【R18】兄弟の時間【BL】

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君に

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 何をどう安心させろと言うのだよ、あの変態眼鏡め!

 兄ちゃんだぞ!
 家族だぞ!
 男だぞ!

 ああ、もう何だよ!
 口ん中超ガチガチ言ってる。

 豹の姿が消えて食パン殴りまくりだ!
 食パンソファーは一人用だが大きいので横になって丸まれば体が収まる大きさだったクソ、クソ、クソ!

 ああゆうのした事なかったから、ちょっとチンコ硬くなってる気がするしヤダヤダ!

 好きとか、そうゆうのはもうわからん。
 わからんが舌擦れたら背中がゾクゾクして勝手に顎が開いてた。
 そんで下半身に血が集結してた。


 体丸めて携帯握ったらいつもの声が聞けて、

「父上~ッ! 父上ッ!! 僕頑張って弟のお家まで来たんだよ! 追い掛けてくんないんだからばかぁ! 僕が嫌いになった?」
【けがはしてない?】

 何だかこっちが安心してしまった。


 心配しなくていいよって伝えて電話を切ったら目元にティッシュを押し付けられて、え? 僕泣いてた?
 見上げたら銀髪のイケメンが何かちょっと申し訳なさそうに笑ってる。


「お疲れ様です、お風呂に入ったら今日はゆっくり寝て下さい」
「ん? うん」
「夕飯は? 食べました?」
「うん、鳥の照り焼きだった」
「ああ、お母さんの作る照り焼き美味しいですよね」
「うん」
「疲れただろうからベッドで寝て下さいね、俺はソファーで寝ますから」
「…………うん」

 きっと、いや僕がソファーで寝るよ! みたいなゴタゴタが定番ネタなんだろうけど、それやってじゃぁ一緒に寝ましょう! みたいな謎の解決策提案されると困るから僕は了承しておいた。

 豹は食パンの空いてるスペースに肘ついて丸まってる僕の背中を優しくポンポンしてきた。
 さっきのアレは何だよ! とか聞くの怖くてチキン大五郎な僕は黙って大きな手から響くリズムに心音を共鳴させて時間が過ぎるのを待った。
 豹も何も言ってこなかった。

 やっとゆっくりとした時間がきたなって安心したのも束の間、お風呂が沸いたチャイムが鳴ったらヤツの手がするりとシャツの下に入ってきて。

「あっ、何だよ」
「脱がせてあげようと思って」
「自分で脱げるよ! バカじゃないの」

 起き上がって睨んだら、ストーカーブラザーはにやってしてる。
 家に入った時に風呂の場所は教えてもらったから、弟を押し返してそそくさとそっちに行った、バンッとドアを開けてんんんん!

 そうだよね、あるあるある!
 オシャンティなマンションによくあるよね、こうゆう脱衣所と風呂場の仕切り壁がガラスのとこ。

 何のためにガラスなんだよ壁でいいだろ。
 誰か来たらどうしようって落ち着かないんだけど、まぁ下半身はさっきの弟ポンポンで落ち着いたから今日はもうちゃちゃっと風呂済ませてさっさと寝よう!

 シャワーで体を流したら、あら何コレどれで洗ったらいいの。
 ずらっとシャンプーやらボディーソープが置いてあって…………そっかあんなイケメンなんだから女の子お持ち帰りしまくりだよな。
 これはその女子達が使ってるコスメ的な物なのか?
 アラサーニートのおっさんが使っていいのかな。

「彼氏に使ってもらいたいナンバーワンボディソープです」
「ヒィイ!!」

 ビタッとガラスに豹が張り付いてて心臓止まっちゃうからもぉおお!!

「隣のは彼氏に使ってもらいたいナンバーワンシャンプー」
「ああ、そう」
「ピンクのは逆に、彼女に使ってもらいたいナンバーワンシャンプー……」
「へぇ」
「安心して下さい兄さんのために買いました」
「ぽっ、じゃねぇよ頬染めてないであっちいけ」

 シャワーでガラスにお湯かけたら弟はタオルと服ここに置いておきますねってガラスにちゅってして出ていった。

 クッソ! どっち使うか迷うだろ! 余計な事言いやがってお節介さんめ!
 っつーかいつ買ったんだよ、僕が来るの前提で事前準備って事?
 あいつ頭大丈夫?

 で、風呂上がってお水飲みたいのと携帯取りに食パンの前に戻ったら。

「うっひょーッ!! 彼シャツ! 彼シャツゥウ~ッ!!!」
「おい豹、水!!」

 っと豹が携帯構えてて部屋入った瞬間僕を撮りまくってきた。

 タクシーの中で見たのか、脱衣所には持ってきた僕の下着が置いてあって、それとティーシャツが一枚。
 着てみたらすげーでかくて尻まで隠れるんだけど、どー見たってこれお前が着たってでかいだろ!

「お前身長いくつあるの」
「181です。兄さんは168ですよね可愛い」
「可愛いくないし、日本人の平均だし何だよこの兄弟格差は」
「第二次成長期に限らず常に規則正しい生活を心掛けバランスよく栄養を摂取し運動をしたら飛躍的に身長が伸びました」
「そうですか良かったですね、じゃ僕寝るから」
「怒ってるの? 身長コンプレックスだったの兄さん」
「別に」
「頭乾かさないんですか?」

 はぁ? そんなのほっときゃ乾くし、とピッチャーに入ってた水をジャブジャブとコップに注いで豪快に傾けてたら豹は髪を乾かしてくれた。

「熱いし」
「ごめんなさい」





 "アッチ! 熱いよ兄ちゃん"
 "あ、わりぃ"




 思い出す必要なんてなかったのに、昔豹の髪を乾かしてやってた時の事思い出して、飲み込むつもりだった水が口に戻ってきた。


「俺の……」
「ん?」
「髪、乾かして寝ないと朝爆発しちゃうから、風呂上がりはいつも兄さんが乾かしてくれてましたよね」
「…………そーだっけ、覚えてない」
「俺は覚えてますよ」

 少ししたら冷たい風が当たって気持ち良かった。

「きゅーてくるによくないから最後は冷てー風にすんだって、って乾かした後必ず冷風当ててくれてたの。今思えば凄い女子力高くないですか兄さん」
「だから覚えてねぇっつってんだろ」
「はい、終わりましたよ鷹子ちゃん、リンスもしたんですねサラサラ羨ましいです俺クリクリなので」

 ドライヤーのせいで部屋中に女子のシャンプーの香りが舞って、やっぱり彼氏にしとけば良かったぁあ!

 恥ずかしくなって急いで食パンの上に置かれた携帯を取ろうとしたら、ソファーには豹が寝る用なのか膝掛けと小さな枕が置いてあった。
 それと豹のぬいぐるみ……。

「何お前、良い年してぬいぐるみなんて抱いて寝てるの」
「はい、いつも一緒です」
「そんなんじゃいつになっても彼女できねーぞ」
「そうですね」

 豹は終始表情を崩さず笑って答えてきて、ふんっと背中を向けてこっちが寝室ですって教えてもらった部屋に入った。

 ドア閉めて寄り掛かって、部屋の中は真っ暗でベランダから月明かりが入ってくる。
 三十階の部屋、空には少し星が見えた。
 モデルルームみたいに整えられたベッドに枕の横にはリュックに入れておいたはずの鷹のぬいぐるみが頼んでもないのに置いてあった。

「マジ余計な事しかしねぇなアイツ」





 小学生だった頃、二人で動物園に行ってパパとママにお土産を買おうってなったんだけど、偶然鷹と豹のぬいぐるみを見付けてしまって二人ではしゃいだ。
 買おうってなってレジに持ってったのは僕が豹で弟は鷹のぬいぐるみだった。

 互いのを買うだなんて言って訳じゃないのに、僕達は示し合わせたかのように相手の人形を手にしていた。


 嬉しかったんだ、ライオンとか虎の人形はあるけど豹の人形ってあまり見掛けないから嬉しかった。
 僕がまず手に取ったのはそれだった。

 少ししたら、後ろから声がして兄ちゃん兄ちゃんって興奮した様子で豹が鳥の人形を持ってきた。

 "まさかのクマタカ、森の王者がいたよ!"って豹はにこにこしてた。

 プレゼントの中身なんて互いにわかってるのに、綺麗にラッピングされた人形を持って帰りの電車はワクワクした。
 家について両親の前で格好良いだろうって豹の人形を見せたら、弟は負けじとこっちのが格好良いと鷹の人形を掲げた。

 一通り自慢し合って、がうって豹の腹に人形を噛み付かせたら鷹は空を舞って僕の頭に止まった。
 二人で笑ってありがとうって言ったんだ。


 それが僕が初めて人に買って送ったプレゼントで僕が初めて人に買って貰ったプレゼントでもあった。


「兄さん」
「あ?」
「おやすみなさい」
「うん、おやすみ」


 寄り掛かったドア、背中から声がした。

 カツっと乾いた音が響いた。
 多分、豹がぬいぐるみを持ってて鼻のプラスチックがドアに当たったんだと思う。


 ごめん、そんな事どうでもいいよな。
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