6 / 94
本編
第六話 模様替えしてみました
しおりを挟む
夢のような週末を過ごしたせいでキャンパスに来ても何だか頭がぼんやりしている。体にはまだ紅い痕が残っているし、今朝がたホテルを出る前に激しく抱かれたせいか自分の中で彼が動いている感触を体はまだはっきりと覚えていた。
―― ずっと消えなければ良いのに…… ――
勉強、頑張れよって言って頭を撫でてくれた彼に、また会える?とも連絡先を教えて?とも言えないまま、ただ頷いてバイバイって手を振ってさよならした。本当にさよならだよね、きっと。二度と会うことはないのかな。あ、お父さんが自衛隊のことをグチグチ責め立てるたびに少しぐらい私のこと思い出してくれるかも。そのぐらい期待しても良いよね?
「はあ……」
「ちょっと、なに溜め息なんてついてんのよ、蹴るわよ?」
「あ、おはよーございます、みゅうさん」
顔を上げればみゅうさんがこちらを見下ろしている。
「何よ、その呆けた顔は。週末はやり過ぎで頭がショートしちゃったとでも言うわけ?」
「えへへ、今朝はホテルから直接ここに来ましたよー。朝のエッチもしっかりしちゃいました~」
「うわっ、なんだかムカつくわ。昼休みにでも話を聞かせなさいよね」
「今からでもいいですよー。もうすっごく濃密な週末でしたあ……ふぁ」
盛大にあくびが出てしまった。そう言えば寝る時間も惜しんで愛し合ってたもんね。信吾さん今日の仕事は大丈夫かな。私の方は今日の講義はまともに出席できそうにないよ。
「まったく、松橋がたいそうご立腹だったそうよ? せっかく自分がお持ち帰りしようと思っていたのに鳶が油揚げかっさらっていった状態だったみたいで。ま、私からしたら、あんなチャラ男になおっちの相手が務まるとは思えなかったけど。で、携帯の番号くらいは交換したの?」
その問いに頭を横に振った。
「実は出張でこっちに出てきていたってことぐらいしか知らないんです。携帯も教えたくなさそうだったし、ちょっと特殊な部隊に所属しているのかもしれないから、しつこく迫るのも悪い気がして。あ、でも私の携帯番号は渡しましたよ?」
みゅうさんは呆れた子ねと言いたげな顔をしている。だってしつこく尋ねたら信吾さんきっと困ったと思うし、そんなことして嫌われたくなかったんだもん。
「もう会えないかもしれないけどそれはそれで良いんです。とっても幸せな週末だったから」
「さりげなく惚気てるんじゃないわよ、腹が立つわね。今日のランチはなおっちの奢りだからね」
「はいはい、分かってますよ。じゃあ、その時に更に惚気てあげますら覚悟しといて下さい」
「……デザートも追加よ」
そんなわけで学食でランチを食べながらみゅうさんに散々惚気話をしたせいで、結局、夕飯も奢らされる羽目になっちゃったけど気晴らしにはちょうど良かったかな。この三日間ずっと信吾さんと二人でいたから、誰もいないマンションに戻るのは何となく気が進まなかったし。
「ただいまー……」
それまで特に寂しいとは思わなかった一人暮らしの部屋が急に物悲しいものに感じた。これも週末の後遺症かなあ、しばらくしたらまた慣れるかな。ホテルに持って行ってた着替えを洗濯機の中に放り込むと、ポットに水を入れてスイッチを入れた。
『見事に何も無いのはどういう訳だ?』
信吾さんはこの部屋を見てそう言ったっけ。
「……色々と揃えてみようかなあ……」
次の休み、友達を誘って家具屋さんに行ってみようかな。ちょっと贅沢して大画面のテレビを買ってみるのも良いかもしれない。あとでネットでどんな家具があるか見てみよう。そんなことを考えていたら少し気が紛れて元気が出てきたのでお風呂の用意をする。そして入ろうとした時に鏡の前で改めてうわあぁとなった。
「信吾さん、ほんとに容赦なくつけてくれちゃって……」
あちらこちらに散らばる紅い痕。中には噛み跡まである。なんでここまで痕をつけることに拘ったんだろう? 私が少しでも信吾さんのことを覚えているようにする為? でもいずれこの痕も綺麗サッパリ消えてしまうだろう。それがとても悲しく感じられた。
+++++
それから二週間。私の体についていた痕がほぼ消えた頃、自宅にはちょっと家具が増えた。
みゅうさんに何気なく相談した結果、みゅうさんお勧めの家具屋さんに引き摺るようにして連れていかれ、あれやこれやの散財三昧というものを初めて経験した。お陰様というか母の保険金やら遺産やら何やらがあったから大学を卒業しても当分の間は食べるのに困らない程度には銀行口座に入っているけど、なんだかちょっと後ろめたいというか何と言うか。
