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立国編
90.兵器開発の方針を決める
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とりあえず急いでいた田の開墾は終わった。
後は秋撒きのホウレンソウやジャガイモといった作物用の畑の開墾だが、これは式神を含めた子供達にやってもらう。
そろそろ精霊の力に頼らない農作業を子供達も覚えなくてはいけない。
ただし、農機具だけは特別製だ。
まず、ススキの根が張り巡らされた硬い大地を掘り起こすために、金属製の刃を持つ鍬や鋤を作った。
この時代、刃の部分が部分的に鉄製の風呂鍬が一般的だが、硬い土に打ち込むために薄い刃にすると木の強度が足りず、逆に強度を上げるために厚くすると、今度は土に刺さりにくく効率が落ちる問題があったからだ。
そして馬に引かせるための短床犁と装具一式。
本来は牛に引かせる道具が犁だが、里には農作業用の牛はいない。代わりに軍馬がいる。
式神達はもちろん、桜や梅も馬を巧みに操れるようになったので、牛の代わりに馬を使うことにした。
これらの新開発農機具の使用と改良点のピックアップを子供達に任せて、俺は黒と一緒に新兵器の開発に勤しむことにする。
蒙古襲来と言えば、やはり最初に連想するのは「てつはう」だ。
平仮名で表現すると「てつはう」だが、漢字で表現すれば「鉄砲」である。
ただし、後世の鉄砲と違うのは、鉄砲が導火線に火を付けた炸裂弾を投石機で打ち出すものに対し、鉄砲は火薬の力で弾丸や砲弾を射出するものだ。
現時点で猟銃の弾薬には事欠かないし、猟銃自体の複製コピーも可能なのは確認済だ。
だが、今の文明水準での大規模戦闘に元の世界の銃を持ち込むのは、あまりにも卑怯だろう。
せめて使用する兵器としては、火縄銃の原型である火槍ぐらいに留めておきたい。
火槍ならば宋軍も使用したはずだし、そう卑怯でもないだろう。
単独潜入などの時にだけ猟銃を使用するようにする。
それならば猟銃は単独潜入が予想される俺、紅、黒、白の分だけあればよい。
それ以外にも、元軍が装備していた兵器で、こちらの通常兵器でないものは「弩」だ。
要はクロスボウだ。携行性に優れ、通常の弓・長弓の習熟期間よりも圧倒的短期間で発射できるようになる。弦を引き、矢をセットし、狙いを付けて引き金を引けばいいのだ。
元の世界の日本でも、弥生時代の遺跡から発掘された例もあるし、それに続く古墳時代には実際に使用されていたはずだが、何故かこの地には記録も現物も残ってはいなかった。
恐らく習熟期間が短いことが、台頭してきた武士の追及する戦い方にそぐわなかったのだろう。
この時代の武士は、まさにワンマンアーミーだ。
遠距離では矢を放ち、中距離では槍や薙刀を振るい、更に近距離になれば腰の太刀を抜く。
随伴する足軽達は、主人の武器変更を手助けしたり、予備の武器を運搬するサポートが主な役目だ。
例えば主人のサポートという足軽の役目はそのままに、足軽達に弩を装備させれば、一気に矢数を増やすことができる。
と、良いことづくめの弩だが、欠点もある。
構造が複雑で製造に時間が掛かる、壊れると簡単には修理できないといった構造上の問題に加え、使い方が余りにも簡単すぎるのも問題だ。
世の中に普及させると犯罪に利用されかねない。
元の世界でもクロスボウで野良猫や公園のカモが撃たれる事件が度々起きる。
だから、ある程度の数は揃えたいが員数管理は必須になる。
例えば通し番号を打っておき、戦場に赴く際に記録を付けてから支給し、戦さが終われば回収する。
万が一遺棄する場合は必ず破壊させるなどの管理が必要だ。
もちろん製造方法も秘匿せねばならないだろう。
これまでの内容を纏めると、今後開発したい兵器は次のものだ。
1.火薬と火薬を使用した炸裂弾
2.炸裂弾を射出するための投石機または小口径の簡易的な銃、あるいは砲
3.弩、可能なら連弩
さあ、ここからが大変だ。
黒様にご説明差し上げなければならない。
なにせ黒様は、今までの俺の下手なイラストを交えた説明を、質問を噛み殺してじっと聞いていてくれたのだ。
実際に唇を噛み破らんかというぐらいの形相になっていた。ここからの質問タイムが恐ろしい。
「その1、火薬って何?」
そこから来たか……普段俺が使う猟銃や弾薬を扱っているから、既に理解しているものと思っていた。
「燃焼についての理解は大丈夫だな?ある物質が急激な酸化反応を起こし、熱と光を発する現象が燃焼だ。この燃焼をより急激に起こす、しかも大気中の酸素を必要としない物質が火薬だ」
「詳しい製造方法希望」
「いや……それは作りながらのほうがいいだろう?」
「……わかった」
その1だったということは、その2があるに違いない。
「その2、炸裂弾とは」
「そもそも炸裂とは砲弾や弾丸が破裂し激しく飛び散ることだ。砲弾とは弾丸の大きいものだと思ってくれ。炸裂弾とは、砲弾や弾丸の中に火薬を仕込み、更に破砕しやすいように砲弾表面に溝を掘ったり突起物をつけたりしたものだ。炸裂させる目的は、飛び散る破片や爆風で殺傷効果を高めることだから、より効果を高めるために内部に金属片や鉄球をたくさん入れることもある」
「詳しい製造方法は……作りながら?」
「そうだな。火薬の量など試行錯誤の繰り返しになるから、作りながらのほうがありがたい。まずは陶器で作ることから試そう」
「わかった。じゃあその3、火槍とは何?」
「火槍とは大陸の言葉での表記だ。金属製の筒の片方を塞ぎ、筒の先端から火薬を入れ、更に砲弾を入れて火薬に点火する。すると火薬の爆発力が砲弾を押し出し、先端から射出する。要は俺が使う猟銃の原型となったものだ。一人で運搬できる小さいものを火槍、大きいものを砲と呼んでいる。が、めんどくさいから今後は銃と砲で統一しよう」
「わかった。弩については、タケルの下手な図でだいたい理解した。私が作ってみてもいい?」
おお!俺の下手な図で理解したか!
って下手と自覚はしているが、面と向かって言われると少々複雑な気分だ。
まあ失敗しても怪我をすることはないし、黒の実力はこれまでの水車や付帯設備の製造で分かっている。
「ああ。弩の開発は黒に任せる」
とまあ、こんな具合で今後開発する兵器が決まった。
後は秋撒きのホウレンソウやジャガイモといった作物用の畑の開墾だが、これは式神を含めた子供達にやってもらう。
そろそろ精霊の力に頼らない農作業を子供達も覚えなくてはいけない。
ただし、農機具だけは特別製だ。
まず、ススキの根が張り巡らされた硬い大地を掘り起こすために、金属製の刃を持つ鍬や鋤を作った。
この時代、刃の部分が部分的に鉄製の風呂鍬が一般的だが、硬い土に打ち込むために薄い刃にすると木の強度が足りず、逆に強度を上げるために厚くすると、今度は土に刺さりにくく効率が落ちる問題があったからだ。
そして馬に引かせるための短床犁と装具一式。
本来は牛に引かせる道具が犁だが、里には農作業用の牛はいない。代わりに軍馬がいる。
式神達はもちろん、桜や梅も馬を巧みに操れるようになったので、牛の代わりに馬を使うことにした。
これらの新開発農機具の使用と改良点のピックアップを子供達に任せて、俺は黒と一緒に新兵器の開発に勤しむことにする。
蒙古襲来と言えば、やはり最初に連想するのは「てつはう」だ。
平仮名で表現すると「てつはう」だが、漢字で表現すれば「鉄砲」である。
ただし、後世の鉄砲と違うのは、鉄砲が導火線に火を付けた炸裂弾を投石機で打ち出すものに対し、鉄砲は火薬の力で弾丸や砲弾を射出するものだ。
現時点で猟銃の弾薬には事欠かないし、猟銃自体の複製コピーも可能なのは確認済だ。
だが、今の文明水準での大規模戦闘に元の世界の銃を持ち込むのは、あまりにも卑怯だろう。
せめて使用する兵器としては、火縄銃の原型である火槍ぐらいに留めておきたい。
火槍ならば宋軍も使用したはずだし、そう卑怯でもないだろう。
単独潜入などの時にだけ猟銃を使用するようにする。
それならば猟銃は単独潜入が予想される俺、紅、黒、白の分だけあればよい。
それ以外にも、元軍が装備していた兵器で、こちらの通常兵器でないものは「弩」だ。
要はクロスボウだ。携行性に優れ、通常の弓・長弓の習熟期間よりも圧倒的短期間で発射できるようになる。弦を引き、矢をセットし、狙いを付けて引き金を引けばいいのだ。
元の世界の日本でも、弥生時代の遺跡から発掘された例もあるし、それに続く古墳時代には実際に使用されていたはずだが、何故かこの地には記録も現物も残ってはいなかった。
恐らく習熟期間が短いことが、台頭してきた武士の追及する戦い方にそぐわなかったのだろう。
この時代の武士は、まさにワンマンアーミーだ。
遠距離では矢を放ち、中距離では槍や薙刀を振るい、更に近距離になれば腰の太刀を抜く。
随伴する足軽達は、主人の武器変更を手助けしたり、予備の武器を運搬するサポートが主な役目だ。
例えば主人のサポートという足軽の役目はそのままに、足軽達に弩を装備させれば、一気に矢数を増やすことができる。
と、良いことづくめの弩だが、欠点もある。
構造が複雑で製造に時間が掛かる、壊れると簡単には修理できないといった構造上の問題に加え、使い方が余りにも簡単すぎるのも問題だ。
世の中に普及させると犯罪に利用されかねない。
元の世界でもクロスボウで野良猫や公園のカモが撃たれる事件が度々起きる。
だから、ある程度の数は揃えたいが員数管理は必須になる。
例えば通し番号を打っておき、戦場に赴く際に記録を付けてから支給し、戦さが終われば回収する。
万が一遺棄する場合は必ず破壊させるなどの管理が必要だ。
もちろん製造方法も秘匿せねばならないだろう。
これまでの内容を纏めると、今後開発したい兵器は次のものだ。
1.火薬と火薬を使用した炸裂弾
2.炸裂弾を射出するための投石機または小口径の簡易的な銃、あるいは砲
3.弩、可能なら連弩
さあ、ここからが大変だ。
黒様にご説明差し上げなければならない。
なにせ黒様は、今までの俺の下手なイラストを交えた説明を、質問を噛み殺してじっと聞いていてくれたのだ。
実際に唇を噛み破らんかというぐらいの形相になっていた。ここからの質問タイムが恐ろしい。
「その1、火薬って何?」
そこから来たか……普段俺が使う猟銃や弾薬を扱っているから、既に理解しているものと思っていた。
「燃焼についての理解は大丈夫だな?ある物質が急激な酸化反応を起こし、熱と光を発する現象が燃焼だ。この燃焼をより急激に起こす、しかも大気中の酸素を必要としない物質が火薬だ」
「詳しい製造方法希望」
「いや……それは作りながらのほうがいいだろう?」
「……わかった」
その1だったということは、その2があるに違いない。
「その2、炸裂弾とは」
「そもそも炸裂とは砲弾や弾丸が破裂し激しく飛び散ることだ。砲弾とは弾丸の大きいものだと思ってくれ。炸裂弾とは、砲弾や弾丸の中に火薬を仕込み、更に破砕しやすいように砲弾表面に溝を掘ったり突起物をつけたりしたものだ。炸裂させる目的は、飛び散る破片や爆風で殺傷効果を高めることだから、より効果を高めるために内部に金属片や鉄球をたくさん入れることもある」
「詳しい製造方法は……作りながら?」
「そうだな。火薬の量など試行錯誤の繰り返しになるから、作りながらのほうがありがたい。まずは陶器で作ることから試そう」
「わかった。じゃあその3、火槍とは何?」
「火槍とは大陸の言葉での表記だ。金属製の筒の片方を塞ぎ、筒の先端から火薬を入れ、更に砲弾を入れて火薬に点火する。すると火薬の爆発力が砲弾を押し出し、先端から射出する。要は俺が使う猟銃の原型となったものだ。一人で運搬できる小さいものを火槍、大きいものを砲と呼んでいる。が、めんどくさいから今後は銃と砲で統一しよう」
「わかった。弩については、タケルの下手な図でだいたい理解した。私が作ってみてもいい?」
おお!俺の下手な図で理解したか!
って下手と自覚はしているが、面と向かって言われると少々複雑な気分だ。
まあ失敗しても怪我をすることはないし、黒の実力はこれまでの水車や付帯設備の製造で分かっている。
「ああ。弩の開発は黒に任せる」
とまあ、こんな具合で今後開発する兵器が決まった。
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