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クロー、お願い。信じて
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男爵夫妻がお食事に招いてくれたその日。
緊張しすぎてお料理の味が全然わからない。
男爵夫人はわたしを完全に無視。居ないもの扱い。
「ニーナ、行儀作法が身についてきたな」
男爵様が珍しく優しい声で言ってくれた。
でもわたし、まだナイフの使い方が下手だよ。
今も力が入ってる。手を滑らせたらナイフが飛んでいきそう。
「ありがとうございます、男爵さまのおかげです」
いけなーい。棒読みになってしまった。
「学園ではどうだ? 良い令息との交際は進んでいるか?」
うう、それ、聞かれると一番つらい。
近づいては来てるよね。物理的にだけどね。
「少しずつ、お知り合いが増えてまいりました」
嘘じゃない。増えてる。敵が。
「そうか。お前には期待しているんだぞ。我が家の地位を上げられる縁談を頼む」
ひーん、重い。重すぎる。
わたしの肩に圧し掛かってくる。
平民とは比べられないくらいの財産使われてるんだもんね。
「あの、男爵さま。わたくし、故郷の者へ贈り物を送りたいのですが」
男爵さまの顔が一瞬固まった。
「なぜだ?」
「今までお世話になった方へお礼を、と。それと、故郷の産物について、少し相談したいことが。
わたくしの故郷の産物を学園の貴族の方々が興味を示してくださっているのです」
まだだけど。これから興味を持ってもらわなければならない。
順番は逆だけど、何とかしてみせる。
「ふむ……良かろう。しかし荷物は執事が調べてから送る。よいな」
「はい。ありがとうございます」
やった! 伝えられる!
その夜、必死で手紙を書いた。
クローに届くかどうかはわからない。
でも商人さんが協力してくれたんだから、もしかしたら届くかもしれない。
なんか前世の記憶の勢いで書いちゃったけど、クローならわかってくれるよね。
わたしの思いつきだったら何でも試してくれてきたし。
皮のエキスって取れるのかどうかはわからないけど
この世界って色んな謎技術があるから大丈夫だよね。
それになんたってクローは、謎技術を使いこなしてるし!
ミッカン関係を丸投げにしちゃって申し訳ないけど
利益が出たら何かで恩返しするから、今は許してくれないかなあ。
◇
「あのう、商会の方、先日はありがとうございました」
また来てくれた商人さんに、まず表向きの手紙を渡す。
これは執事さんの検査?(なんか、調べるみたいなこと言ってた)を通った、丁寧な挨拶だけの手紙。
「いえいえ。クロー君は良い若者ですからね。素晴らしい取引をしてくれてますよ」
商人さんはにこにこしてる。良い人だ。
それから、ポケットの中、小さく折りたたんだ紙をゆるく握りしめる。
「ミッカンのジャム、また買わせていただきますね」
「ええ、もちろん。おいくつ入用ですか?」
「三本お願いします」
商人さんとの取引を装いながら、小さな紙を託すことに集中する。
手のひらに隠して、商人さんの手に滑り込ませた。
商人さんは何も言わず、自然にそれを受け取ってくれた。
執事さんは気づいてないみたい。
いいよいいよ!わたし、賢くなった!
ちょっとスパイっぽくて楽しいね。
どうか無事にクローに届きますように。
クローが読んでくれさえすればいい。
小さな紙には、こう書いた。
『ミッカンの皮、捨てないで。
煮出して漉して、なんか良い感じにできないかな。
謎技術使って。
美容に良い液体作れたら助かる。
クロー、お願い。信じて』
緊張しすぎてお料理の味が全然わからない。
男爵夫人はわたしを完全に無視。居ないもの扱い。
「ニーナ、行儀作法が身についてきたな」
男爵様が珍しく優しい声で言ってくれた。
でもわたし、まだナイフの使い方が下手だよ。
今も力が入ってる。手を滑らせたらナイフが飛んでいきそう。
「ありがとうございます、男爵さまのおかげです」
いけなーい。棒読みになってしまった。
「学園ではどうだ? 良い令息との交際は進んでいるか?」
うう、それ、聞かれると一番つらい。
近づいては来てるよね。物理的にだけどね。
「少しずつ、お知り合いが増えてまいりました」
嘘じゃない。増えてる。敵が。
「そうか。お前には期待しているんだぞ。我が家の地位を上げられる縁談を頼む」
ひーん、重い。重すぎる。
わたしの肩に圧し掛かってくる。
平民とは比べられないくらいの財産使われてるんだもんね。
「あの、男爵さま。わたくし、故郷の者へ贈り物を送りたいのですが」
男爵さまの顔が一瞬固まった。
「なぜだ?」
「今までお世話になった方へお礼を、と。それと、故郷の産物について、少し相談したいことが。
わたくしの故郷の産物を学園の貴族の方々が興味を示してくださっているのです」
まだだけど。これから興味を持ってもらわなければならない。
順番は逆だけど、何とかしてみせる。
「ふむ……良かろう。しかし荷物は執事が調べてから送る。よいな」
「はい。ありがとうございます」
やった! 伝えられる!
その夜、必死で手紙を書いた。
クローに届くかどうかはわからない。
でも商人さんが協力してくれたんだから、もしかしたら届くかもしれない。
なんか前世の記憶の勢いで書いちゃったけど、クローならわかってくれるよね。
わたしの思いつきだったら何でも試してくれてきたし。
皮のエキスって取れるのかどうかはわからないけど
この世界って色んな謎技術があるから大丈夫だよね。
それになんたってクローは、謎技術を使いこなしてるし!
ミッカン関係を丸投げにしちゃって申し訳ないけど
利益が出たら何かで恩返しするから、今は許してくれないかなあ。
◇
「あのう、商会の方、先日はありがとうございました」
また来てくれた商人さんに、まず表向きの手紙を渡す。
これは執事さんの検査?(なんか、調べるみたいなこと言ってた)を通った、丁寧な挨拶だけの手紙。
「いえいえ。クロー君は良い若者ですからね。素晴らしい取引をしてくれてますよ」
商人さんはにこにこしてる。良い人だ。
それから、ポケットの中、小さく折りたたんだ紙をゆるく握りしめる。
「ミッカンのジャム、また買わせていただきますね」
「ええ、もちろん。おいくつ入用ですか?」
「三本お願いします」
商人さんとの取引を装いながら、小さな紙を託すことに集中する。
手のひらに隠して、商人さんの手に滑り込ませた。
商人さんは何も言わず、自然にそれを受け取ってくれた。
執事さんは気づいてないみたい。
いいよいいよ!わたし、賢くなった!
ちょっとスパイっぽくて楽しいね。
どうか無事にクローに届きますように。
クローが読んでくれさえすればいい。
小さな紙には、こう書いた。
『ミッカンの皮、捨てないで。
煮出して漉して、なんか良い感じにできないかな。
謎技術使って。
美容に良い液体作れたら助かる。
クロー、お願い。信じて』
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