「あの父親からの手切れ金なんてさっさと使っちゃえば良いのよ。そんな胸糞悪いお金はさっさと使って景気回復に貢献しなさいな。それが一番よ」
当たっているようなそうでないようなみゅうさんの持論に乗せられた気がしないでもないけど、お陰で二週間後にはそこそこ今時の女子大生の部屋らしくなった。あ、大型の液晶テレビも加わりました、まだまともにドラマすら見てないけど。
部屋はそれらしく賑やかなことになったけど最近ちょっと困ったことが起きている。自分自身のことが一つと、他の人が関係していることが一つ。
自分自身で困っているのは目が覚め時に無意識に手を伸ばしちゃうこと。自宅に戻ってしばらくはそんなことなかったのにベッドを新しくしたせいかな? 手を伸ばしているはずのない信吾さんを探している自分にウンザリしちゃう。そんなことがあった時は目が覚めてから「女々しいぞ奈緒!!」って活を入れることにしている。
そしてもう一つ。こっちの方が厄介で、それが松橋先輩。お誕生日の飲み会の時に振られたのが気に入らなかったのかやたらと絡んでくるので困ってる。実のところ私、殆ど覚えてないんだ、先輩と喋ったこと。
「ねえ、だからさ予定が無いなら一緒に飲みに行こうよ。二人っきりでさ」
もう落とす気満々で誘ってくるのでウンザリしちゃう。実家は病院でお金持ちだし? 顔はイケメンの部類に入ると思うから、きっと誘われたら喜ぶ子もいると思うんだよね。まあ先輩の自信満々の態度からして私みたいお断りする人間の方が稀有みたいだし、だからこそ変な執着を持ったみたいで毎日のように声をかけられている。
「いえ、お断りします。前回かなり酔っ払ったので今は禁酒中なので」
「だったらお酒抜きで飯でもどう?」
「お断りします~」
講義の合間にも声をかけてくるのでいい加減にウンザリ、誰か何とかして。
せっかく誘ってくれてるんだから行ったら?って要らぬアドバイスをしてくる友達もいるけど私は行きたくない、それだけ。いつもならみゅうさんが追い払ってくるのに今日に限って急なバイトでいないんだよね。困ったなあ。
「なんだよ、あのオッサンに義理立てでもしてんの?」
「松橋先輩には関係ないと思いますよ?」
「なんでだよ、俺が先に奈緒に目をつけたんだぞ」
「私は先輩じゃなくあの人を選んだんです。だからこれ以上ぐちゃぐちゃ言わないでくださいよ」
あまりにしつこくてつい口調がきつくなる。被ってる猫も何処かへ逃げていっちゃうよ。
「ふーん……大人しい顔してるのに行きずりの男と寝るなんて意外だな。しかも週末ずっと一緒だったって? そんな子だったんだ、奈緒って」
なんだかカチンと来ちゃった。そりゃ傍から見たらそうなのかもしれないけど、何も知らない先輩にそんな風に知ったような口をきいて欲しくない。なんだかあの夜のことが汚された気分。
「どうとでも。けど先輩とは行きませんから。私にだって選ぶ権利ってのがあるんですからね」
「なっ」
「よく言ったわ奈緒」
振り返ればみゅうさんが仁王立ちでこちらを見ていた。あれ? みゅうさんバイトだったはずじゃ?
「松橋もいい加減にしなさいよね。この世にはあんたの誘いをほいほい受ける女ばかり存在するわけじゃないのよ」
「……分かったよ、そんな大袈裟に騒ぐことないじゃないか、真田」
松橋先輩はいつもの調子でヘラヘラ笑っていたけどみゅうさんの目はマジだ。
「それと警告。奈緒に関して変な噂を流したら承知しないからね。そんなことしたらアンタ、この世で生きていける場所なくなるわよ。それと医学部の女子、全員を敵に回すことになるんだからね?」
みゅうさん怖いです。この世で生きていける場所がなくなるってどういう意味? 松橋先輩は怖い怖いと引き攣った笑いを浮かべながら教室を出て行った。
「みゅうさん、生きていける場所がなくなるってどういう意味?」
「なおっち、人にはね、知らなくても良いことってあるのよ?」
ひえええええ、怖いよ、みゅうさん。
「あと変な噂って? なにか言われてるんですか私」
