8 / 30
家族の真相(2)
しおりを挟む
ライムとバロン。
片や、同族の者たちから追放された吸血鬼。片や、人間社会で暮らせなくなってしまった人狼。
最初のうちは、同じ山に住む単なる顔見知りでしかなかった。人間からは怪物扱いされる者同士、共感するものがあったが、それでも接触することはなかった。
だが、ある出来事をきっかけに、その状況は一変する。
ロミナとの出会いは、偶然だった。
ある日、森を通りかかった旅人の親子がいた。母と子のふたり連れである。何の用事があるのか、この物騒なアルラト山を歩いていたのだ。あまりにも無謀である。
そんな親子は、夜中に緑色の肌をしたゴブリンの群れの襲撃を受けてしまった。女は、幼い少女を逃がそうとしてゴブリンの群れに立ち向かう。だが、あっさりと殺されてしまった。そのゴブリンに惨殺されてしまった女こそが、ロミナの本当の母親なのであろう。
惨劇を目の当たりにしたショックで、少女は意識を失ってしまった。そのままだったら、ロミナも母親の後を追っていただろう。
ところが、その場にひとりの吸血鬼が現れる。偶然、近くを通りかかっていたライムだ。
人間など、放っておいても良かった。しかし、気を失った少女の姿はあまりにも痛々しかった。彼女は疾風のごとき勢いで、ゴブリンたちの中を突破する。ロミナをかばい、ゴブリンの群れの前に立ちはだかったのだ。
さらに、血の匂いを嗅ぎ付けた巨狼ことバロンも乱入してきた。こうなると、戦いにすらならない。ゴブリンの群れは、一瞬で蹴散らされてしまった。
その後、ロミナは意識を取り戻した。見れば、上等な服を着ており、首からはペンダントをぶら下げている。おそらくは、名のある家の娘なのだろう。
だが彼女は、自身の名前以外の記憶を失っているようだった。襲われたショックによるものだろう。
家の壁にかけられているペンダントは、襲われた時に彼女が身につけていたものである。しかし、本人は何も覚えていない。それが何なのかすら、わかっていなかった。
それだけでも充分な難事ではある。しかし、さらなる厄介事が起きたのは、それからだった。
意識を取り戻した直後は、ボーッとした表情でライムの顔を見つめていた。だが、みるみるうちに表情が変わる。
やがて、とんでもないことが起きた──
「お母さん! 怖かったのだ!」
叫びながら抱きついてきたのど。どうやら、襲われたショックで目の前にいる女性を母親と思い込んでしまったらしいのだ。
その場で突き放していれば、話は終わっていたかもしれない。だが、泣きじゃくり抱きついてくる少女を、ライムは拒絶できなかった。小さな体を震わせながら、必死でしがみついてくるロミナを、ライムは優しい表情で受け止める。
これまでに味わったことのない、不思議なものを感じていた。
以来、三人は家族として暮らしている。昼間に活動できないライムの代わりに、バロンがロミナの面倒を見る。そして夜、巨狼に変身するバロンの代わりに、ライムが少女の面倒を見る。
今のように、吸血鬼の本能を剥き出しにした姿を、ロミナに見られるわけにはいかなかった。だからこそ、家から離れた場所で血を吸っているのだ。
三人の家に獣や亜人たちが近寄らないのも、バロンとライムの正体に気づいているからだった。人狼と吸血鬼……この山の中でも、恐れられているコンビであろう。ゴブリンやオークごときでは、百人がかりでも歯が立たない。
「聞いたよ、ジュリアンくんのこと」
ライムが言うと、巨狼はこちらを向く。
「ジュリアン? アア、アノガキカ」
その口から、人間の言葉が出た。かなり聞き取りづらいが、意味は通じる。狼の姿になっている時のバロンは、滑舌が悪く発音も変である、人間とは口の構造が違うため、言葉が喋りづらいのだろう。
「ロミナは、ジュリアンくんのこと気に入ってるみたいだよ」
「ソンナコトハ、シラン」
「愛娘に好きな子が出来たのが、気に入らないっての?」
「ソンナノシルカ。タダ、アイツハキニイラン」
バロンは、不機嫌そうな口調で答える。その時だった。
「お母さん! どこ行った!」
不意に、家の中から声が聞こえてきた。普通の人間ならば、これだけ距離があれば聞き取れないだろう。だが、吸血鬼であるライムの耳には聞こえたのだ。
