処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

絶体絶命の窮地

悪魔縛りの術（デモニック・バインド） により、レオンの動きは封じられた。
ベネディクト・スローンとテオドール・ハミルトンの強力な封印魔法 によって、彼の身体を拘束する黒い鎖が地面から這い出し、四肢を絡め取っていた。

「……くっ……！」

レオンは 必死に抗おうとするが、魔力の流れが封じられている。
いつものように力を込めても、身体が思うように動かない。

ザカライア・ヘンデルが 冷たい笑みを浮かべる。

「フン、悪魔の力を封じられた勇者様とやらが、どれほどのものか見せてもらおうか。」

「全軍、一斉攻撃——！」

兵士たちが剣を構え、レオンを仕留めようと迫る。

しかし——

「その必要はないわ。」

新たな一団が戦場に現れた。

雷が鳴り響き、空気が張り詰める。

その瞬間、戦場に新たな4人の影が現れた。

セリーヌ・ミルフォード
レオ・グラディス
ソフィア・アルバート
ベルナール・ストーク

彼らは、かつて 勇者と共に戦った仲間だった。
そして今——勇者を討つために、この場に現れた。

「レオン……！」

レオ・グラディスが 剣を握りしめながら、険しい表情でレオンを見据える。

「……お前が、本当に復活していたなんてな。」

レオンの 目が鋭く光る。

「レオ……」

「セリーヌ、ソフィア、ベルナール……」

「お前たちまで俺の敵になるとはな。」

セリーヌ・ミルフォードは 感情を押し殺した声で言った。

「……敵になったのは、あなたの方よ。」

「私たちは……あなたが邪悪に堕ちたと聞いていた。」

「復活した今、あなたは本当に何をしようとしているの？」

レオンは 冷笑する。

「俺の目的は一つ……復讐だ。」

「お前たちも、俺を裏切った。」

「ならば……俺の手で裁く。」

「……そうか。」

レオ・グラディスが 静かに剣を構える。

「ならば……止めるしかないな。」

「……勇者レオン・アルヴァレス、お前を討つ。」


「《雷撃の暴風（テンペスト・サンダー）》！」

セリーヌが 杖を振るうと、戦場に轟音が響き渡る。

ゴゴゴゴゴ……！

上空に魔法陣が展開し、雷の槍が無数に発生する。

「逃げられないわよ、レオン。」

「あなたの動きは封じられている。」

「これで……終わらせる。」

——バチバチバチッ！！

雷の槍が、一斉にレオンを貫かんと降り注ぐ！

「……くそっ！！」

——ドォォォン！！！

雷撃が炸裂し、地面が抉れる。
爆風が吹き荒れ、視界が一瞬真っ白になる。

「……仕留めたのか？」

兵士たちが 期待に満ちた表情で煙の中を覗く。

しかし——

バチバチ……ズズ……

煙の中から、レオンが ゆっくりと姿を現した。

「……フッ。」

「これが……元仲間の手向けか？」

全身は 焦げつき、傷だらけ。
しかし、その瞳は なおも燃えるような復讐心を宿していた。

セリーヌの 顔が険しくなる。

「……魔法耐性がここまで高いなんて。」


「俺が行く！！」

レオ・グラディスが 剣を構え、一気に距離を詰める。

「《神聖剣技——裁きの光刃（ジャッジメント・スラッシュ）》！」

剣が 聖なる光を纏い、一閃する！

「……っ！」

レオンは、悪魔縛りの術で拘束されているため、回避が間に合わない。

ザシュッ！！！

「ぐっ……！」

レオンの 右腕に深い傷が刻まれる。

「どうだ、レオン！！」

レオが 剣を構えながら叫ぶ。

「俺は、かつてお前の盾だった……！」

「だが、今度はお前を討つ剣となる！！」

レオンは 傷を押さえながら笑った。

「……なら、せめて俺を殺しきれ。」

「俺を討たない限り……お前の正義は偽りのままだぞ。」


「……ごめんね、レオン。」

ソフィア・アルバートが 弓を引き絞る。

「本当は……こうなるはずじゃなかった。」

「だけど……私は……！」

「お前の気持ちなんて関係ない！！」

レオンが 怒りに満ちた声で叫ぶ。

「今さら……何を言ったところで、過去は変えられん！！」

ソフィアの目が 揺れる。

「……ごめん……！」

——ヒュンッ！！

矢が放たれ、レオンの左肩に 突き刺さる。

「ぐっ……！！」

血が噴き出る。

「……やるじゃないか。」

レオンは 苦笑しながら、矢を無理やり引き抜く。

「だが……それだけじゃ、俺は止まらんぞ。」


「……やれやれ、厄介なことになったな。」

ベルナールが 呆れたようにため息をつきながら、回復魔法を発動する。

「《癒しの光（ヒールレイ）》」

光が、負傷した王国軍の兵士たちに降り注ぎ、彼らは立ち上がる。

「さて、勇者よ。」

「君はこのまま倒れるのか？」

「それとも、まだ抵抗するのか？」