「……それも知らなくても良いことだけど、まあそうね、他から耳に入ったら不愉快だから今のうちに教えておくわ。あいつがね、こっちの話を小耳に挟んだらしくて、なおっちは清純派を気取っているけど結構なヤリマンだって話していたのよ。まあ女子は私が根回ししておいたから、ふられた腹いせに有ること無いこと喋っているって反応だけど、男子はね、たまに鵜呑みにする馬鹿がいるから」
腹立たし気にみゅうさんが息を吐く。
「……酷いですね、松橋先輩。そんなこと言いふらす人だとは思わなかったです」
「よっぽどなおっちにふられたのがショックだったのね、あいつ。良い薬だと思うけど」
「でも、みゅうさん根回しって……」
「私の情報網を甘く見ないでよね。医学部は女子が少ないから、その分、結束力は強いのよ、教授や講師を含めて」
それは言えてるかな。うちの大学も女子が増えてきたとは言えまだまだ男子に比べれば少ないし。
「なおっちも馬鹿な男子が何か言ってきたらガツンと言ってやんなさいよ? ま、私に言ってくれればちゃと報復してあげるから、その点は安心してよね」
いや、みゅうさんの報復の方が恐ろしいですよ。一体なにをするのか聞きたいような聞きたくないような。今まで気にしてなかったけど、みゅうさんの実家ってもしかてヤクザさんだった、なんてことだったりしたらどうしよう……。
「あのう、みゅうさんっちってもしかしてヤのつく御商売?」
「え? うちはしがないサラリーマン家庭よ?」
……嘘っぽい。どう見ても嘘っぽい。
その日の夜、お風呂に入ってプクプクと口元まで沈みながら松橋先輩が言ったことを思い起こす。
そりゃ傍から見れば行きずりに見えるかもしれないけど、愛してるって囁いてくれた信吾さんの声にはそれ以上の何かがあったように感じた。生家を追い出されてからずっと一人で暮らしてきたから、ちょっとの間だけでも誰かに甘えたいっていう思いがそんな風に思わせたのかもしれないけど。
「ただの願望なのかなあ……」
信吾さん今なにしてるかな。また愛してるって言いながら抱きしめて欲しいよ。一人で眠るベッドが広すぎるって感じちゃうのはセミダブルに買い換えたせいだけじゃないよね?
そんなブルーが入っちゃった私を元気づけようとみゅうさん達が飲み会に誘ってくれたのはその週末のこと。女子会ということなので出席者は当然のことながら女子ばかり。……のはずだったんだけど。
「なんであんた達がいるのよ」
「え、たまたま店が同じだったんだろ。ここ人気があるし」
みゅうさんと同じゼミの先輩がなにやら揉めている。
「どうしたの?」
「なんだ松橋先輩を含んだ男子のグループとかちあっちゃったみたいでね、みゅうさん怒り心頭なのよ」
「あー……」
そりゃ、みゅうさん怒ると思う。
「私の可愛い後輩のことで根も葉もない噂を撒き散らすような男と同じ店だなんて嫌なのよ!」
「そんなこと言うなよー……俺、今日お前達がここにいる事を知らなかったんだしさあ。あ、奈緒ちゃん、俺達あいつが言ったことなんて爪の先ほども信じてないから。俺達にとっては奈緒ちゃんはいつまでもキャンパスのオアシスだからね!」
「なにどさくさに紛れてふざけたこと言ってるのよ! こっちに来させないようにしてよ、あいつとその関係者」
「分かってるよ。きちんと俺達で見てるから」
まだブツブツ言っているみゅうさんに拝むように頼みこんだ先輩は、こちらに手を振って奥のお座敷席へと消えていった。
「なおっち、トイレに行く時は気をつけないさいよ。何か嫌な事を言われたら直ぐに私達に言うように」
「わかってまーす」
みゅうさんってば実は既に報復行動に出たくて仕方がないんじゃ?なんて思っちゃうよ。とにかく女子会は始まり、教授に対する愚痴や附属病院の方に新しく出入るするようになった製薬会社の営業さんがなかなかの二枚目だとかいう話で盛り上がった。
「ところで、なおっちは結局、どの分野に進むか決めたの?」
「私ですか? 私は普通に内科志望なんですけど先生に“んー、君は雰囲気からして心療内科に合いそうよ”って言われました」
担当教授の口調を真似て答えた。
「確かに話を聞いてくれそうな雰囲気もんね、なおっち」
「外科って感じじゃあないわよね」
「産婦人科ってのもちょっと違うかも」
「一番近いのは小児科? いや、子どもに紛れちゃうかも」
「不定愁訴外来に住んでそう」
住んでそうって皆、言いたい放題だ。見た目とか雰囲気で私の将来を決めないで欲しい。でも不定愁訴外来は興味あるかな……。
「でも心の痛みを緩和するのも大事な仕事ですよね……ちょっと考えてみようかなあ」
