べるの楽しみだなー」
「おいしいよ」
試食ずみのおちびさんが言った。ますます楽しみだ。そんなことを考えながら、奥さんにお礼を言って店を出た。
「……修ちゃん」
「うん」
「ダイフクとキンツバだって」
最近の猫ちゃんの名前はなかなか面白い。
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