直後、ライムは異様な速さで動く。人間にはありえないスピードで家に戻り、ロミナの寝室へと入った。
「ロミナ! どうしたの!」
駆け込んだライムの前で、ロミナは上体を起こした。その顔は、恐怖のあまり蒼白になっている。
「お母さん! 凄く怖い夢を見たのだ! 一緒に寝て欲しいのだ!」
「もう、しょうがない子ね」
ライムは、ベッドに横たわる。すると、ロミナはしがみついてきた。
少女の頭を撫でつつ、優しく尋ねる。
「どんな夢を見たの?」
「緑色の怖いお化けが出たのだ。いっぱいいたのだ。お父さんもお母さんも、お化けに食べられてしまったのだ」
それは、ゴブリンの群れに襲われた時の記憶だろう。今のロミナは、あれを現実ではなく悪夢として認識している。本人にとって、それがいいことかどうかはわからない。
ライムにわかっていることはひとつ。今の自分が、どんな言葉をかけてあげればいいか……それだけだ。
「大丈夫だよ。お母さんは、とっても強いんだから。お化けなんか、すぐにやっつけちゃうよ」
「ほ、本当か?」
「本当だよ。ロミナを怖がらせるような奴は、お母さんがみんなやっつけてやるから」
「おおお! それは凄いのだ!」
しばらくして、ロミナの寝息が聞こえてきた。ライムは、優しい表情で少女の寝顔を見守る。
できることなら、ずっとこうしていたい。だが、それはロミナにとって幸せではない。
この娘は、いずれ人間社会に帰って行かねばならないのだ。街に行かせたのも、その第一歩である。
その時、外で物音がした。ライムは、そっと部屋を出ていく。
外には、バロンがいた。巨狼の姿で、じっとこちらを見ている。その横には、仕留めてきた鹿が置かれていた。
「大丈夫だよ。悪い夢を見ただけだから」
「ソウカ。ヨカッタ」
「ところでさ、ロミナから聞いたよ。あんた、あの子を街に連れていかないことにしたんだって?」
「アア、ソウダ」
「何でだい?」
「マチハ、キケンガオオイ。コドモハ、ツレテイケナイ」
「違うでしょ。その、ジュリアンとかいう男の子と会わせたくないだけでしょ」
「ソウイウワケデハ、ナイ』
「あんたの気持ちはわかるよ。でもね、あたしらは人間じゃない。いつまでも、一緒には暮らせないんんだよ」
その言葉に、巨狼はプイッと横を向いた。痛いところを突かれ、機嫌が悪くなったのだろう。しかし、ライムはなおも訴える。
「いつかは、あの子とお別れしなきゃならないんだよ。だったらさ、ジュリアンくんにロミナを任せるしかないんじゃない?」
「ダメダ。アイツハ、マダコドモダ。タヨリナイ」
「まあ、今は無理かもしれない。でもさ、ジュリアンくんが大きくなって、ロミナと本気で付き合いたいって言ってきたら? それでも、駄目だって言うの?」
「ダメダ。マダ、キョカハダセナイ。モウスコシ、ヨウスヲミテカラダ」
「まったく、それじゃ頑固親父そのものじゃない。ロミナは、ジュリアンくんのこと好きだって言ってたよ」
「ンナコト、ドウデモイイ。ハヤク、イツモ丿ヤツヲヤレ」
「わかったよ」
ライムは答えると、鋭い目で鹿を見つめる。
次の瞬間、その口から冷気が放たれた。水を一瞬にして凍りつかせ、大半の生き物の生命活動を停止させてしまうほどのものだ。
鹿は、あっと言う間に氷漬けとなる。内部までもが完全に凍っており、簡単には溶けないであろう。
これもまた、ライムの魔力であった。ロミナには、決して見せてはならないもの。吸血鬼の能力である。
いつか少女は、ふたりの正体を知らぬまま、ここを去ることになるのだろう。その方が、ロミナのためなのだ。
だが……そうなった時、ライムはどうやって生きていけばいいのだろう。
この先、新たな幸せを見出だせるのだろうか。
物思いにふけるライムをよそに、バロンは凍りついた鹿をくわえて運んでいく。行き先は、この近くにある洞窟だ。そこは温度が低く、氷も溶けづらい。
ロミナが人間社会に帰った時、このふたりは元の孤独な生活に戻る。今の暮らしは、しょせん仮初のものである。ロミナを育てるため、家族の真似事をしているだけだ。
その後のことは、考えたくない。だが、いつかはやってくるものなのだ。