「で、厚生労働省のお役人と探偵するのよね」
「それ、違うと思う……」
いろんな話をするうちに気分も晴れてきた。やっぱり女子会に参加して良かった。
「トイレ、いってきますねー。途中で追加注文とかしときましょうか?」
「はいはーい、チューハイの……」
あちらこちらで手が上がったので慌ててメモ書きして、トイレの途中で厨房の方に向かっていた店員さんに追加注文をお願いした。ついでに私もオレンジジュース。今日は前回に気になっていて食べられなかったメニューを制覇中なのだ。
トイレで用を済ませてちょっとお化粧を直して外に出ると腕を掴まれた。松橋先輩だ。
「先輩、えっと、何か……」
「いや、なかなか近寄れないからさ、話せる時に謝っておこうと思って」
「え?」
「あの日さ、真面目に奈緒をくどこうと思ってたんだよ俺。なのに知らないおっさんに鳶に油揚げ状態でさあ。もう悔しくてあの日は悶々としてたわけ」
先輩は肩をちょっとすくめてみせた。
「でさ、週明けてみれば奈緒は御機嫌だし美羽には惚気まくっているしで俺としては面白くなかったわけだよ。んで、つい愚痴混じりに友達に話していくうちに、その、要らんことまで話しちゃったんだ。……ごめん」
「ちゃんと話したことが嘘だってこと、話したお友達に言ってくださいね」
私がそう言うと先輩はもちろんと頷く。
「分かってる。うっかり愚痴った連中にはちゃんと訂正しておいたから。ほんとーにごめん。許してくれる?」
「……分かりました、もう二度としないって約束してくれるなら」
「うん、約束する。また先輩と後輩として仲良くしてくれるかな」
どんなことかは知らないけど、余程みゅうさんの報復が恐ろしいんだと思う。
「分かりました。先輩と後輩として、ですね」
「ありがとう」
ニッコリ笑った先輩が仲直りの握手って言いながら手を差し出してきたので私も手を出した。手を離そうとすると、ぎゅっと握られた。
「先輩?」
「悪口は言わない。けど俺は奈緒を諦めたわけじゃないんだよ?」
「あの……」
グイッと引き寄せられて松橋先輩の腕の中に閉じ込められたと思った瞬間、首にチクリと痛みが走った。
「え……なに?」
「すぐに効くから気を楽にね?」
急に頭がぼやけてくる。何か薬を打たれた? しかも即効性のもの? 先輩は私を引き摺るようにしてお店の裏口から外に出た。
「せ、先輩、離して、くださいっ」
「奈緒の体重がはっきり分からなかったから少なめにしたけど、もうちょっと量を多めにしても良かったね、残念」
裏通りの奥にあるコインパーキングに止めてあるのは先輩がいつも乗ってくる車。どうしよう、連れ込まれたら絶対に逃げられないよ。助けを呼ぼうとするけど舌が張りついたみたいに動かない。一体なんの薬を打たれたんだろ……。
「こんな時でも奈緒の顔はそそるよね。そんな顔してあのおっさんもたらしこんだんだ?」
「なに、いってる、んですかあ……こんなこと、して」
引き摺られていく途中で店裏に積まれたビール瓶のケースに気が付いた。……正当防衛だよね? 死んだりしないよね? そう思いつつ先ずはヒールで先輩のつま先を思いっきり踏んで肘鉄をくらわせる。
「このっ」
「ごめんなさいっ」
手にした瓶を先輩の頭に振り下ろした。頭を抱えてその場に膝をついた隙をついてふらつく足で表通りへと続く路地を進む。後ろで罵り声が聞こえて先輩が何か叫んでる。捕まったら殺されちゃうかな。何とか人通りの多い道へと飛び出した。ボスッと誰かにぶつかったみたいで後ろによろけて倒れそうになる。
「大丈夫かい?」
そんな私を支えてくれたのは何処かで見たことのあるスーツ姿のおじさん。えっと誰だっけ?じゃなくて。
「あの、助けて、ください。くすり、うたれたみたい、で……」
立っていられなくてそのままおじさんの足元に崩れ落ちた。意識を失う寸前に頭に浮かんだのは、あ、この人、国会議員の重光議員さんだ……ってことだった。
―― ずっと消えなければ良いのに…… ――
勉強、頑張れよって言って頭を撫でてくれた彼に、また会える?とも連絡先を教えて?とも言えないまま、ただ頷いてバイバイって手を振ってさよならした。本当にさよならだよね、きっと。二度と会うことはないのかな。あ、お父さんが自衛隊のことをグチグチ責め立てるたびに少しぐらい私のこと思い出してくれるかも。そのぐらい期待しても良いよね?
