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二人の時間
待ってたよ
しおりを挟む何が資金集めだよ。
この半年間、僕が何をしてたか聞きたいか?
えっとね、ああ生まれて初めて年号が変わるなあ、もう直ぐオリンピックだなあ、豹だったらどんな種目出れたかなあ、等々そういうの考えてたら半年が過ぎてた(真顔)。
だって常に大好きな人と一緒にいて、離れてる時は色々考えながら家事してると一日なんてあっちゅー間なんだよ!
ちなみに、パパとママに会ったら、働いてる病院のヘルパーさんしないかだの塾の事務員さんやらないかだの言われちゃって、えー僕はそーゆんじゃなくて、もっとくくりえいてぃぶな仕事がいい! って言い返したら仕事を選べる立場かな? と歯ギリギリされてしまった。
「お前、この時期虫でも一生懸命働いてるのに……」なんて学校の先生みたいな事言うから、そうか僕は今、蛹だったんだ!
と新たな発見だよ! 「僕、この殻を脱いだら凄い美しい蝶になるんだって」って隣にいた弟に言えば「兄さんブラボー」って拍手してくれた。
が、全く生産性のなかった日々を過ごしていた訳じゃない、あのねえ。
こないだ豹君がついに仕方ないですねえって眼鏡直しながら、おねだりしてたブツを買ってくれたのだ。
ずっと欲しかった
ホームベーカリー……!!
し か も 5 万 も す る や つ!!!!
ジャムまで作れるんだぞ!! めっちゃ多機能! 他にもバターもヨーグルトも麺類にお餅だって!!
あんまりにも嬉しくて……っつかそもそもプレゼントなんてろくに貰った経験ないから、嬉しいってばれたくないのに、感情が抑えきれなくて抱っこしながら寝てしまった。
ニートの癖にホームベーカリー? なんて思うなかれ!
だってパンちゃんのパンってしたかったんだもん!
一から練って発酵させて豹の形作って焼いて、デコってお口のあーんってするヤツね、それはもう200回位したんだよ。
そしたらもっとこうあれもこれもやりたくなってしまってだな。
豹君いっぱい食べてくれるから朝から焼き立てのパンでサンドイッチとか作ってあげたいじゃん?
僕がうどん汗かきながら練って、額を拭いてくれてるのも中々良かったんだけど、豹君曰く
「兄さん何にでも凝り過ぎだから、心がこもった料理は美味しいし嬉しいけど、もっと弟かまって下さい」
っていじけちゃって、でも僕も譲れないものがあって首を横に振る。
「いやいや、次の発酵がきちんとできてるか見届けるまでここから動かないから」
「寂しいですこっち来て下さい」
「ダメだな、職人が自分の信念を曲げた時、それは人生が終わりを意味するから、僕はこの小麦の一粒一粒と呼吸を交わし、ここだと言う瞬間が感覚で分かるまでの匠の域に達したんだよ。それがこ」
「職人ってなんですかにい兄さんニートでしょ」
「うるさいな」
そんな会話しながらキッチンで腕組んでたら、次の日ホームベーカリー買ってくれた。
手作り料理のレパートリーが増えまくって、インスタのフォロワーも増えましたね、はい。
で、そんなことはいいんだよ!
たくさんの愛は生み出せたけど、一銭にもなってねえなヲイ!! って話なんですよ、これじゃ豹にプレゼントできないい。
だが、しかしBad、もう本当に働き方とかわからないんだよね、一億総活躍社会だっけ、あれでしょその中に僕入ってないよね、入れなくていいからね、よかったよかった。
な ん て! 胸撫で下してる場合じゃねえな! チマチマ降ろしていた僕のお年玉貯金がそろそろ底をつきそうなんだよ、それでどうなったかと言えば……。
僕はまた、何か月かぶりに秋葉原の雑居ビルの前に立っていた。
だってさあ、また登録制のバイト探すのも億劫だし、今時ってアルバイトでも難しかったりするじゃん?
しかもちょっと間違えただけでも、土下座要求されたり、俺が変な動きしたら勝手に加工されてつぶやかれてしまったりするんだろ。
恐くて初めてのとこいけないぃい!!
ので、大親友(僕が思ってるだけ)の熊ちゃんに連絡してみたのだ。
え、誰だっけ? じゃねえよ、あの! デバッグ会社のぽっちゃりした友達ぃ!!
でもって、結局すげえ緊張してる、だって実際働いたの二日だけだったし、その次は「俺が連絡しておいたんで行かなくて大丈夫ですよ」って豹に言われて、そのまま音信不通だったから。
ボロいドアの前に立って、震えるな指先いぃ! って汗ばみながらインターホン押そうとしたら、ガチャって勝手にあいて。
「あ、鷹……やっぱりいた」
「…………ん?」
それは、いつぞや聞いた事のある声で、見上げた半眼の青い瞳……にそれを隠しそうな長めの金髪。
「華ちゃ」
「待っていたでござるよぉおおおお! 信長(ハンドルネーム)殿ぉ!」
華ちゃんの名前を呼ぶ前に、ずいっと前に出てきて抱き上げられて、おおおおおこの声はワサビ氏(ハンドルネーム)なんだけど。
え?!! 待って、えええええ?!!!!
僕の体を包み込む筋肉隆々な肉体に目を開いてしまった。
「うぇ?!! おい、え? 待って熊ちゃん?!! お前熊ちゃんなのか!!?」
「左様」
「左様って……」
声も出ないよ、だってティーシャツから覗く逞しい腕は、昔の真っ白でプニプニしてた豚足じゃない、日に焼けた小麦色で脂肪じゃなくて上腕二頭筋たっぷりなんだ……バランスを崩しそうになって、いつも豹に抱っこされてる癖で腰に足を巻き付ければがっしりした下半身が、昔のリラックマ体系ではなくなってる。
至近距離で目が合って、赤茶の色素の薄い髪はそのままに、顔だけシュッとしたイケメンになってる……!!
「ず、ずるいよ!!! お前いつライザップしたんだよ! ずっとブゥーチッブゥーチッ♪ ブゥーチッブゥーチッ♪ だったじゃん!」
「ペーペケッペッペペ-ペーペペ♪ ペーペケッペッペペ-ペーペペ♪」
「うるさいよ華ちゃん、お前も笑顔で回らなくていいから!!!」
勝手にコミットして回転してくるからジタバタしたら降ろしてくれて、二人を目の前にヨロヨロ後退してしまった……。
だって、ヤンキーだった華ちゃんちょっと見た目お兄さんっぽくなってるし、熊ちゃんも小麦色の細マッチョな爽やかイケメンになってるし。
「帰る!!」
「待ってくれたまえよぉ~だって信長殿の弟君から【金輪際うちの兄に関わらないで下さい。分かったかこの豚野郎】って急に連絡きて、もう会えないのかと思ってたら食事も喉を通らなくてさ……会社で倒れた拙者を助けてくれたのが、華狼殿だったのよ。肥満体で膝にも悪そうだし、鷹が帰ってきた時の為にも健康になって待っていましょうってジム誘ってくれて……」
「室長に辞められたら困るんでね。ここで働いてればいつか鷹が戻ってきてくれるってオレ信じてたから」
「華ちゃん……」
離れていく体を抱き寄せられて、ああ、そうだった華ちゃんってこんな匂いだったなってちょっと懐かしい。
「荷物、まだオレんちにあるよ。あの時のまま何も弄ってない」
「うん」
「いや、自慰はした」
「うん聞いてない」
「必ず会えると思ってた、三度目の正直、運命以外にない」
「某も、ここまで息が詰まる思いは初めてで、ああこれが恋心かと深く胸に刻み込んだ所存」
「?!!!」
華ちゃん頭に勝手にちゅっちゅしてくる隣で、アレ? 熊茂君が変な事言ったな?? 言ったよな?!
大きな二人に囲まれて、ちょっと動悸が激しいんですけど!! だって僕また少し小銭を稼ぎにきただけなのに!!
「安心して、オレも熊も挿れたいタイプの輩だから、皆で鷹を愛してあげられるよ」
「何を安心?」
「ささ、立ち話もアレですし、また仲良くお仕事といきませう」
肩を抱かれて部屋に連れてかれて、ああ、ちょっと待ってボク豹にプレゼント買いたくてバイト来ただけなんだけど、大丈夫かな。
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