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番外小話 1
【奈緒ちゃん研修中】ヒットポイント0
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「奈緒ちゃん帰還しましたよ~」
インターホンを連打しながらただいまも連呼。しばらくしてドアが開いて信吾さんが顔を出した。
「ただいま、信吾さーん」
「まさか思うが酔っぱらっているのか?」
「飲んでるヒマなんてありませんー。疲れたあ……」
信吾さんの顔を見たら気が抜けちゃってそのまま凭れ掛かる。うーん、相変わらず私の壁さんは頑丈で逞しくて大変宜しいですね。あ、ちなみに一滴も飲んでないから酔っ払いじゃないよ。
「怒涛の一週間は終わったあ。明日は待ちに待ったお休みだよう」
「とにかく入れ。ここで立ったまま寝るな」
「運んでくださーい」
「やれやれまったく……」
信吾さんは私のことを土嚢のように肩に担いで寝室に運んでくれる。普段ならここはお姫様抱っこでしょ?ってぶーたれるんだけど、当直から夜まで寝ずに勤務した私の頭はそこまで言い張るエネルギーは無い、うん、ただいまヒットポイントは限りなくゼロ状態だ。
大学を卒業してから半年。
国家資格は取得して世間からすれば既にお医者さんではあるけれど只今の私は研修医で二年間の研修の真っ只中。つまりは病院でも下っ端、看護師さんより青いお医者さんなりたてのヒヨコさん状態。研修が終わったら新設する不定愁訴外来に配属されることは内定しているけれど、研修期間中はそういうのは関係なくあちらこちらで様々なことを実地で学ぶのね。
当然のことながら一年上のみゅうさんも同じ病院で二年目の研修をしている最中。たまに院内で顔を顔を合わせた時なんかは「頑張れ、生きろ」って励まし合っている……殆ど私が励まされているのが実情だけど。
んで、いま私が学んでいる部署は救急外来。
そう、救急車で患者さんが運び込まれてきて時間との勝負みたいな感じで患者さんの治療処置をするところ。何処の部署に行ってもハードなのは変わらないけど院内でもとにかくきついの一言に尽きるところ。しかもセンター長の先生が超強面で腕は確かなんだけどメチャクチャ怖い人で、何人もの研修医や新人看護師の子達が泣かされているのが目撃されている。
じゃあ私も泣かされているのかって?
それがね、私は平気なんだ。どんな怖い顔で睨まれてもぜーんぜん怖くない。そりゃあ上手く出来なくて叱られる時もあるけどそれは私が未熟なんだし、ちょっとしたミスが患者さんの明暗を分けるんだから厳しくなるのは当然のこと。それに怒鳴りっぱなしでもちゃんとフォローしてくれる良い先生だし?
―― きっと信吾さんや安住さん達も新しく入ってきた隊員さん達にはこんなふうに怒鳴っているのかな~ ――
そんなことを考えちゃうものだから先生の強面を見るたびに変な笑いが込み上げてきちゃって最近じゃちょっと変な子扱い気味なの。
『森永を見ていると何故かうちの嫁を思い出してやりにくい』
『奇遇ですね、私も先生を見ているとうちの旦那様を思い出します、その強面なところが♪ でもやりにくいことはないですよ?』
『…………』
とは言え仕事は超ハードだから毎日が体力値がマイナス状態な日々が続いていて、明日は長い一週間が終わってやっとお休みがもらえる日なのだ。指導医の先生達が若い頃はもっと大変だったって言うんだから信じられない。
「信吾さん、幾らなんでも今からエッチは無理だよう」
ベッドに私のことを座らせると信吾さんはコートを脱がせて次はブラウスのボタンをはずし始めた。
「違う。風呂に入るんだろ? 湯ははってあるから直ぐに入れるぞ」
「お風呂? うん、お風呂入る」
「一人で脱げるのか?」
「そのぐらいできるって。……信吾さんも一緒に入るの?」
「そのつもりだが何か?」
「えっと、無しだからね?」
私の言葉に信吾さんは苦笑いをした。
「いくら俺でもそこまで疲労困憊している奈緒のことを抱こうとは思わないよ。風呂で寝ちまって沈んだら一大事だから一緒に入るだけだ」
「そう? なら一緒にお風呂はいるの許可します」
「ありがたき幸せ」
それから十分後、私は信吾さんに凭れ掛かって湯船につかっていた。
「私、信吾さんと一緒に暮らし始めてから少しは体力ついたと思ってんだけどなあ……」
「ベッドの中での運動だけで体力がつくとは思えないがな。カロリー消費の足しにもならないんだろ?」
信吾さんが笑っている。
「そうなんだけどさあ……」
「なんなら本格的な体力づくりに協力しようか?」
本気なのか冗談なのか分からなくて後ろの信吾さんの顔を見上げる。
「えっとそれってベッドの外でってこと?」
「本格的な体力づくりの為の運動」
「特作仕込みの運動なんてやったらそれだけで動けなくなりそうだけど……」
絶対に体力がつく前に倒れちゃいそうなんだけどな。
「その辺は加減をしてやるから」
「でも研修医は塀を乗り越えたり匍匐前進してズリズリ地面を這ったりするわけじゃないんだよ?」
「効率よく休むのも技術の一つだからな。その辺も含めて俺の知識が役立つんじゃないか?」
「お手柔らかにお願いしますね?」
「任された」
じゃあそれで信吾さんが何もしないまま寝かせてくれたのかって言うと、うん、まあその日の夜はちゃんと寝かせてくれたんだよ。って言うか私が起きていられなかったって言うのが正しいのかな。とにかく目が覚めたら次の日のお昼だったからお昼ご飯も作ってもらってベッドで給仕までしてもらっちゃってちょっとしたお嬢様気分だった。