片や、同族の者たちから追放された吸血鬼。片や、人間社会で暮らせなくなってしまった人狼。
最初のうちは、同じ山に住む単なる顔見知りでしかなかった。人間からは怪物扱いされる者同士、共感するものがあったが、それでも接触することはなかった。
だが、ある出来事をきっかけに、その状況は一変する。
ロミナとの出会いは、偶然だった。
ある日、森を通りかかった旅人の親子がいた。母と子のふたり連れである。何の用事があるのか、この物騒なアルラト山を歩いていたのだ。あまりにも無謀である。
そんな親子は、夜中に緑色の肌をしたゴブリンの群れの襲撃を受けてしまった。女は、幼い少女を逃がそうとしてゴブリンの群れに立ち向かう。だが、あっさりと殺されてしまった。そのゴブリンに惨殺されてしまった女こそが、ロミナの本当の母親なのであろう。
惨劇を目の当たりにしたショックで、少女は意識を失ってしまった。そのままだったら、ロミナも母親の後を追っていただろう。
ところが、その場にひとりの吸血鬼が現れる。偶然、近くを通りかかっていたライムだ。
人間など、放っておいても良かった。しかし、気を失った少女の姿はあまりにも痛々しかった。彼女は疾風のごとき勢いで、ゴブリンたちの中を突破する。ロミナをかばい、ゴブリンの群れの前に立ちはだかったのだ。
さらに、血の匂いを嗅ぎ付けた巨狼ことバロンも乱入してきた。こうなると、戦いにすらならない。ゴブリンの群れは、一瞬で蹴散らされてしまった。
その後、ロミナは意識を取り戻した。見れば、上等な服を着ており、首からはペンダントをぶら下げている。おそらくは、名のある家の娘なのだろう。
だが彼女は、自身の名前以外の記憶を失っているようだった。襲われたショックによるものだろう。
家の壁にかけられているペンダントは、襲われた時に彼女が身につけていたものである。しかし、本人は何も覚えていない。それが何なのかすら、わかっていなかった。
それだけでも充分な難事ではある。しかし、さらなる厄介事が起きたのは、それからだった。
意識を取り戻した直後は、ボーッとした表情でライムの顔を見つめていた。だが、みるみるうちに表情が変わる。
やがて、とんでもないことが起きた──
「お母さん! 怖かったのだ!」
叫びながら抱きついてきたのど。どうやら、襲われたショックで目の前にいる女性を母親と思い込んでしまったらしいのだ。
その場で突き放していれば、話は終わっていたかもしれない。だが、泣きじゃくり抱きついてくる少女を、ライムは拒絶できなかった。小さな体を震わせながら、必死でしがみついてくるロミナを、ライムは優しい表情で受け止める。
これまでに味わったことのない、不思議なものを感じていた。
以来、三人は家族として暮らしている。昼間に活動できないライムの代わりに、バロンがロミナの面倒を見る。そして夜、巨狼に変身するバロンの代わりに、ライムが少女の面倒を見る。
今のように、吸血鬼の本能を剥き出しにした姿を、ロミナに見られるわけにはいかなかった。だからこそ、家から離れた場所で血を吸っているのだ。
三人の家に獣や亜人たちが近寄らないのも、バロンとライムの正体に気づいているからだった。人狼と吸血鬼……この山の中でも、恐れられているコンビであろう。ゴブリンやオークごときでは、百人がかりでも歯が立たない。
「聞いたよ、ジュリアンくんのこと」
ライムが言うと、巨狼はこちらを向く。
「ジュリアン? アア、アノガキカ」
その口から、人間の言葉が出た。かなり聞き取りづらいが、意味は通じる。狼の姿になっている時のバロンは、滑舌が悪く発音も変である、人間とは口の構造が違うため、言葉が喋りづらいのだろう。
「ロミナは、ジュリアンくんのこと気に入ってるみたいだよ」
「ソンナコトハ、シラン」
「愛娘に好きな子が出来たのが、気に入らないっての?」
「ソンナノシルカ。タダ、アイツハキニイラン」
バロンは、不機嫌そうな口調で答える。その時だった。
「お母さん! どこ行った!」
不意に、家の中から声が聞こえてきた。普通の人間ならば、これだけ距離があれば聞き取れないだろう。だが、吸血鬼であるライムの耳には聞こえたのだ。
直後、ライムは異様な速さで動く。人間にはありえないスピードで家に戻り、ロミナの寝室へと入った。
「ロミナ! どうしたの!」
駆け込んだライムの前で、ロミナは上体を起こした。その顔は、恐怖のあまり蒼白になっている。
「お母さん! 凄く怖い夢を見たのだ! 一緒に寝て欲しいのだ!」
「もう、しょうがない子ね」
ライムは、ベッドに横たわる。すると、ロミナはしがみついてきた。
少女の頭を撫でつつ、優しく尋ねる。
「どんな夢を見たの?」
「緑色の怖いお化けが出たのだ。いっぱいいたのだ。お父さんもお母さんも、お化けに食べられてしまったのだ」
それは、ゴブリンの群れに襲われた時の記憶だろう。今のロミナは、あれを現実ではなく悪夢として認識している。本人にとって、それがいいことかどうかはわからない。
ライムにわかっていることはひとつ。今の自分が、どんな言葉をかけてあげればいいか……それだけだ。
「大丈夫だよ。お母さんは、とっても強いんだから。お化けなんか、すぐにやっつけちゃうよ」
「ほ、本当か?」
「本当だよ。ロミナを怖がらせるような奴は、お母さんがみんなやっつけてやるから」
「おおお! それは凄いのだ!」
しばらくして、ロミナの寝息が聞こえてきた。ライムは、優しい表情で少女の寝顔を見守る。
できることなら、ずっとこうしていたい。だが、それはロミナにとって幸せではない。
この娘は、いずれ人間社会に帰って行かねばならないのだ。街に行かせたのも、その第一歩である。
その時、外で物音がした。ライムは、そっと部屋を出ていく。
外には、バロンがいた。巨狼の姿で、じっとこちらを見ている。その横には、仕留めてきた鹿が置かれていた。
「大丈夫だよ。悪い夢を見ただけだから」
「ソウカ。ヨカッタ」
「ところでさ、ロミナから聞いたよ。あんた、あの子を街に連れていかないことにしたんだって?」
「アア、ソウダ」
「何でだい?」
「マチハ、キケンガオオイ。コドモハ、ツレテイケナイ」
「違うでしょ。その、ジュリアンとかいう男の子と会わせたくないだけでしょ」
「ソウイウワケデハ、ナイ』
「あんたの気持ちはわかるよ。でもね、あたしらは人間じゃない。いつまでも、一緒には暮らせないんんだよ」
その言葉に、巨狼はプイッと横を向いた。痛いところを突かれ、機嫌が悪くなったのだろう。しかし、ライムはなおも訴える。
「いつかは、あの子とお別れしなきゃならないんだよ。だったらさ、ジュリアンくんにロミナを任せるしかないんじゃない?」
「ダメダ。アイツハ、マダコドモダ。タヨリナイ」
「まあ、今は無理かもしれない。でもさ、ジュリアンくんが大きくなって、ロミナと本気で付き合いたいって言ってきたら? それでも、駄目だって言うの?」
「ダメダ。マダ、キョカハダセナイ。モウスコシ、ヨウスヲミテカラダ」
「まったく、それじゃ頑固親父そのものじゃない。ロミナは、ジュリアンくんのこと好きだって言ってたよ」
「ンナコト、ドウデモイイ。ハヤク、イツモ丿ヤツヲヤレ」
「わかったよ」
ライムは答えると、鋭い目で鹿を見つめる。
次の瞬間、その口から冷気が放たれた。水を一瞬にして凍りつかせ、大半の生き物の生命活動を停止させてしまうほどのものだ。
鹿は、あっと言う間に氷漬けとなる。内部までもが完全に凍っており、簡単には溶けないであろう。
これもまた、ライムの魔力であった。ロミナには、決して見せてはならないもの。吸血鬼の能力である。
いつか少女は、ふたりの正体を知らぬまま、ここを去ることになるのだろう。その方が、ロミナのためなのだ。
だが……そうなった時、ライムはどうやって生きていけばいいのだろう。
この先、新たな幸せを見出だせるのだろうか。
物思いにふけるライムをよそに、バロンは凍りついた鹿をくわえて運んでいく。行き先は、この近くにある洞窟だ。そこは温度が低く、氷も溶けづらい。
ロミナが人間社会に帰った時、このふたりは元の孤独な生活に戻る。今の暮らしは、しょせん仮初のものである。ロミナを育てるため、家族の真似事をしているだけだ。
その後のことは、考えたくない。だが、いつかはやってくるものなのだ。
0
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる