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お題ネタ
in junior high school days ? 中編
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「片倉?」
体育器具庫の前に来た信吾が半開きになっていた器具庫のドアを見て覗き込む。暗い倉庫の中で目を凝らしていると跳び箱の向こう側にモゾモゾと動く両足が覗いていた。
「おい、どうした?」
そう声をかけながら倉庫の中に踏み出したところで背中を誰かに押されて前のめりによろける。そして背後から聞こえたのはドアの閉まる音と鍵がかけられた音。
「?!」
どういうことだ?とドアを開けようとするが開く筈も無く、それよりも返事の無い奈緒のことが心配でそちらへと向かう。跳び箱の向こう側には目隠しをされて何故かリボンでグルグル巻きにされている奈緒が横たわっていた。本人は何とかしようとじたばたしているようなのだが、それが更に事態を悪化させていたようであちらこちらにリボンが絡まっている。
「大丈夫か?」
目隠しを外してもらった奈緒がビックリした顔で信吾を見上げた。
「……あ、森永君?」
「なにしてるんだ、こんなところで」
「なんかね、良く分からないけど変なお面をつけた子達に捕まって、問答無用で目隠しされてグルグル巻きにされちゃったの。で、ここに置いていかれたんだけど……ここ、どこ?」
体をグルグル巻きにしていた赤やピンク色のリボンを外してもらってからキョロキョロとする。
「もしかして体育器具庫?」
「もしかしなくても体育器具庫。しかも外から施錠されて閉じ込められた」
「え?! なんで?」
慌てて立ち上がるとドアの方へ駆け寄り開けようとする。当然のことながら施錠されているのでビクともしない。
「……なんか俺、犯人が分かったような気がする」
「森永君の知り合いなの? なんで私まで?」
「多分、片倉の知り合いも含まれていると思うぞ」
「え? なんで?」
信吾が奈緒が横たわっていた場所の横にあったものを指でさす。そこには何故かペットボトルのお茶とおにぎりとチョコレートが置いてあった。
「あ、私の好きなミルクチョコレートだ。……もしかして、みゅうちゃん?」
「もしかしなくても真田だと思う。たぶん主犯格が真田で共犯が門田と安住あたりかな」
「でも何で?」
「多分、俺と片倉を強制的にでも二人っきりにする為?」
「だからどうしてそんなこと……」
訳が分からず首を傾げる奈緒。
「そりゃ俺のこと、逃げられないようにするためだと思う」
「え……? やだ! 森永君、私が頼んだわけじゃないよ? 私はもうそういうのはお昼休みにやめようって決めたら。それを言おうとしたら森永君がトイレ行っちゃって……」
「そうなのか?」
「うん。だってしつこいの嫌いって言ってたじゃない?」
「それは別に片倉のことを言ったわけじゃないんだけど」
そうなの?と首を傾げながら戻ってきてマットの上にちょこんと座る。
「でも、嫌われたらイヤだしもうやめておく。ごめんね、しつこく追い回しちゃって」
「……別に片倉に追い回されるのが嫌だったわけじゃないんだ」
「そうなの?」
「ああ。どっちかと言えば追い回されて喜んでいたってのが本音だし」
信吾の言葉に頭の上に?を乱舞させている奈緒。
「森永君って……もしかしてMっ気があるとか?」
「そうじゃなくて」
奈緒の横に座ると彼女の方に体を向けた。
「ここだったら変なギャラリーもいないし良かったら聞かせてくれる? 片倉が俺にいつも言いたがっていたこと」
「ここで?!」
「ああ。しばらくは出られそうもないし、時間はたっぷりあるみたいだから」
「え、あの、心の準備が。それにもうやめるって決めたわけだし……」
「いつも言おうとして俺を追いかけてきてたじゃないか。それなのに今さら心の準備が出来てないなんて言い訳が通るとでも?」
そんなの通用しないよ?と言われてちょっと言葉に詰まった。
「だって、もうやめようって決めたのに、いきなり聞かせてって言われても困るよ……」
「あれ、じゃあ片倉、もう俺のことなんて何とも思ってないんだ?」
「そんなことないよ!! だけど」
「だったら言ってくれよ」
「……なんだか森永君、いつもより意地悪だね」
「そうかな」
「そうだよ」
「きっとこんな場所で片倉と一緒だからかな。それに」
そう言って奈緒がグルグル巻きにされていたリボンを目の前でヒラヒラとさせてニッコリと笑う。
「こんな風に好きな女の子がリボンがけされて目の前にいたらさ、やっぱり冷静ではいられないし」
「ねえ、森永君」
「ん?」
「森永君って私のこと好きなの?」
サラリと彼の口から出た言葉を頭の中で反芻しながら相手の顔をジッと見上げる。するといつもぶっきらぼうな表情ばかりしている信吾がとても優しい微笑を浮かべてきた。
「そうだよ」
「だったらどうして逃げ回ってたの? 私がどうして森永君を追い掛け回していたか知ってるんだよね?」
「んー、まあ男のプライドってやつ? 好きな子から告白されるのは嬉しいけど、やっぱり自分から言いたかったってのもあったからかな」
「だったら私の今迄の努力って一体……」
「ごめんごめん。ほら、いつもあいつらと一緒にいるからなかなかタイミングが掴めなくて。下手に何処かで待ち合わせとか言ったら、絶対にあいつらコッソリついてきて盗み聞きするだろ?」
「そうなの……?」
でも何だか私って馬鹿みたいだねと呟く。
「そんなことないよ、すごく嬉しかったんだ。片倉が俺のこと好きになってくれて。だって俺、入学式で片倉に会った時から片倉のことが好きだったから」