「はあ……」
「ちょっと、なに溜め息なんてついてんのよ、蹴るわよ?」
「あ、おはよーございます、みゅうさん」
顔を上げればみゅうさんがこちらを見下ろしている。
「何よ、その呆けた顔は。週末はやり過ぎで頭がショートしちゃったとでも言うわけ?」
「えへへ、今朝はホテルから直接ここに来ましたよー。朝のエッチもしっかりしちゃいました~」
「うわっ、なんだかムカつくわ。昼休みにでも話を聞かせなさいよね」
「今からでもいいですよー。もうすっごく濃密な週末でしたあ……ふぁ」
盛大にあくびが出てしまった。そう言えば寝る時間も惜しんで愛し合ってたもんね。信吾さん今日の仕事は大丈夫かな。私の方は今日の講義はまともに出席できそうにないよ。
「まったく、松橋がたいそうご立腹だったそうよ? せっかく自分がお持ち帰りしようと思っていたのに鳶が油揚げかっさらっていった状態だったみたいで。ま、私からしたら、あんなチャラ男になおっちの相手が務まるとは思えなかったけど。で、携帯の番号くらいは交換したの?」
その問いに頭を横に振った。
「実は出張でこっちに出てきていたってことぐらいしか知らないんです。携帯も教えたくなさそうだったし、ちょっと特殊な部隊に所属しているのかもしれないから、しつこく迫るのも悪い気がして。あ、でも私の携帯番号は渡しましたよ?」
みゅうさんは呆れた子ねと言いたげな顔をしている。だってしつこく尋ねたら信吾さんきっと困ったと思うし、そんなことして嫌われたくなかったんだもん。
「もう会えないかもしれないけどそれはそれで良いんです。とっても幸せな週末だったから」
「さりげなく惚気てるんじゃないわよ、腹が立つわね。今日のランチはなおっちの奢りだからね」
「はいはい、分かってますよ。じゃあ、その時に更に惚気てあげますら覚悟しといて下さい」
「……デザートも追加よ」
そんなわけで学食でランチを食べながらみゅうさんに散々惚気話をしたせいで、結局、夕飯も奢らされる羽目になっちゃったけど気晴らしにはちょうど良かったかな。この三日間ずっと信吾さんと二人でいたから、誰もいないマンションに戻るのは何となく気が進まなかったし。
「ただいまー……」
それまで特に寂しいとは思わなかった一人暮らしの部屋が急に物悲しいものに感じた。これも週末の後遺症かなあ、しばらくしたらまた慣れるかな。ホテルに持って行ってた着替えを洗濯機の中に放り込むと、ポットに水を入れてスイッチを入れた。
『見事に何も無いのはどういう訳だ?』
信吾さんはこの部屋を見てそう言ったっけ。
「……色々と揃えてみようかなあ……」
次の休み、友達を誘って家具屋さんに行ってみようかな。ちょっと贅沢して大画面のテレビを買ってみるのも良いかもしれない。あとでネットでどんな家具があるか見てみよう。そんなことを考えていたら少し気が紛れて元気が出てきたのでお風呂の用意をする。そして入ろうとした時に鏡の前で改めてうわあぁとなった。
「信吾さん、ほんとに容赦なくつけてくれちゃって……」
あちらこちらに散らばる紅い痕。中には噛み跡まである。なんでここまで痕をつけることに拘ったんだろう? 私が少しでも信吾さんのことを覚えているようにする為? でもいずれこの痕も綺麗サッパリ消えてしまうだろう。それがとても悲しく感じられた。
+++++
それから二週間。私の体についていた痕がほぼ消えた頃、自宅にはちょっと家具が増えた。
みゅうさんに何気なく相談した結果、みゅうさんお勧めの家具屋さんに引き摺るようにして連れていかれ、あれやこれやの散財三昧というものを初めて経験した。お陰様というか母の保険金やら遺産やら何やらがあったから大学を卒業しても当分の間は食べるのに困らない程度には銀行口座に入っているけど、なんだかちょっと後ろめたいというか何と言うか。
「あの父親からの手切れ金なんてさっさと使っちゃえば良いのよ。そんな胸糞悪いお金はさっさと使って景気回復に貢献しなさいな。それが一番よ」
当たっているようなそうでないようなみゅうさんの持論に乗せられた気がしないでもないけど、お陰で二週間後にはそこそこ今時の女子大生の部屋らしくなった。あ、大型の液晶テレビも加わりました、まだまともにドラマすら見てないけど。
部屋はそれらしく賑やかなことになったけど最近ちょっと困ったことが起きている。自分自身のことが一つと、他の人が関係していることが一つ。
自分自身で困っているのは目が覚め時に無意識に手を伸ばしちゃうこと。自宅に戻ってしばらくはそんなことなかったのにベッドを新しくしたせいかな? 手を伸ばしているはずのない信吾さんを探している自分にウンザリしちゃう。そんなことがあった時は目が覚めてから「女々しいぞ奈緒!!」って活を入れることにしている。
そしてもう一つ。こっちの方が厄介で、それが松橋先輩。お誕生日の飲み会の時に振られたのが気に入らなかったのかやたらと絡んでくるので困ってる。実のところ私、殆ど覚えてないんだ、先輩と喋ったこと。
「ねえ、だからさ予定が無いなら一緒に飲みに行こうよ。二人っきりでさ」
もう落とす気満々で誘ってくるのでウンザリしちゃう。実家は病院でお金持ちだし? 顔はイケメンの部類に入ると思うから、きっと誘われたら喜ぶ子もいると思うんだよね。まあ先輩の自信満々の態度からして私みたいお断りする人間の方が稀有みたいだし、だからこそ変な執着を持ったみたいで毎日のように声をかけられている。
「いえ、お断りします。前回かなり酔っ払ったので今は禁酒中なので」
「だったらお酒抜きで飯でもどう?」
「お断りします~」
講義の合間にも声をかけてくるのでいい加減にウンザリ、誰か何とかして。
せっかく誘ってくれてるんだから行ったら?って要らぬアドバイスをしてくる友達もいるけど私は行きたくない、それだけ。いつもならみゅうさんが追い払ってくるのに今日に限って急なバイトでいないんだよね。困ったなあ。
「なんだよ、あのオッサンに義理立てでもしてんの?」
「松橋先輩には関係ないと思いますよ?」
「なんでだよ、俺が先に奈緒に目をつけたんだぞ」
「私は先輩じゃなくあの人を選んだんです。だからこれ以上ぐちゃぐちゃ言わないでくださいよ」
あまりにしつこくてつい口調がきつくなる。被ってる猫も何処かへ逃げていっちゃうよ。
「ふーん……大人しい顔してるのに行きずりの男と寝るなんて意外だな。しかも週末ずっと一緒だったって? そんな子だったんだ、奈緒って」
なんだかカチンと来ちゃった。そりゃ傍から見たらそうなのかもしれないけど、何も知らない先輩にそんな風に知ったような口をきいて欲しくない。なんだかあの夜のことが汚された気分。
「どうとでも。けど先輩とは行きませんから。私にだって選ぶ権利ってのがあるんですからね」
「なっ」
「よく言ったわ奈緒」
振り返ればみゅうさんが仁王立ちでこちらを見ていた。あれ? みゅうさんバイトだったはずじゃ?
「松橋もいい加減にしなさいよね。この世にはあんたの誘いをほいほい受ける女ばかり存在するわけじゃないのよ」
「……分かったよ、そんな大袈裟に騒ぐことないじゃないか、真田」
松橋先輩はいつもの調子でヘラヘラ笑っていたけどみゅうさんの目はマジだ。
「それと警告。奈緒に関して変な噂を流したら承知しないからね。そんなことしたらアンタ、この世で生きていける場所なくなるわよ。それと医学部の女子、全員を敵に回すことになるんだからね?」
みゅうさん怖いです。この世で生きていける場所がなくなるってどういう意味? 松橋先輩は怖い怖いと引き攣った笑いを浮かべながら教室を出て行った。
「みゅうさん、生きていける場所がなくなるってどういう意味?」
「なおっち、人にはね、知らなくても良いことってあるのよ?」
ひえええええ、怖いよ、みゅうさん。
「あと変な噂って? なにか言われてるんですか私」
「……それも知らなくても良いことだけど、まあそうね、他から耳に入ったら不愉快だから今のうちに教えておくわ。あいつがね、こっちの話を小耳に挟んだらしくて、なおっちは清純派を気取っているけど結構なヤリマンだって話していたのよ。まあ女子は私が根回ししておいたから、ふられた腹いせに有ること無いこと喋っているって反応だけど、男子はね、たまに鵜呑みにする馬鹿がいるから」
腹立たし気にみゅうさんが息を吐く。
「……酷いですね、松橋先輩。そんなこと言いふらす人だとは思わなかったです」
「よっぽどなおっちにふられたのがショックだったのね、あいつ。良い薬だと思うけど」
「でも、みゅうさん根回しって……」
「私の情報網を甘く見ないでよね。医学部は女子が少ないから、その分、結束力は強いのよ、教授や講師を含めて」
それは言えてるかな。うちの大学も女子が増えてきたとは言えまだまだ男子に比べれば少ないし。
「なおっちも馬鹿な男子が何か言ってきたらガツンと言ってやんなさいよ? ま、私に言ってくれればちゃと報復してあげるから、その点は安心してよね」
いや、みゅうさんの報復の方が恐ろしいですよ。一体なにをするのか聞きたいような聞きたくないような。今まで気にしてなかったけど、みゅうさんの実家ってもしかてヤクザさんだった、なんてことだったりしたらどうしよう……。
「あのう、みゅうさんっちってもしかしてヤのつく御商売?」
「え? うちはしがないサラリーマン家庭よ?」
……嘘っぽい。どう見ても嘘っぽい。
その日の夜、お風呂に入ってプクプクと口元まで沈みながら松橋先輩が言ったことを思い起こす。
そりゃ傍から見れば行きずりに見えるかもしれないけど、愛してるって囁いてくれた信吾さんの声にはそれ以上の何かがあったように感じた。生家を追い出されてからずっと一人で暮らしてきたから、ちょっとの間だけでも誰かに甘えたいっていう思いがそんな風に思わせたのかもしれないけど。
「ただの願望なのかなあ……」
信吾さん今なにしてるかな。また愛してるって言いながら抱きしめて欲しいよ。一人で眠るベッドが広すぎるって感じちゃうのはセミダブルに買い換えたせいだけじゃないよね?
そんなブルーが入っちゃった私を元気づけようとみゅうさん達が飲み会に誘ってくれたのはその週末のこと。女子会ということなので出席者は当然のことながら女子ばかり。……のはずだったんだけど。
「なんであんた達がいるのよ」
「え、たまたま店が同じだったんだろ。ここ人気があるし」
みゅうさんと同じゼミの先輩がなにやら揉めている。
「どうしたの?」
「なんだ松橋先輩を含んだ男子のグループとかちあっちゃったみたいでね、みゅうさん怒り心頭なのよ」
「あー……」
そりゃ、みゅうさん怒ると思う。
「私の可愛い後輩のことで根も葉もない噂を撒き散らすような男と同じ店だなんて嫌なのよ!」
「そんなこと言うなよー……俺、今日お前達がここにいる事を知らなかったんだしさあ。あ、奈緒ちゃん、俺達あいつが言ったことなんて爪の先ほども信じてないから。俺達にとっては奈緒ちゃんはいつまでもキャンパスのオアシスだからね!」
「なにどさくさに紛れてふざけたこと言ってるのよ! こっちに来させないようにしてよ、あいつとその関係者」
「分かってるよ。きちんと俺達で見てるから」
まだブツブツ言っているみゅうさんに拝むように頼みこんだ先輩は、こちらに手を振って奥のお座敷席へと消えていった。
「なおっち、トイレに行く時は気をつけないさいよ。何か嫌な事を言われたら直ぐに私達に言うように」
「わかってまーす」
みゅうさんってば実は既に報復行動に出たくて仕方がないんじゃ?なんて思っちゃうよ。とにかく女子会は始まり、教授に対する愚痴や附属病院の方に新しく出入るするようになった製薬会社の営業さんがなかなかの二枚目だとかいう話で盛り上がった。
「ところで、なおっちは結局、どの分野に進むか決めたの?」
「私ですか? 私は普通に内科志望なんですけど先生に“んー、君は雰囲気からして心療内科に合いそうよ”って言われました」
担当教授の口調を真似て答えた。
「確かに話を聞いてくれそうな雰囲気もんね、なおっち」
「外科って感じじゃあないわよね」
「産婦人科ってのもちょっと違うかも」
「一番近いのは小児科? いや、子どもに紛れちゃうかも」
「不定愁訴外来に住んでそう」
住んでそうって皆、言いたい放題だ。見た目とか雰囲気で私の将来を決めないで欲しい。でも不定愁訴外来は興味あるかな……。
「でも心の痛みを緩和するのも大事な仕事ですよね……ちょっと考えてみようかなあ」
「で、厚生労働省のお役人と探偵するのよね」
「それ、違うと思う……」
いろんな話をするうちに気分も晴れてきた。やっぱり女子会に参加して良かった。
「トイレ、いってきますねー。途中で追加注文とかしときましょうか?」
「はいはーい、チューハイの……」
あちらこちらで手が上がったので慌ててメモ書きして、トイレの途中で厨房の方に向かっていた店員さんに追加注文をお願いした。ついでに私もオレンジジュース。今日は前回に気になっていて食べられなかったメニューを制覇中なのだ。
トイレで用を済ませてちょっとお化粧を直して外に出ると腕を掴まれた。松橋先輩だ。
「先輩、えっと、何か……」
「いや、なかなか近寄れないからさ、話せる時に謝っておこうと思って」
「え?」
「あの日さ、真面目に奈緒をくどこうと思ってたんだよ俺。なのに知らないおっさんに鳶に油揚げ状態でさあ。もう悔しくてあの日は悶々としてたわけ」
先輩は肩をちょっとすくめてみせた。
「でさ、週明けてみれば奈緒は御機嫌だし美羽には惚気まくっているしで俺としては面白くなかったわけだよ。んで、つい愚痴混じりに友達に話していくうちに、その、要らんことまで話しちゃったんだ。……ごめん」
「ちゃんと話したことが嘘だってこと、話したお友達に言ってくださいね」
私がそう言うと先輩はもちろんと頷く。
「分かってる。うっかり愚痴った連中にはちゃんと訂正しておいたから。ほんとーにごめん。許してくれる?」
「……分かりました、もう二度としないって約束してくれるなら」
「うん、約束する。また先輩と後輩として仲良くしてくれるかな」
どんなことかは知らないけど、余程みゅうさんの報復が恐ろしいんだと思う。
「分かりました。先輩と後輩として、ですね」
「ありがとう」
ニッコリ笑った先輩が仲直りの握手って言いながら手を差し出してきたので私も手を出した。手を離そうとすると、ぎゅっと握られた。
「先輩?」
「悪口は言わない。けど俺は奈緒を諦めたわけじゃないんだよ?」
「あの……」
グイッと引き寄せられて松橋先輩の腕の中に閉じ込められたと思った瞬間、首にチクリと痛みが走った。
「え……なに?」
「すぐに効くから気を楽にね?」
