筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~

九尾の猫

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博多に向かう

24.集落の人々を助ける

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青に助け出された人々が、集落の中心地に集まっていた。

1人の女の子が動かない女性を揺すりながら大声で泣き叫んでいる。5~6歳ぐらいか。母親と思しきその女性は背中をざっくりと斬られている。女の子を庇ったのだろう。これはとても助からない。

女の子も殴られたか突き飛ばされたか、額から血を流し、着物は泥だらけだ。
年老いた女が一人、動かない女性の横で何かを祈っている。集落の呪術師だろうか。
それ以外の大人達は未だ茫然自失といった感じで、女の子を顧みようともしない。

俺にしがみついていた小夜が、突然女の子に向かって駆け出した。慌てて白と黒が後を追う。

小夜はそのまま女の子を後ろから抱きしめ、うつ伏せに倒れた女性ごと緑の光で包む。

「小夜…その人はもう…」

そう言いかけた俺を、紅が制する。

「まあ見てなって。すげえもんが見られるぜ」

青、白、黒も喰い入るように緑の光を見つめている。
数秒後に光は急速に薄れていった。あとには小夜に抱きしめられた女の子と母親らしき女性。小夜が女の子から離れ、俺の手を握る。
女性の背中の刀傷が…消えている。まさか…

女性はゆっくり身を起こすと、周囲を見渡し女の子に気づいた。

「ユウ!無事ね!!」

女性はそう言いながら女の子を抱きしめる。

俺は思わず小夜の頭をワシワシしていた。

「小夜…凄いなあお前」

小夜は俺の顔を見上げると、照れ臭そうに言う。

「なんか、居ても立っても居られんくなって…白ちゃんと黒ちゃんに『怪我をしたら緑の精霊さんにお願いするんだよ!』って教わっとったけん、頑張ってお願いしてみた!」

そうか。精霊の力を上手く借りられたか。

「小夜ちゃんすごい!」

「小夜偉い!」

黒と白が交互に小夜とハイタッチする。
紅と青はお互いに顔を見合わせ、軽く笑ってからそれぞれ小夜に賛辞を送る。紅は軽いデコピン、青は俺と同じように頭を撫でてから小夜の服についた血を落としてくれた。

俺は膝を付き、小夜の目線に合わせて言う。

「小夜、他の人達を助けたいんだが…小夜も助けるの手伝ってくれるか?」

「うん!何したらいいと?」

「そうだなあ…手分けしようか。まずは……」

そう言って俺は辺りを見渡す。動ける怪我人は集まっているが、重傷者や死者は集落のところどころにまだいるようだ。

「小夜は集落を左回りで回って、怪我人を治療してくれ。意識を失った重傷者が最優先、話せたり歩けている怪我人と、既に亡くなっている人は後回しだ。鏃が刺さってたりしたら丁寧に抜くように。体内に異物を残さないよう気をつけて。青と黒は小夜の支援、紅と白は俺に着いてきてくれ。
残党がいるかもしれないから気を抜くなよ!」

「わかった!」

そう言って小夜が走りだす。青と黒がその後を追う。

「じゃあ行こうか」

そう紅と白に声をかけ、逆回りに向かう。
小夜が助けた女性が、地に伏して手を合わせている。

「巫女様…巫女様…」

悪いけどちょっと後回しにさせてもらおう。

「ところで知ってたら教えて欲しいんだが」

俺はそう紅と白に問いかける。

「緑の精霊が傷を癒せるのは知っていたが、死者を生き返らせるコトもできるのか?」

紅がこちらを振り返り、若干めんどくさそうに答える。

「あ~そういう難しいことは青に答えさせるのがいいんだが…タケルよ。死ってなんだ?」

それは難しい質問だ。脳波の停止、生命活動の停止……

「俺たちの認識ではな?魂が肉体から抜け落ちて離散し、二度と元の肉体に戻らなくなることが死だ。肉体が傷つくと痛みに耐えられなくて魂が身体から抜け出す。魂は肉体から出ると速やかに離散するが、何か強い念を抱えたままだったり、自分の死を受け入れられなかったりすると、離散が遅くなる。だから魂が抜け出したあとの身体でも、魂が離散する前に修復してしまえば、生き返らせることは可能だ」

「だからねえタケル兄さん!死者を生き返らせようとするなら、まずはその者の魂が今どこにあるか見つけておいた方がいいよ!無駄手間になっちゃうからね!」

そうか…救急救命が早ければ蘇生する確率が上がるようなものだと理解しよう。

結果だけ言うと、集落の怪我人は23名、内重傷者10名に軽傷者13名だった。重傷者のほとんどは刀や鉈などの刃物で斬られたもの。踏みつけられた赤ん坊も危険な状態だった。軽傷者は矢傷や打撲が主だ。乱暴された女性も軽傷者のカウントに加えた。多少の怪我は集落のほぼ全員が負っていた。
襲ってきた側は、重傷者18名、死者12名だった。
薙刀で斬られたものが15名。刀で斬られたものが8名、矢で射られたものが5名、殴られて気絶しているものが2名。敵全体の半分を紅が討ち果たしていた。

とりあえず敵の重傷者に止血だけ施したあとで、死者の魂が離散しない程度に回復させる。要は全員を重症の状態にしたということだ。まあ死者が増えると面倒だし、この状態なら逃げ出すのは無理だろう。

そうこうしているうちに、少し年配の男と、年老いた女が歩みより、俺の前で膝を折り頭を下げる。

「陰陽師様…この度はお助けいただきありがとうございました」

「先ほどのお若い巫女様のお力…感服いたしました…」とは年老いた女性の発言。

どうやらこの男が集落の長老格で、年老いた女がこの集落の精神的支柱らしい。
この2人から、話を聞いてみる。
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