もう一度、私に恋させて!

かわた

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06:ピアスがきれいだね

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魔がいるからといって探すために学校をやめるわけにもいかないので
とりあえずは学校へ行き、魔が出たらセフィラから連絡をもらうことになった。

連絡の方法としては携帯などセフィラが使えるはずもなく
前の世界でテレパシーができるよう魔法をかけあっていたので問題はなかった。
連絡したいときに呪文を唱え相手の魔方陣を指で描いたら相手の脳内に直接つながる仕様だ。

そういえばこれでよく仲間の魔法使いに思いついたダジャレを伝えられてたっけ。

人のいない朝の廊下を足音を軽くたてて希樹は歩く。
いつもより早い通学の理由は日直の当番をこなすためだ。
一緒に当番のはずの子は部活で朝練習があるようで代わりに放課後は用事はすべて任せることにしている。

細長い花瓶を軽く洗ってカルキ臭い水をいれる
気温が高くなってきたからか、手が濡れた感触を好ましく思いながらポケットにいれたハンカチで手をぬぐう。

希樹の住んでいる場所は都会とはいえないけれど、前の世界に比べて空気が臭く感じるが
朝の学校は空気が良く澄んでいて向こうの世界を思い出す。


「君が立花希樹たちばな いつき~?」

そんな静かな場所を堪能していたが、その場に不似合いな明るい男の声が響く。
甘さが響いたような美しい声だけれど、どことなく軽率そうな印象を抱かせる声でもある。

「はい、何かご用ですか?」

のんびりと希樹は言葉を返しつつ振り返る

紫がかった黒髪に右側の前髪だけ長く伸ばしたアシンメトリーの髪型
長いほうの前髪は人房ショッキングピンクに染まっているのがパンクな印象になっている。
タレ目でどことなく、スレている感じがどこか色っぽい。
ピアスや大きく空いた胸元にネックレスなど付けているところをみえると真面目ではなさそうだ。

「君、留香とどういう関係~?
この間みちゃったんだよねぇ~君が留香の家からで・て・く・るとこ♥」

顔をぐっと近づかされ、無意識に顔を凝視してしまう。
笑った口からは控えめに八重歯がみえ、少し視線をずらすと左耳のピアスがキラリと光ったように感じた。

美しいピアスだ。
いや、ただしくは美しい宝石だ。
小さい一粒の宝石だが、深い青緑色が冷たく煌いて
その輝きがあまりにも儚い美を持っていて思わずごくりと喉がなる。

それを誤魔化すように咳ばらいをして話を続けた。

「留香くんとはただ家が近いだけですよ
あの時も母親からのおみやげを渡しにいっただけです。」

希樹が焦ることもなく穏やかにいったからか
少しの間ときょとんとした顔して、すぐにニヤリと笑う。

「本当かなぁ~?」

首を大げさに傾げつつ聞かれるが
疚しいことはないが少し恥ずかしいことがあったからか余計に顔を作り笑顔で答える。

「本当だよ」

そういうとその男の子は顎に手を当てて、唇をつんっと尖らせて考える素振りをした。
そして、小さくそっかぁと一人解決したようで頷いている。

「そうかな?…そうかもね?…そうだよね~!!
君みたいな子と留香が仲いいとかちょっと想像つかないし♥
あ、別に悪い意味じゃないけどぉ?でも、わかるよねぇ?」

住む世界がちがうっていうかさ

と甘さと爽やかさの含む声で、さらりと言った。
多分悪意はない、彼自身はそういう価値観で生きているだけであってそこに嘘や悪意はない。
希樹も別段気にした様子もないが、それに同意することなく困ったように微笑んだのみだった。

「やっと留香の弱点みつけたと思ったんだけどなぁ~★」

詰まらなさそうに髪をかきあげてブーブーという彼に希樹は本当に面白くて笑うと
彼は、はた、と彼女を見つめて、面白そうに笑みを浮かべた。

「君、笑ってると可愛いーじゃん♪」

左耳のピアスが一瞬赤く煌いたように感じたけれど
気のせいだろうと希樹は目線をそらした。


◇◆◇



「あれは2年の 西鳥羽 薫にしとば かおる 先輩だよ」

お昼休み、教室でお弁当を出そうと鞄に手をかけたところで
朝のチャラい人ピアスの人が外で女性を連れて歩いているのを見かけた。
希樹は少し気になり、友達2人に知っている?と気まぐれに尋ねたところ驚いたように希樹に返事をした。

驚く理由が理解できず、首を傾げて聞き返す。

「その人そんなに有名なの?」

たしかに目立ちそうな人だとは思ったがそんなに有名な人のだろうか?とお弁当を取り出しつつ問うと
2人は顔を見合わせると、少し呆れたように希樹に視線を戻した。

「あんた、本当に留香くんしか眼中になかったんだね」
「希樹ちゃんらしいといえばらしいけど」
「え!そんな有名なの??」

お弁当を食べるのをやめ、恐る恐る2人を見る。

「うちの学校には、飛び抜けて顔が良いやつが何人かいるからな。
留香くんもその1人、ほら、ファンクラブあったろ?あんたも入ってたけど抜けがけダメだって聞いてやめたやつ」

「あ、うん」

なんだか黒歴史をほじくり返された気分になり微妙な顔を浮かべそうになったが真顔でなんとか乗り切った。

「他にもファンクラブがある奴らがいるんだよ。
つまり、西鳥羽先輩もその1人ってね」

「へぇ、そうなんだぁ」

聞いては見たが最初からそこまで興味はなかったので
返事もそこそこにお弁当箱の蓋を開けることに専念することにした。

コーラルピンクの小ぶりのお弁当箱にからあげが3つ、ブロッコリー、プチトマト、卵焼き
ご飯は半分敷き詰められてゴマ塩と自家製のカリカリ梅……。
悩むけれどまず最初は野菜から、と希樹はブロッコリーから箸を伸ばす。

「そういえばもうすぐマラソン大会だよね」

「来週だっけ?」

ブロッコリーをもぐもぐと食べながら2人の会話を聞く。
マラソン大会は午後の半日を使って学校の周りを走るイベントで
だいたいの生徒はだらだらと歩いて時間を潰す。
2人に合わせてしゃべりながら歩くのも楽しそうだなぁとのんびり思っていると

「たしか成績に関係あるんだよな、順位」
「へぇ~、まぁ体育くらいなら落としてもいいかな
…あれ?希樹ちゃん?」

希樹は箸をぎゅっと握りしめ、悔しそうな表情を浮かべて2人にいう。

「体育…せめて体育くらいは成績をよくしたい…!」

正直他科目の成績は地を這っている嫌な自信がある希樹は
せめて体育だけは頑張ろうと心に決めた。

2人はそんな希樹の様子と学力を思い出し、しょうがないという表情を浮かべて
肩をぽんぽんと叩いてくれたのだった。
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