灰色のエッセイ

板倉恭司

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学校にいた泥棒の話

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 テレビドラマで『おいしい給食』という作品があります。八十年代の中学校が舞台でして、市原隼人さん演じる堅物だけど給食大好きな甘利田先生が、ハイテンションに校歌を歌い、強烈なリアクションとともに給食を食べる……というだけの、非常にゆるいドラマです。
 このドラマの中に、給食費を盗まれるというエピソードが出て来ました。詳しくは知らないのですが、七十年代から八十年代に作られた学園ドラマの中には、給食費が盗まれるというエピソードがあるものが多かったようです。そういった、昭和のドラマに有りがちなシーンのパロディーなのかもしれませんね。
 そこで、ふと思い返してみたのですが……私のいた小学校も、給食費なるものがあったような気はします。学校に持っていき提出した……ような記憶も、微かにあります。しかし、給食費が盗まれたという騒動は聞いたことがなかったですね。私の住んでいた地区は、決してお上品な場所ではなかったはずなのですが……給食費がなくなったという事件は起きなかったですね。私が知らないだけなのかも知れませんが。
 そして中学校になると、口座からの自動引き落としになっていました。さらに高校では、給食そのものがなかったので払う必要がありません。ですから、給食費が盗まれたという事件に遭遇した記憶がないんですよね。
 その代わり、といってはなんですが、変なものがちょいちょい盗まれていました。



 まず、よく盗まれていたのはリコーダーと上履きと体操着です。よく盗まれていた、というと語弊がありますが……少なくとも年に五~六回は「俺のリコーダーがない!」「三組で、体操着が盗まれたらしいぞ」という事件が起きてたんですよ。犯人は近所に潜む変態ではないかと思いますが、生徒か教師が盗んでいた可能性もあります。なにせ、犯行は授業中に起きていたようなので。あるいは、悪質ないじめであった可能性もありますが……。
 また、動物もよく盗まれていました。これまた年に二~三回くらいのペースで「隣のクラスの小鳥がいなくなった」「二年のクラスで飼っていたメダカが、水槽ごと盗まれた」などという事件が起きていました。
 そんな環境にもかかわらず、なぜか給食費が盗まれた……という話は聞かなかったんですよね。ひょっとしたら、教師たちが厳重に管理していたのかも知れません。あるいは、学校側が事件を隠蔽していた可能性もありますが……。

 中学校になると、盗まれる物も変わって来ました。まず、トイレットペーパーや石鹸のような日用品が、ちょいちょいなくなってましたね。「あれ? さっきまであったのに……」みたいなことが、よくありましたね。恐らくは生徒が盗んでいたのでしょうが、犯人は捕まらないままでした。
 また、体育倉庫から物が盗まれたこともありました。ボールなんかは、ちょいちょい盗まれていたようですが……一番凄かったのは、体操などで使うマットが盗まれたことです。夜中に侵入し数人がかりで運び出しているのを、近所の人が目撃したとか。あんな物を、いったい何に使うのかは不明です。
 まあ、マット泥棒も、中学校の牛乳を盗み飲みして教師にブン殴られた私にだけは言われたくないでしょうね。


 最後になりますが……二〇一七年の四月、神奈川県小田原市の小学校で給食費が盗まれたそうです。一年生から三年生の約二百五十人分の給食費およそ百二十万円がなくなっていることに、職員が気付いたとか。
 給食費は保護者がクラスごとに集め、PTAの役員と学校の職員が図書室で集計していました。集計が終わって現金をまとめようとしたところ、トートバッグに入れていた三学年分の給食費がなくなっていたということです。
 校内にいた保護者が「よく分からない人がいた」と話しているほか、防犯カメラに校舎の廊下を歩く不審な女が映っていて、警察が窃盗事件として調べていたそうです。その後、犯人がとうなったかは不明ですが、現実に給食費が盗まれるという事件は今も起きているのですね。





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