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本編
107.難民達の献身と隣国の復活
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二年余りの年月が流れ、アイス・ランド王国(魔法使いの国)へと場面を移す。
この二年の間に貧民街や難民達を取り巻く環境、また隣国の権威や同盟国への影響力は大きく変わっていた。
まず、初めに変化を見せたのは難民達だった。
貧民街の『癒やしの精霊の楽園』で生活するうちに、難民達は驚異的な回復と成長をして見せたのだ。
老人達は見る見るうちに若々しくなり、全盛期にも勝るとも劣らない、力漲る健康な身体を手に入れた。
子供達もまた、不足していた栄養が摂れるようになり、発育良く急成長を遂げて、大人顔負けの身体能力と体力を手に入れていた。
「さすがは獣人の子、成長速度が違うのかな? 僕、あっという間に追い越されちゃいそう……」
頑張り屋の難民達と面倒見の良い貧民達はとても相性が良く、境遇が似ていた事も相まってか、息の合う両者が力を合わせる事によって、驚くべき功績を成し遂げて見せた。
広大過ぎて手付かずになっていた土地が、僅か半年とかからずに開拓されていき、何倍もあった土地が全て農地へと姿を変えていたのだ。
「すごく綺麗な新緑の風景。これ全部、僕達みんなで作り上げてきたんだよね。すごいなぁ……」
農作についても、白豚王子の二毛作や肥料など前世の知識を活かしつつ、『癒しの精霊の泉』の影響で植物の成長が早い事も重なり、作物の収穫量は例年の何十倍にも増加していた。
「いっぱい収穫できたね。この調子で沢山作って送ってあげよう。みんなの気持ちがいっぱい詰まってるから、きっと元気になるよ!」
難民達と貧民達は約束通り、大量の食料や物資を隣国へと送り続け、その頑張りはやがて実を結び、隣国ショコラ・ランド王国の窮地を救ったのである。
また、『癒しの精霊の楽園』で収穫された作物には不思議な効能があり、食べた者の飢えを満たすだけではなく、身体を回復・治癒させて癒す効果もあったのだ。
「食べきれないくらい収穫できたから、保存食作ってみよう。魔法でフリーズドライとかできるかな?」
特に、白豚王子が作る保存食用の菓子や、湯を注ぐだけで食べられるインスタント食料は回復・治癒の効果が極めて高く、紛争地で戦う兵士達に重宝された。
故に、貧民街からの支援は数多くの者の命を救う事に繋がり、疲弊し困窮していた隣国ショコラ・ランド王国は息を吹き返し、国力を取り戻していったのである。
「みんなの頑張りが報われたんだ。これでもう、大丈夫だよね。きっと未来は変わってる……きっとダークの未来だって……」
更に、脅威的な能力に目覚めた黒狼王子は絶望的かと思われていた戦況を打開し、隣国を勝利へと導いた。
長年続く紛争を早々に終結させる為、黒狼王子は能力を駆使し、紛争地に赴いては敵対兵を殲滅していった。
一躍、数々の武功を上げ多くの国の窮地を救った黒狼王子は、英雄として称賛され、世にその名を響き渡らせる。
「もう英雄・黒狼王子の名を知らない者なんていないくらい、すごい偉業だよ。ダークが衰退していた隣国を、どこにも勝る強国へと生まれ変わらせたんだ」
ゲームではダーク・フェイスと名乗り、姿を隠して表舞台に出てくる事の無かったダークヒーロー。
だが、現実では英雄・黒狼王子として名声を轟かせ、その脅威的な能力から畏怖される存在にまでなっていた。
◆
僕は英雄として世に名を馳せる彼に想いを寄せ、独り言ちていた。
「ダーク格好良いが過ぎる! ダークヒーローじゃないヒーローのダークも超絶格好良い!! はぁ、強過ぎて怖がられちゃうとか、孤高の気高き狼じゃん、好き過ぎる……」
一方、僕はと言えば意外な事に、この二年の間に驚きの変化があった。
長年苦戦を強いられてきた丸々と肥え太った体型に大きな変化があった――なんて事は特に無い。
相変わらずの真ん丸体型で、姿形は悪役・白豚王子そのものではあるのだが――だがしかしだ。
何故か積極的にバニラ王子が僕と接触するようになり、それに伴って僕を取り巻く周囲の環境が大きく変化していたのだ。
「ごきげんよう、第一王子。これから貧民街へ向かうところですか?」
「あ、うん、そうだよ。昨日収穫した果物でジャムを作って、お菓子を作ろうかなと思ってるんだ」
「聞いてるだけで美味しそうですね。僕も後で手伝いに行ってもいいですか?」
「うん、もちろん。みんなも喜ぶよ」
バニラ王子は僕の真似をして、時々お忍びで平民のふりをし、貧民街に遊びに――もとい、手伝いに来てくれるようになっていた。
貧民街の様子に最初は驚いていたバニラ王子も、直ぐに貧民達や難民達と打ち解けていった。
バニラ王子と接するうちに、王城内の者が僕を見る目も変わってきて、悪役を脱却する日も遠くないと思えていた。
「そう言えば、もうすぐ誕生祭の時期でしたね。今年はどうなるのでしょう……」
「ああ、確かにもうすぐだったね。国王陛下の体調も良くないみたいだしね……」
年々、国王は体調を崩し続け、近々催される予定だった国王誕生祭への参加も難しいのではと危惧されていた。
そう、僕も、白豚王子ことフランボワーズ・アイス・クリームも、もうすぐ18歳の誕生日を迎えようとしていたのだ。
「早く良くなる事を祈るばかりです……」
「そうだね。きっと、誕生祭までには――」
僕がバニラ王子を励まそうとしていると、血相を変えて駆けて来た従者が声を張り上げて告げる。
「バニラ殿下、大変です! 国王陛下がお倒れになりました!!」
「父上が!?」
「え……」
バニラ王子は従者の後に続き、急いで国王の元へと駆けて行く。
僕は悪夢で見た白豚王子の記憶が脳裏をよぎり、青褪めてその場に立ち尽くし――
「……まさか……」
――不穏な予感に呟きを零していた。
――未来が変わり、悪役を脱却して平穏な日常が送っていけると思っていた。
そんな矢先、運命の強制力により避けられない出来事は起こる。――
◆
この二年の間に貧民街や難民達を取り巻く環境、また隣国の権威や同盟国への影響力は大きく変わっていた。
まず、初めに変化を見せたのは難民達だった。
貧民街の『癒やしの精霊の楽園』で生活するうちに、難民達は驚異的な回復と成長をして見せたのだ。
老人達は見る見るうちに若々しくなり、全盛期にも勝るとも劣らない、力漲る健康な身体を手に入れた。
子供達もまた、不足していた栄養が摂れるようになり、発育良く急成長を遂げて、大人顔負けの身体能力と体力を手に入れていた。
「さすがは獣人の子、成長速度が違うのかな? 僕、あっという間に追い越されちゃいそう……」
頑張り屋の難民達と面倒見の良い貧民達はとても相性が良く、境遇が似ていた事も相まってか、息の合う両者が力を合わせる事によって、驚くべき功績を成し遂げて見せた。
広大過ぎて手付かずになっていた土地が、僅か半年とかからずに開拓されていき、何倍もあった土地が全て農地へと姿を変えていたのだ。
「すごく綺麗な新緑の風景。これ全部、僕達みんなで作り上げてきたんだよね。すごいなぁ……」
農作についても、白豚王子の二毛作や肥料など前世の知識を活かしつつ、『癒しの精霊の泉』の影響で植物の成長が早い事も重なり、作物の収穫量は例年の何十倍にも増加していた。
「いっぱい収穫できたね。この調子で沢山作って送ってあげよう。みんなの気持ちがいっぱい詰まってるから、きっと元気になるよ!」
難民達と貧民達は約束通り、大量の食料や物資を隣国へと送り続け、その頑張りはやがて実を結び、隣国ショコラ・ランド王国の窮地を救ったのである。
また、『癒しの精霊の楽園』で収穫された作物には不思議な効能があり、食べた者の飢えを満たすだけではなく、身体を回復・治癒させて癒す効果もあったのだ。
「食べきれないくらい収穫できたから、保存食作ってみよう。魔法でフリーズドライとかできるかな?」