急に頭がぼやけてくる。何か薬を打たれた? しかも即効性のもの? 先輩は私を引き摺るようにしてお店の裏口から外に出た。
「せ、先輩、離して、くださいっ」
「奈緒の体重がはっきり分からなかったから少なめにしたけど、もうちょっと量を多めにしても良かったね、残念」
裏通りの奥にあるコインパーキングに止めてあるのは先輩がいつも乗ってくる車。どうしよう、連れ込まれたら絶対に逃げられないよ。助けを呼ぼうとするけど舌が張りついたみたいに動かない。一体なんの薬を打たれたんだろ……。
「こんな時でも奈緒の顔はそそるよね。そんな顔してあのおっさんもたらしこんだんだ?」
「なに、いってる、んですかあ……こんなこと、して」
引き摺られていく途中で店裏に積まれたビール瓶のケースに気が付いた。……正当防衛だよね? 死んだりしないよね? そう思いつつ先ずはヒールで先輩のつま先を思いっきり踏んで肘鉄をくらわせる。
「このっ」
「ごめんなさいっ」
手にした瓶を先輩の頭に振り下ろした。頭を抱えてその場に膝をついた隙をついてふらつく足で表通りへと続く路地を進む。後ろで罵り声が聞こえて先輩が何か叫んでる。捕まったら殺されちゃうかな。何とか人通りの多い道へと飛び出した。ボスッと誰かにぶつかったみたいで後ろによろけて倒れそうになる。
「大丈夫かい?」
そんな私を支えてくれたのは何処かで見たことのあるスーツ姿のおじさん。えっと誰だっけ?じゃなくて。
「あの、助けて、ください。くすり、うたれたみたい、で……」
立っていられなくてそのままおじさんの足元に崩れ落ちた。意識を失う寸前に頭に浮かんだのは、あ、この人、国会議員の重光議員さんだ……ってことだった。
63
あなたにおすすめの小説
梅の実と恋の花
鏡野ゆう
恋愛
とある地方都市の市役所出張所に勤めている天森繭子さんちのお隣に引っ越してきたのは診療所に赴任してきたお医者さんでした。
『政治家の嫁は秘書様』の幸太郎先生とさーちゃんの息子、幸斗のお話です。
体育館倉庫での秘密の恋
狭山雪菜
恋愛
真城香苗は、23歳の新入の国語教諭。
赴任した高校で、生活指導もやっている体育教師の坂下夏樹先生と、恋仲になって…
こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載されてます。
貴方の腕に囚われて
鏡野ゆう
恋愛
限られた予算の中で頭を悩ませながら隊員達の為に食事を作るのは、陸上自衛隊駐屯地業務隊の補給科糧食班。
その班員である音無美景は少しばかり変った心意気で入隊した変わり種。そんな彼女の前に現れたのは新しくやってきた新任幹部森永二尉だった。
世界最強の料理人を目指す彼女と、そんな彼女をとっ捕まえたと思った彼のお話。
奈緒と信吾さんの息子、渉君のお話です。さすがカエルの子はカエル?!
※修正中なので、渉君の階級が前後エピソードで違っている箇所があります。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
白衣の下 第一章 悪魔的破天荒な医者と超真面目な女子大生の愛情物語り。先生無茶振りはやめてください‼️
高野マキ
ライト文芸
弟の主治医と女子大生の甘くて切ない愛情物語り。こんなに溺愛する相手にめぐり会う事は二度と無い。
貴方と二人で臨む海
鏡野ゆう
恋愛
防衛省情報本部で勤めている門真汐莉。
どちらかと言えば頭脳労働が得意な彼女が遭遇したのは見るからに頑丈そうなお兄さん。
ちょっと(否かなり)強面な殆ど陸にいる海自男と、ちょっと(否かなり)おっちょこちょいな背広組のお嬢さんのお話。
【東京・横須賀編 完結】【東京・江田島編 GW 完結】
堅物エリートは高嶺の秘書を滾る独占欲で囲い堕とす
濘-NEI-
恋愛
ホテル事業部部長である京哉の秘書を務める陽葉里は、クールで堅物な彼を『観賞用イケメン』と評し、仕事以外で関わることはないと思っていた。しかし、パートナーとして同行したレセプションパーティーで、ひょんなことから一夜を共に過ごしてしまう。必死に忘れようとしていた矢先、京哉が交通事故に巻き込まれ……!? 記憶が混濁した京哉は陽葉里のことを恋人だと思い込み、溺甘に豹変。「ほら、俺が大好きって顔してる」クールな上司の溺愛に蕩かされる、濃密ラブストーリー!
旦那様は秘書じゃない
鏡野ゆう
恋愛
たまに秘書に内緒で息抜きに出掛けると何故か某SPのお兄さんが現れてお説教をしていく日々に三世議員の結花先生は辟易中。
『政治家の嫁は秘書様』の幸太郎先生とさーちゃんの娘、結花のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる