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最強の武人(1)
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城の中は、惨憺たる有り様であった。
かつて、隆盛を誇っていたであろう城内。しかし今は、その面影すらない。床はあちこちがひび割れ、隙間から雑草が生えている。敷かれていた絨毯の残骸であろうか、あちこちにボロボロの布切れが転がっていた。
ロクスリー伯爵が亡くなり、伯爵家が断絶した後、城は荒れ放題になっていた。一時期は、ゴブリンの巣になっているという噂まで流れていたほどである。
今、改めて城の中を見てみると……ゴブリンらしきものはいない。代わりに、ひとりの男がいた。甲冑を着込んでおり、大広間の中央にてあぐらを掻いた姿勢で座っている。
ララーシュタインが近づいていくと、男は顔を上げた。
「ほう、こんなところに来客とは珍しい。あの小娘が目当てなら、まずは俺を倒すのだな」
言いながら、男は立ち上がった。
身長は、ララーシュタインよりも遥かに高い。もはや、巨人と言ってもいい身の丈であった。二メートルあるララーシュタインですら、男の胸の高さにしか届いていない。おそらく、三メートル近いのではないだろうか。
全身に銀色の鎧をまとっており、手には長柄のハルバードを握っている。これまた、恐ろしく大きなものだ。刃の部分の重さだけでも、十キロを超えているのではないだろうか。常人では、持つことすら出来ないだろう。
そんなハルバードを両手に持ち、ゆっくりと歩いてくる男……顔は見えていないものの、誰であるかは一目でわかった。
「あんた、グランドレイガーだな。まさか、こんな計画に加わっていようとは」
ララーシュタインは、思わず呟いていた。
そう、目の前に立ってるのは……かつて、ガバナス帝国にて最強の武人と言われた伝説の男・グランドレイガーである。
巨人といっても差し支えないほどの大きな体で、巨大なハルバードを軽々と振り回し、戦場で幾多の敵を打ち倒していた。ひとりで千人の敵を叩き斬った、などという噂もあるくらいだ。ララーシュタインは直接顔を合わせたことはないが、噂だけは嫌というほど耳にしていた。
無論、噂の中にはデマや尾ひれ背びれが付いたものもあるだろう。ただし、グランドレイガーが数々の武勲を立てており、武神と謳われた騎士であるのは間違いない。
だが三年ほど前に、数々の罪を犯していたことを腹心の部下が暴露した。殺人や強姦など、武人におるまじき行為ばかりである。
これまで立ててきた多くの武功により死刑は免れたものの、財産を全て没収された上に帝国を追放されたのだ。
そんな傑物が今、ララーシュタインの前に立ちはだかっているのだ。
「ララーシュタインよ。まさか、この城に正面から乗り込んで来るとは恐れ入ったよ。とんでもないバカがいたものだと思ったが、まさか貴様だったとはな」
「あんた、俺を知っているのか?」
「噂だけはな。悪の天才魔術師と称していると聞いていたが、どうせ身の程知らずのゴロツキだろうと思っていた。しかし今の貴様を見る限り、その判断は誤りだったらしい」
巨体に似合わぬ静かな口調だ。その全身から、己に対し抱いている圧倒的な自信が感じられた。
しかし、ララーシュタインも負けずに言い返す。
「最強の武人と呼ばれていたあんたが、落ちたものだな。自分のやってることがわかっているのか? 幼い子供を誘拐するなど、武人としてあるまじき行為ではないか。恥ずかしくないのか?」
「お前こそ、何もわかっていない。あの娘が、エドワード・フロンタル公爵の隠し子であることは知っているのか?」
「はっきりとした確証はなかった。だが以前より、そうなのではないかと思っていた」
ララーシュタインの言葉を聞き、グランドレイガーの放つ雰囲気が変わった。兜の頬当てにより、顔が覆われているため表情は見えない。しかし、心に何らかの変化が生じたらしい。
少しの間を置き、グランドレイガーは語り出す。
「フロンタル家こそ、ガバナス帝国における獅子身中の虫なのだ。権力に物を言わせ、不埒な悪行三昧……見かねて忠告をしようものなら、あらぬ罪を着せて罪人扱いだ。奴らのせいで、何人の人間が追放されてきたかわからん」
「ほ、本当か?」
一応は尋ねたものの、ララーシュタインもそのような噂を聞いたことがあった。
グランドレイガーは、ハルバードの柄で床を突く。ドスンという音が響き渡った。
「今は、武人の誇りに賭けて本当だと誓う……としか言えん。もし、お前がここを生きて出られたなら、バーレンに住むフォスという男に聞いてみるがよい。奴もまた、フロンタル家を糾弾したがゆえに帝国を追放されたのだ」
「奴もまた、と言ったな。あなたもフロンタル家を敵に回したために、濡れ衣を着せられたのか?」
「そうだ。俺は二十年以上、帝国に尽くしてきた。にもかかわらず、いわれなき罪を着せられ、地位も財産も没収された挙げ句に、帝国を追放させられたのだ。元はと言えば、先代フロンタル公爵の非礼を咎めたがゆえのことだ」
その話なら、聞いたことがあった。現公爵エドワードの父親は、高齢にもかかわらずあちこちで女を追い回していたという噂は聞いている。
あまりにも無様な姿を見かねたグランドレイガーが、皆の前で苦言を呈したらしいのだ。その話は、かなり知れ渡っていた。
「では、あんたが犯した罪は──」
「俺は何もしていない! にもかかわらず、全てを奪われ追放させられたのだぞ! 妻と子供は、今も帝国で肩身の狭い思いをしながら、どうにか暮らしているのだ!」
怒鳴り、ハルバードの柄で床を打ち鳴らす。兜のため表情は見えないが、フロンタル家に対する怒りは伝わってきた。
確かに理不尽な話ではある。だからといって、ロミナには何の関係もない話だ。ララーシュタインもまた、まなじりを決して口を開く。
「あんたの気持ちはわかった。フロンタル公爵家には、償わねばならぬ罪があるのかもしれん。だがな、ロミナには何の関係もなかろう。あれは、いい子だ。ちょっと変わってはいるが、皆に愛されている。公爵家の悪行とは、無関係に生きていたのだそ。そんな少女を身代金のためにさらうなど、言語道断ではないか」
「お前は、何もわかっていないようだな。ロミナをさらったのは金目当てではない。フロンタル家を潰すためだ」
「何だと?」
「あの娘は、フロンタル家の現当主であるエドワードと、リーブラ教の巫女との間に生まれた。リーブラ教ほ、今やガバナス帝国にとって無視できん一大勢力となっている。だがな、そこの巫女が公爵の隠し子を産んだ挙げ句、認知もされずに帝国を追われたのだぞ。信者どもが知れば、黙ってはいないだろう」
グランドレイガーの言う通りである。
リーブラ教の巫女は、人生の全てを神に捧げることになっている。特定の配偶者以外の男性と関係を持つことは、固く禁じられている。
ましてや、妻子持ちの男と関係を持ったなどと知られたら……これは、教団を追放されても不思議ではないのだ。
「ロミナの存在が公になれば、フロンタル家とリーブラ教の間に亀裂が入るのは間違いない。下手をすれば、信者たちの暴動が起こる。さらに、帝国での権力もまた大きく失墜する。フロンタル家に、報いを受けさせてやるのだ」
「もう一度言う。ロミナには、何の関係もないことだ。それに、あの子には以前の記憶がないのだぞ」
「フッ、忘れているなら、無理やり思い出させるだけのこと。そのための手段は、既に用意してある。それにだ、あの娘は公爵家の紋章が入ったペンダントを持っていたと聞いている。それこそが、何よりの証拠になるだろう。小娘は、せいぜい利用させてもらう。その後は、どうなろうが知ったことではない」
「やっとわかった。今のあなたは、武人などではない。ただの悪党だ。悪党なら悪党らしく、ひねり潰すだけだ」
言いながら、ララーシュタインは彼に人差し指を向ける。
直後、指先から光弾が放たれた。しかし、想定外の事態が起きる──
「な、何だと……」
ララーシュタインは、顔をしかめた。彼の指から放たれた光の弾丸は、間違いなくグランドレイガーに命中した。人ひとりの体など、確実に貫通できるほどの威力がある。巨人の体にも、風穴が空いていた……はずだった。
しかし、グランドレイガーは何事もなかったかのように立っている。光弾が当たる寸前、いきなり消滅したのだ。
「この鎧はな、大半の攻撃魔法を無効化する。かつて魔術師団にいたお前の魔法といえども、例外ではない。お前の力は、封じられたも同然なのだよ」
「ならば、これならどうだ!」
ララーシュタインは、右手のひらを向ける。と、拳大の燃え上がる火の玉が出現した。
火の玉は、凄まじいスピードで飛んでいく。避ける暇など与えず、グランドレイガーの体に炸裂する。
だが、またしても当たる直前に消滅したのだ。
「無駄だ。お前の魔法など、我が鎧の前では道化師の手品以下だ!」
グランドレイガーの声は、大広間に響き渡った──
かつて、隆盛を誇っていたであろう城内。しかし今は、その面影すらない。床はあちこちがひび割れ、隙間から雑草が生えている。敷かれていた絨毯の残骸であろうか、あちこちにボロボロの布切れが転がっていた。
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今、改めて城の中を見てみると……ゴブリンらしきものはいない。代わりに、ひとりの男がいた。甲冑を着込んでおり、大広間の中央にてあぐらを掻いた姿勢で座っている。
ララーシュタインが近づいていくと、男は顔を上げた。
「ほう、こんなところに来客とは珍しい。あの小娘が目当てなら、まずは俺を倒すのだな」
言いながら、男は立ち上がった。
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全身に銀色の鎧をまとっており、手には長柄のハルバードを握っている。これまた、恐ろしく大きなものだ。刃の部分の重さだけでも、十キロを超えているのではないだろうか。常人では、持つことすら出来ないだろう。
そんなハルバードを両手に持ち、ゆっくりと歩いてくる男……顔は見えていないものの、誰であるかは一目でわかった。
「あんた、グランドレイガーだな。まさか、こんな計画に加わっていようとは」
ララーシュタインは、思わず呟いていた。
そう、目の前に立ってるのは……かつて、ガバナス帝国にて最強の武人と言われた伝説の男・グランドレイガーである。
巨人といっても差し支えないほどの大きな体で、巨大なハルバードを軽々と振り回し、戦場で幾多の敵を打ち倒していた。ひとりで千人の敵を叩き斬った、などという噂もあるくらいだ。ララーシュタインは直接顔を合わせたことはないが、噂だけは嫌というほど耳にしていた。
無論、噂の中にはデマや尾ひれ背びれが付いたものもあるだろう。ただし、グランドレイガーが数々の武勲を立てており、武神と謳われた騎士であるのは間違いない。
だが三年ほど前に、数々の罪を犯していたことを腹心の部下が暴露した。殺人や強姦など、武人におるまじき行為ばかりである。
これまで立ててきた多くの武功により死刑は免れたものの、財産を全て没収された上に帝国を追放されたのだ。
そんな傑物が今、ララーシュタインの前に立ちはだかっているのだ。
「ララーシュタインよ。まさか、この城に正面から乗り込んで来るとは恐れ入ったよ。とんでもないバカがいたものだと思ったが、まさか貴様だったとはな」
「あんた、俺を知っているのか?」
「噂だけはな。悪の天才魔術師と称していると聞いていたが、どうせ身の程知らずのゴロツキだろうと思っていた。しかし今の貴様を見る限り、その判断は誤りだったらしい」
巨体に似合わぬ静かな口調だ。その全身から、己に対し抱いている圧倒的な自信が感じられた。
しかし、ララーシュタインも負けずに言い返す。
「最強の武人と呼ばれていたあんたが、落ちたものだな。自分のやってることがわかっているのか? 幼い子供を誘拐するなど、武人としてあるまじき行為ではないか。恥ずかしくないのか?」
「お前こそ、何もわかっていない。あの娘が、エドワード・フロンタル公爵の隠し子であることは知っているのか?」
「はっきりとした確証はなかった。だが以前より、そうなのではないかと思っていた」
ララーシュタインの言葉を聞き、グランドレイガーの放つ雰囲気が変わった。兜の頬当てにより、顔が覆われているため表情は見えない。しかし、心に何らかの変化が生じたらしい。
少しの間を置き、グランドレイガーは語り出す。
「フロンタル家こそ、ガバナス帝国における獅子身中の虫なのだ。権力に物を言わせ、不埒な悪行三昧……見かねて忠告をしようものなら、あらぬ罪を着せて罪人扱いだ。奴らのせいで、何人の人間が追放されてきたかわからん」
「ほ、本当か?」
一応は尋ねたものの、ララーシュタインもそのような噂を聞いたことがあった。
グランドレイガーは、ハルバードの柄で床を突く。ドスンという音が響き渡った。
「今は、武人の誇りに賭けて本当だと誓う……としか言えん。もし、お前がここを生きて出られたなら、バーレンに住むフォスという男に聞いてみるがよい。奴もまた、フロンタル家を糾弾したがゆえに帝国を追放されたのだ」
「奴もまた、と言ったな。あなたもフロンタル家を敵に回したために、濡れ衣を着せられたのか?」
「そうだ。俺は二十年以上、帝国に尽くしてきた。にもかかわらず、いわれなき罪を着せられ、地位も財産も没収された挙げ句に、帝国を追放させられたのだ。元はと言えば、先代フロンタル公爵の非礼を咎めたがゆえのことだ」
その話なら、聞いたことがあった。現公爵エドワードの父親は、高齢にもかかわらずあちこちで女を追い回していたという噂は聞いている。
あまりにも無様な姿を見かねたグランドレイガーが、皆の前で苦言を呈したらしいのだ。その話は、かなり知れ渡っていた。
「では、あんたが犯した罪は──」
「俺は何もしていない! にもかかわらず、全てを奪われ追放させられたのだぞ! 妻と子供は、今も帝国で肩身の狭い思いをしながら、どうにか暮らしているのだ!」
怒鳴り、ハルバードの柄で床を打ち鳴らす。兜のため表情は見えないが、フロンタル家に対する怒りは伝わってきた。
確かに理不尽な話ではある。だからといって、ロミナには何の関係もない話だ。ララーシュタインもまた、まなじりを決して口を開く。
「あんたの気持ちはわかった。フロンタル公爵家には、償わねばならぬ罪があるのかもしれん。だがな、ロミナには何の関係もなかろう。あれは、いい子だ。ちょっと変わってはいるが、皆に愛されている。公爵家の悪行とは、無関係に生きていたのだそ。そんな少女を身代金のためにさらうなど、言語道断ではないか」
「お前は、何もわかっていないようだな。ロミナをさらったのは金目当てではない。フロンタル家を潰すためだ」
「何だと?」
「あの娘は、フロンタル家の現当主であるエドワードと、リーブラ教の巫女との間に生まれた。リーブラ教ほ、今やガバナス帝国にとって無視できん一大勢力となっている。だがな、そこの巫女が公爵の隠し子を産んだ挙げ句、認知もされずに帝国を追われたのだぞ。信者どもが知れば、黙ってはいないだろう」
グランドレイガーの言う通りである。
リーブラ教の巫女は、人生の全てを神に捧げることになっている。特定の配偶者以外の男性と関係を持つことは、固く禁じられている。
ましてや、妻子持ちの男と関係を持ったなどと知られたら……これは、教団を追放されても不思議ではないのだ。
「ロミナの存在が公になれば、フロンタル家とリーブラ教の間に亀裂が入るのは間違いない。下手をすれば、信者たちの暴動が起こる。さらに、帝国での権力もまた大きく失墜する。フロンタル家に、報いを受けさせてやるのだ」
「もう一度言う。ロミナには、何の関係もないことだ。それに、あの子には以前の記憶がないのだぞ」
「フッ、忘れているなら、無理やり思い出させるだけのこと。そのための手段は、既に用意してある。それにだ、あの娘は公爵家の紋章が入ったペンダントを持っていたと聞いている。それこそが、何よりの証拠になるだろう。小娘は、せいぜい利用させてもらう。その後は、どうなろうが知ったことではない」
「やっとわかった。今のあなたは、武人などではない。ただの悪党だ。悪党なら悪党らしく、ひねり潰すだけだ」
言いながら、ララーシュタインは彼に人差し指を向ける。
直後、指先から光弾が放たれた。しかし、想定外の事態が起きる──
「な、何だと……」
ララーシュタインは、顔をしかめた。彼の指から放たれた光の弾丸は、間違いなくグランドレイガーに命中した。人ひとりの体など、確実に貫通できるほどの威力がある。巨人の体にも、風穴が空いていた……はずだった。
しかし、グランドレイガーは何事もなかったかのように立っている。光弾が当たる寸前、いきなり消滅したのだ。
「この鎧はな、大半の攻撃魔法を無効化する。かつて魔術師団にいたお前の魔法といえども、例外ではない。お前の力は、封じられたも同然なのだよ」
「ならば、これならどうだ!」
ララーシュタインは、右手のひらを向ける。と、拳大の燃え上がる火の玉が出現した。
火の玉は、凄まじいスピードで飛んでいく。避ける暇など与えず、グランドレイガーの体に炸裂する。
だが、またしても当たる直前に消滅したのだ。
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