特に、白豚王子が作る保存食用の菓子や、湯を注ぐだけで食べられるインスタント食料は回復・治癒の効果が極めて高く、紛争地で戦う兵士達に重宝された。
故に、貧民街からの支援は数多くの者の命を救う事に繋がり、疲弊し困窮していた隣国ショコラ・ランド王国は息を吹き返し、国力を取り戻していったのである。
「みんなの頑張りが報われたんだ。これでもう、大丈夫だよね。きっと未来は変わってる……きっとダークの未来だって……」
更に、脅威的な能力に目覚めた黒狼王子は絶望的かと思われていた戦況を打開し、隣国を勝利へと導いた。
長年続く紛争を早々に終結させる為、黒狼王子は能力を駆使し、紛争地に赴いては敵対兵を殲滅していった。
一躍、数々の武功を上げ多くの国の窮地を救った黒狼王子は、英雄として称賛され、世にその名を響き渡らせる。
「もう英雄・黒狼王子の名を知らない者なんていないくらい、すごい偉業だよ。ダークが衰退していた隣国を、どこにも勝る強国へと生まれ変わらせたんだ」
ゲームではダーク・フェイスと名乗り、姿を隠して表舞台に出てくる事の無かったダークヒーロー。
だが、現実では英雄・黒狼王子として名声を轟かせ、その脅威的な能力から畏怖される存在にまでなっていた。
◆
僕は英雄として世に名を馳せる彼に想いを寄せ、独り言ちていた。
「ダーク格好良いが過ぎる! ダークヒーローじゃないヒーローのダークも超絶格好良い!! はぁ、強過ぎて怖がられちゃうとか、孤高の気高き狼じゃん、好き過ぎる……」
一方、僕はと言えば意外な事に、この二年の間に驚きの変化があった。
長年苦戦を強いられてきた丸々と肥え太った体型に大きな変化があった――なんて事は特に無い。
相変わらずの真ん丸体型で、姿形は悪役・白豚王子そのものではあるのだが――だがしかしだ。
何故か積極的にバニラ王子が僕と接触するようになり、それに伴って僕を取り巻く周囲の環境が大きく変化していたのだ。
「ごきげんよう、第一王子。これから貧民街へ向かうところですか?」
「あ、うん、そうだよ。昨日収穫した果物でジャムを作って、お菓子を作ろうかなと思ってるんだ」
「聞いてるだけで美味しそうですね。僕も後で手伝いに行ってもいいですか?」
「うん、もちろん。みんなも喜ぶよ」
バニラ王子は僕の真似をして、時々お忍びで平民のふりをし、貧民街に遊びに――もとい、手伝いに来てくれるようになっていた。
貧民街の様子に最初は驚いていたバニラ王子も、直ぐに貧民達や難民達と打ち解けていった。
バニラ王子と接するうちに、王城内の者が僕を見る目も変わってきて、悪役を脱却する日も遠くないと思えていた。
「そう言えば、もうすぐ誕生祭の時期でしたね。今年はどうなるのでしょう……」
「ああ、確かにもうすぐだったね。国王陛下の体調も良くないみたいだしね……」
年々、国王は体調を崩し続け、近々催される予定だった国王誕生祭への参加も難しいのではと危惧されていた。
そう、僕も、白豚王子ことフランボワーズ・アイス・クリームも、もうすぐ18歳の誕生日を迎えようとしていたのだ。
「早く良くなる事を祈るばかりです……」
「そうだね。きっと、誕生祭までには――」
僕がバニラ王子を励まそうとしていると、血相を変えて駆けて来た従者が声を張り上げて告げる。
「バニラ殿下、大変です! 国王陛下がお倒れになりました!!」
「父上が!?」
「え……」
バニラ王子は従者の後に続き、急いで国王の元へと駆けて行く。
僕は悪夢で見た白豚王子の記憶が脳裏をよぎり、青褪めてその場に立ち尽くし――
「……まさか……」
――不穏な予感に呟きを零していた。
――未来が変わり、悪役を脱却して平穏な日常が送っていけると思っていた。
そんな矢先、運命の強制力により避けられない出来事は起こる。――
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