【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)

文字の大きさ
26 / 96
三章 依頼

第二十六話

しおりを挟む
 次の日の朝、再び領主邸に向かった。
 途中でフィルさんと合流し、向かっている途中では魔導具の話をした。
 オブを小さくするにはやはり昨日調べた魔法で当たっていたようだ。でもルナの服はどう聞いたらいいのやら。

「あの~、狼のほうなんですけど、人間化出来るらしいんです。それでその……」
「人間化!?」

 フィルさんは驚きの顔を隠せない。

「はい。それで人間化すると裸なんですよ……魔導具で服を装備出来るらしいと聞いたんで、狼にはその魔導具をお願いしたくて……」

 裸、の言葉だけ小さくなってしまった。いやだってね、恥ずかしいでしょ、やっぱり。

「はぁあ、人間化する魔獣かぁ、初めて聞いたよ。人間化したり、人語を喋ったり、攻撃魔法を使ったり……他にも色々出来そうだね、その魔獣。何か凄い魔獣と契約したもんだね。ユウはやっぱり凄いよ」

 感心したような呆れたような微妙な顔のフィルさんだった。

「その魔導具についてはまた後で話そう」

 領主邸に着いた。約束はしていないが、門で名前を告げると邸へと案内してくれた。
 そして以前と同じ部屋へと案内される。

「すいません、アウグスト様がお目見えになるまでこちらでお待ちください」

 そう言うと執事さんはお茶を出してくれた。
 しばらくするとアウグストさんがやって来た。

「お待たせしてすいません」

 お互いに挨拶をし話を進める。
 そして昨夜みんなに説明したときと同じように、あったことを全て報告した。

「え、それはもう解決ということですか!?」
「はい。怪我をしていたドラゴンも治し、他の動物たちも魔獣も移動させたので、もう今まで通りに通行出来るはずです」
「そうですか! 素晴らしい! 調査どころではなく、こんなに早く解決までしてくださるとは」

 信じられない、といった顔だ。

「それでドラゴンの件なのですが、このまま私の従属魔獣として一緒にいても良いでしょうか?」
「もちろん構いませんよ! そのドラゴンが襲われないように守ってあげてください」

 ニッコリとアウグストさんは微笑んだ。

「ありがとうございます」

 フィルさんと顔を見合わせて喜んだ。

「こちらこそお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」

 アウグストさんは立ち上がり深々とお辞儀をした。綺麗な金髪がさらさらと流れる。

「頭を上げてください!」

 呆然としてしまったが慌てて言った。

「ありがとう」

 そう言うアウグストさんの笑顔は本当に綺麗で心臓が高鳴る。というか、この世界の人、綺麗な人が多すぎて心臓に悪い! 人じゃないのもいたけど。

 成功報酬を、とアウグストさんからとんでもない金額を渡され固まっていると、フィルさんが受け取っておけ、と耳打ちした。
 うーん、こんな大金どうしたら良いのやら。
 仕方がなく言われるがままに受け取りお礼を言った。

「また何かあればお願いしますね」

 と、また美しい笑顔で言われてタジタジになり、領主邸を後にした。
 何か疲れた。

「さて、ユウ、さっき話してた魔導具だが、俺にも上手くいくかは分からない。方法は聞いたことがあるが、実際作ってみたことも作ってあるのも見たことがないから」
「そうなんですか?」
「うん。だって今までそんな魔獣と契約した人なんて見たことないしね。ディルアスもドラゴンだけだし。だから方法は教えてあげられるけど、後はユウ次第かな」

 えー! となったが、作ったことがないのなら仕方ない。上手く出来なかったら人間化は諦めて、ずっと仔犬もふもふバージョンでいてもらおう! うん、それも良いかも! ちょっとニヤリとした。

 フィルさんの魔導具屋に着いて、まずはドラゴンの小型化魔導具。

「ドラゴンを小さくする魔導具も俺には附与出来ないからユウが頑張って」
「はぁい」

 銀色の腕輪らしきものが二つ目の前に置かれた。それと赤い宝石と青い宝石。

「赤い石をドラゴンに、青い石を狼に使うと良い。腕輪は身体の形に合わせて伸縮する魔力をかけているから大きさは心配しなくて良い」

 腕輪を持ちながら説明してくれた。
 へー、伸縮するんだ、便利!

「ドラゴンを小さくする魔石には契約を結んだときの魔力と同じものを附与させるんだ」

 同じもの、同じもの……、ドラゴンと契約したときのことを思い出し、赤い宝石に魔力を照射する。
 赤い宝石は眩い光を発して消えた。

「うん、成功したんじゃないかな。後はドラゴンに腕輪を付けてから小さくなるよう命じてみて。そして、次は……」

 青い宝石。ルナの魔導具。

「こっちはねぇ。俺にもよく分からないんだよねぇ。イメージの力らしいんだ」
「イメージ?」
「うん。人間化じゃなくても魔獣が何かに変化したときに、その変化に合わせて装備を変えられるっていう魔導具らしいんだけど、主人である契約者のイメージを魔力として魔石に閉じ込めて、変化するときにその場に相応しいものを選んで反応するようになるらしいんだ」
「うーんと、じゃあ私がルナに着せたい服をイメージして魔石に附与したら良いってことかな?」
「たぶんね」

 フィルさんもやったことがないから何とも、という感じだ。

 とりあえず考えてみる。
 着せたい服か……どんなだろ。見た目があれだからなぁ…色っぽいの? 格好良いの? 騎士風? 平民風? 何て呑気なことを考えていると、

『動きやすい服で頼むぞ、ユウ』
「うわっ」

 びっくりした、いきなりルナから声がかかり、考えていたことを聞かれていたのかと思った。

「いきなり話し掛けないでよ、びっくりした」
『すまん。しかしユウが何やら変なことを考えている気がしてな』

 ギクッとした。バレた? いやまさか。

「いやいや、大丈夫! ちゃんとしたので作るよ!」
『頼んだぞ』
「はーい」

 大人しく普通のにしとこう……。でも着る中身があれだしなぁ。あまり普通でも違和感ありありになりそうな。
 ちょっとだけ騎士風にしてみよう。いや、色んなのを考えといてみるか! 状況によって相応しいものが選ばれるって言ってたし。

 ルナに似合いそうな服を思い付くだけ頭の中に描いて青い宝石に照射した。青い宝石は眩い光を発し消えた。

 ルナに怒られるかな、ま、良いか。

「とりあえず附与は成功したみたいだね。後は実際装着してみてどうなるか試すしかないね」

 うん、とりあえずルナとオブにこの魔導具を持って行くか。
 フィルさんにお金を払いお礼をして街の外へ出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...