………… 食べ終わるまでは、なんだけど。
インターホンを連打しながらただいまも連呼。しばらくしてドアが開いて信吾さんが顔を出した。
「ただいま、信吾さーん」
「まさか思うが酔っぱらっているのか?」
「飲んでるヒマなんてありませんー。疲れたあ……」
信吾さんの顔を見たら気が抜けちゃってそのまま凭れ掛かる。うーん、相変わらず私の壁さんは頑丈で逞しくて大変宜しいですね。あ、ちなみに一滴も飲んでないから酔っ払いじゃないよ。
「怒涛の一週間は終わったあ。明日は待ちに待ったお休みだよう」
「とにかく入れ。ここで立ったまま寝るな」
「運んでくださーい」
「やれやれまったく……」
信吾さんは私のことを土嚢のように肩に担いで寝室に運んでくれる。普段ならここはお姫様抱っこでしょ?ってぶーたれるんだけど、当直から夜まで寝ずに勤務した私の頭はそこまで言い張るエネルギーは無い、うん、ただいまヒットポイントは限りなくゼロ状態だ。
大学を卒業してから半年。
国家資格は取得して世間からすれば既にお医者さんではあるけれど只今の私は研修医で二年間の研修の真っ只中。つまりは病院でも下っ端、看護師さんより青いお医者さんなりたてのヒヨコさん状態。研修が終わったら新設する不定愁訴外来に配属されることは内定しているけれど、研修期間中はそういうのは関係なくあちらこちらで様々なことを実地で学ぶのね。
当然のことながら一年上のみゅうさんも同じ病院で二年目の研修をしている最中。たまに院内で顔を顔を合わせた時なんかは「頑張れ、生きろ」って励まし合っている……殆ど私が励まされているのが実情だけど。
んで、いま私が学んでいる部署は救急外来。
そう、救急車で患者さんが運び込まれてきて時間との勝負みたいな感じで患者さんの治療処置をするところ。何処の部署に行ってもハードなのは変わらないけど院内でもとにかくきついの一言に尽きるところ。しかもセンター長の先生が超強面で腕は確かなんだけどメチャクチャ怖い人で、何人もの研修医や新人看護師の子達が泣かされているのが目撃されている。
じゃあ私も泣かされているのかって?
それがね、私は平気なんだ。どんな怖い顔で睨まれてもぜーんぜん怖くない。そりゃあ上手く出来なくて叱られる時もあるけどそれは私が未熟なんだし、ちょっとしたミスが患者さんの明暗を分けるんだから厳しくなるのは当然のこと。それに怒鳴りっぱなしでもちゃんとフォローしてくれる良い先生だし?
―― きっと信吾さんや安住さん達も新しく入ってきた隊員さん達にはこんなふうに怒鳴っているのかな~ ――
そんなことを考えちゃうものだから先生の強面を見るたびに変な笑いが込み上げてきちゃって最近じゃちょっと変な子扱い気味なの。
『森永を見ていると何故かうちの嫁を思い出してやりにくい』
『奇遇ですね、私も先生を見ているとうちの旦那様を思い出します、その強面なところが♪ でもやりにくいことはないですよ?』
『…………』
とは言え仕事は超ハードだから毎日が体力値がマイナス状態な日々が続いていて、明日は長い一週間が終わってやっとお休みがもらえる日なのだ。指導医の先生達が若い頃はもっと大変だったって言うんだから信じられない。
「信吾さん、幾らなんでも今からエッチは無理だよう」
ベッドに私のことを座らせると信吾さんはコートを脱がせて次はブラウスのボタンをはずし始めた。
「違う。風呂に入るんだろ? 湯ははってあるから直ぐに入れるぞ」
「お風呂? うん、お風呂入る」
「一人で脱げるのか?」
「そのぐらいできるって。……信吾さんも一緒に入るの?」
「そのつもりだが何か?」
「えっと、無しだからね?」
私の言葉に信吾さんは苦笑いをした。
「いくら俺でもそこまで疲労困憊している奈緒のことを抱こうとは思わないよ。風呂で寝ちまって沈んだら一大事だから一緒に入るだけだ」
「そう? なら一緒にお風呂はいるの許可します」
「ありがたき幸せ」
それから十分後、私は信吾さんに凭れ掛かって湯船につかっていた。
「私、信吾さんと一緒に暮らし始めてから少しは体力ついたと思ってんだけどなあ……」
「ベッドの中での運動だけで体力がつくとは思えないがな。カロリー消費の足しにもならないんだろ?」
信吾さんが笑っている。
「そうなんだけどさあ……」
「なんなら本格的な体力づくりに協力しようか?」
本気なのか冗談なのか分からなくて後ろの信吾さんの顔を見上げる。
「えっとそれってベッドの外でってこと?」
「本格的な体力づくりの為の運動」
「特作仕込みの運動なんてやったらそれだけで動けなくなりそうだけど……」
絶対に体力がつく前に倒れちゃいそうなんだけどな。
「その辺は加減をしてやるから」
「でも研修医は塀を乗り越えたり匍匐前進してズリズリ地面を這ったりするわけじゃないんだよ?」
「効率よく休むのも技術の一つだからな。その辺も含めて俺の知識が役立つんじゃないか?」
「お手柔らかにお願いしますね?」
「任された」
じゃあそれで信吾さんが何もしないまま寝かせてくれたのかって言うと、うん、まあその日の夜はちゃんと寝かせてくれたんだよ。って言うか私が起きていられなかったって言うのが正しいのかな。とにかく目が覚めたら次の日のお昼だったからお昼ご飯も作ってもらってベッドで給仕までしてもらっちゃってちょっとしたお嬢様気分だった。
………… 食べ終わるまでは、なんだけど。
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