処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ

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願いの果て

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冷たい朝の光が広場に差し込む。石畳の上にそびえる処刑台。その頂に、白い肌の女が一人、静かに立っていた。

ルイーザ・デンバー。
かつては貴族たちの憧れだった彼女の美しさは、今や死の装束に包まれている。

興行師フランシス・ボールドウィンは満面の笑みで群衆に叫んだ。
「さあ、皆様!今日の目玉だ!
勇者の女──裏切り者の処刑を、この目でしかと見届けよ!」

観衆は歓声を上げた。
「裏切り者め!」
「勇者と同じ悪党だったんだ!」
「死んで償え!」

ルイーザはただ、虚ろな目で人々を見下ろしていた。
──レオン。きっと、来てくれる。
あの人なら、こんな茶番のような裁き、許すはずがない。

国王ライナス・バルフォードは玉座にふんぞり返り、冷ややかに見下ろす。
エレオノーラは優雅に扇をあおぎ、口元に薄く笑みを浮かべた。
ダリウス・レムナーは満足げに頷き、オーギュスト・ヘイデンは腕を組み、見下ろしている。
大司教フレデリック・ヴォルナーは聖典を掲げ、声高に叫んだ。

「この女、ルイーザ・デンバーは異端と認定され、神の名の下に、その命を絶たれる!」

ルイーザの目が、微かに揺れた。
まだ、レオンは来ない。
「レオン……お願い、来て……」

最後の願いは、届かなかった。

鋭い刃が振り下ろされる音と共に、
熱い血が白い肌を濡らし、石畳に紅を落とす。

首のない身体がぐらりと揺れ、崩れ落ちた。
観衆が歓声を上げる。
「やったぞ!」
「ざまあみろ!」

ライナスは満足げに頷き、エレオノーラは目を細めて微笑んだ。
ダリウスは静かに目を閉じる。
オーギュストはふんと鼻を鳴らした。
フレデリックは天を仰ぎ、神への感謝を捧げる──ふりをした。

そのどこにも、ルイーザの名を呼ぶ声はなかった。

ルイーザの最後の想いだけが、血と共に静かに地に流れた。
「……レオン……どうして……」

誰にも聞こえぬその声を、冷たい風が運んでいった。
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