つまり好きになったのは俺の方が先なんだよねと悪戯っぽく笑った。
体育器具庫の前に来た信吾が半開きになっていた器具庫のドアを見て覗き込む。暗い倉庫の中で目を凝らしていると跳び箱の向こう側にモゾモゾと動く両足が覗いていた。
「おい、どうした?」
そう声をかけながら倉庫の中に踏み出したところで背中を誰かに押されて前のめりによろける。そして背後から聞こえたのはドアの閉まる音と鍵がかけられた音。
「?!」
どういうことだ?とドアを開けようとするが開く筈も無く、それよりも返事の無い奈緒のことが心配でそちらへと向かう。跳び箱の向こう側には目隠しをされて何故かリボンでグルグル巻きにされている奈緒が横たわっていた。本人は何とかしようとじたばたしているようなのだが、それが更に事態を悪化させていたようであちらこちらにリボンが絡まっている。
「大丈夫か?」
目隠しを外してもらった奈緒がビックリした顔で信吾を見上げた。
「……あ、森永君?」
「なにしてるんだ、こんなところで」
「なんかね、良く分からないけど変なお面をつけた子達に捕まって、問答無用で目隠しされてグルグル巻きにされちゃったの。で、ここに置いていかれたんだけど……ここ、どこ?」
体をグルグル巻きにしていた赤やピンク色のリボンを外してもらってからキョロキョロとする。
「もしかして体育器具庫?」
「もしかしなくても体育器具庫。しかも外から施錠されて閉じ込められた」
「え?! なんで?」
慌てて立ち上がるとドアの方へ駆け寄り開けようとする。当然のことながら施錠されているのでビクともしない。
「……なんか俺、犯人が分かったような気がする」
「森永君の知り合いなの? なんで私まで?」
「多分、片倉の知り合いも含まれていると思うぞ」
「え? なんで?」
信吾が奈緒が横たわっていた場所の横にあったものを指でさす。そこには何故かペットボトルのお茶とおにぎりとチョコレートが置いてあった。
「あ、私の好きなミルクチョコレートだ。……もしかして、みゅうちゃん?」
「もしかしなくても真田だと思う。たぶん主犯格が真田で共犯が門田と安住あたりかな」
「でも何で?」
「多分、俺と片倉を強制的にでも二人っきりにする為?」
「だからどうしてそんなこと……」
訳が分からず首を傾げる奈緒。
「そりゃ俺のこと、逃げられないようにするためだと思う」
「え……? やだ! 森永君、私が頼んだわけじゃないよ? 私はもうそういうのはお昼休みにやめようって決めたら。それを言おうとしたら森永君がトイレ行っちゃって……」
「そうなのか?」
「うん。だってしつこいの嫌いって言ってたじゃない?」
「それは別に片倉のことを言ったわけじゃないんだけど」
そうなの?と首を傾げながら戻ってきてマットの上にちょこんと座る。
「でも、嫌われたらイヤだしもうやめておく。ごめんね、しつこく追い回しちゃって」
「……別に片倉に追い回されるのが嫌だったわけじゃないんだ」
「そうなの?」
「ああ。どっちかと言えば追い回されて喜んでいたってのが本音だし」
信吾の言葉に頭の上に?を乱舞させている奈緒。
「森永君って……もしかしてMっ気があるとか?」
「そうじゃなくて」
奈緒の横に座ると彼女の方に体を向けた。
「ここだったら変なギャラリーもいないし良かったら聞かせてくれる? 片倉が俺にいつも言いたがっていたこと」
「ここで?!」
「ああ。しばらくは出られそうもないし、時間はたっぷりあるみたいだから」
「え、あの、心の準備が。それにもうやめるって決めたわけだし……」
「いつも言おうとして俺を追いかけてきてたじゃないか。それなのに今さら心の準備が出来てないなんて言い訳が通るとでも?」
そんなの通用しないよ?と言われてちょっと言葉に詰まった。
「だって、もうやめようって決めたのに、いきなり聞かせてって言われても困るよ……」
「あれ、じゃあ片倉、もう俺のことなんて何とも思ってないんだ?」
「そんなことないよ!! だけど」
「だったら言ってくれよ」
「……なんだか森永君、いつもより意地悪だね」
「そうかな」
「そうだよ」
「きっとこんな場所で片倉と一緒だからかな。それに」
そう言って奈緒がグルグル巻きにされていたリボンを目の前でヒラヒラとさせてニッコリと笑う。
「こんな風に好きな女の子がリボンがけされて目の前にいたらさ、やっぱり冷静ではいられないし」
「ねえ、森永君」
「ん?」
「森永君って私のこと好きなの?」
サラリと彼の口から出た言葉を頭の中で反芻しながら相手の顔をジッと見上げる。するといつもぶっきらぼうな表情ばかりしている信吾がとても優しい微笑を浮かべてきた。
「そうだよ」
「だったらどうして逃げ回ってたの? 私がどうして森永君を追い掛け回していたか知ってるんだよね?」
「んー、まあ男のプライドってやつ? 好きな子から告白されるのは嬉しいけど、やっぱり自分から言いたかったってのもあったからかな」
「だったら私の今迄の努力って一体……」
「ごめんごめん。ほら、いつもあいつらと一緒にいるからなかなかタイミングが掴めなくて。下手に何処かで待ち合わせとか言ったら、絶対にあいつらコッソリついてきて盗み聞きするだろ?」
「そうなの……?」
でも何だか私って馬鹿みたいだねと呟く。
「そんなことないよ、すごく嬉しかったんだ。片倉が俺のこと好きになってくれて。だって俺、入学式で片倉に会った時から片倉のことが好きだったから」
つまり好きになったのは俺の方が先なんだよねと悪戯っぽく笑った。
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